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上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.36 よろず占い処 陰陽屋へようこそ 2
2016/4/28

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 『よろず占い処 陰陽屋へようこそ 2』
  天野頌子×鏡リュウジ
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偶然にもご当地ものがいいという編集長のアドバイスで王子を舞台にされたとおっしゃっていましたが、これもまた絶妙なチョイスですよね。というのも、同じ東京でも渋谷とか原宿とか流動性の高い都市の中だとこの陰陽屋は機能できなかったと思うんですよね。ちゃんとした地場コミュニティが機能している場の中だから、「占い」がきっかけとなって、人間関係が発動して、問題解決につながっています。

占いの具体的な内容そのものではなく、占いという一見、「超越的」なものが固着して、ギシギシとキシミを起こしている人間関係に、まったく別なところから力をほんの少し力を加え、それがきっかけになって一気にパズルがはまっていく。

占いがあたっても外れても「そんな馬鹿な」とツッコミを言ってくれる人がすぐ隣にいるという人と人との距離の近さがあります。何かあったときに助けてくれる人がいるという人情があると思うんですよ。

東京の渋谷や原宿の都心の占い師さんと、たとえば僕の地元の関西の占い師さんの違いは大きくそこにあると僕は思ってます。関西の占い師さんは占い結果をかなり断定的に言うようなんです。それで、その占いの結果が当たらない場合、占い師さんに「そんなんじゃ商売できへんで」みたいなことをクライアントさんは平気でいったりもする。

キツイことを言っても許容されるという文化的なベースもありますが、例えば、「こんなキツイこと言われたー」と占い結果を家とか行きつけの喫茶店で他の人にいったとしても「何いうてんねん、どうせ当たらへんわ」と言ってくれたりする人もまわりに存在するケースが多い。

けれど都心の占い師さんだと地場コミュニティの中にいない場合が多いから、つまり他の人の目がないから、クライアント側も占い師を一方的に神格化しやすく、共依存関係も生まれやすいか、と思います。もちろん、占い師として能力がある人はうまく関係性を作っていくはずですが、関係性が孤立化しやすいなと僕は考えています。

「予言者故郷に帰らず」ということわざがどこかにあるそうですね。超越的な仮面をかぶっている「予言者」も、お里がバレる故郷では活動しにくい。その意味では陰陽屋さんがあるような商店街コミュニティというのは、その中でやりにくいはず。でも、逆に言えば、そんなコミュニティの力と一緒になっていろいろなことが解決されていくという面白さもあると思うんですよ。


天野
そこまで考えた上で設定したわけではないですが、うまく行ったわけですね。



ほんと、素晴らしいと思います。更に、キツネというキャラクターもこれまた絶妙です! 

例えば、いわゆるシャーマンというのは実際にはトリックを使っていると言われてますが、これをインチキだと言って切り捨ててしまうとしたら、それはこちら側の近代科学の視点なんですね。きっとその地場コミュニティの中ではみんな、程々にわかってるんですよ、仕掛け的なことも。

僕の大変尊敬申し上げている学者で占星術家のジェフリー・コーネリアスは、そのことを「狡猾・小狡さ」と訳される「シケイン」という単語を使っています。これは「巧みさ」ともいえて、極めて上手なトリックとそうではないことをいったりきたりして両方使うというものです。

天野
そのコミュニティでは、一定の役割を果たしているというわけですね。


まさにそうです。キツネの瞬太くんのような天性の霊能みたいなものも、物事の風穴を開ける役目を果たしていて、そこでコミュニティの中では絆が結ばれていってます。そこに安倍祥明の霊力ではない冷静な視点が入る。結果として問題は解決するし、陰陽屋があるおかげであの商店街も活性化していると思うんです。

それから、神社の役目も大きいですね。王子のお祭りも小説には出てきますが、そうでない箇所でも、読者の頭の中には、いろんなことを見守っている、本当の意味での超越的な聖なるものがこの町にはあるんだ、ということが常に頭に残っていて、ハラハラしながらもどこか安心してこの物語の展開を見守っていられる。

こういういろいろな構成要素が見事にぴったりハマっていらっしゃるなんて、さすが小説の妙だなと思いました!


天野
いろいろな設定は本当にそれほど「仕掛け」たものではないんですけどね。浅く広く占いという世界を見た結果だと思います。



優れた小説家の視点によって、とてもうまく占いの世界観を描いてくださったというわけですね。そしてそこに多くの共感が集まった。みんなが占いに対して抱く信じたい、けれど信じたくない、でも信じたい、というような思いをすごくうまく表してくださいました。


天野
そんなふうに読み取って頂けるとは嬉しいです。

そう、実際、王子稲荷神社は素晴らしいんですよ。ドラマのロケもちゃんとやらせてくださったし。台湾からジャニーズファンのお嬢さんも訪ねていたりして……


別の意味での「聖地」になっていますね(笑) 本で登場するキツネの行列も賑わってますねえ。


天野
はい、このキツネの行列については本当にやっているのかってよく訊かれるんですが、大晦日の真夜中にやっています。最近はインスタグラムか何かで広まっているようで、海外からも大勢いらしてるようです。キツネの行列は珍しいみたいですね。新潟でも狐の嫁入りの行列があるというのは聞いたことがありますが、夜中ではなく夕方のようです。王子と新潟以外は聞いたことがありません。



そのうち、よさこい祭りのように全国に広がっていくかもしれませんね。猫耳ならぬ狐耳をつけたりして。行列に参加されたこともあるんですか?


天野
わたしは見物専門です。行列参加者は必ず和装しないといけなのですが、足元が草履や下駄で寒そうなので遠慮しているんですよ。着物にブーツとか履いても大丈夫なんでしょうか?(笑)



寒さ問題があるんですね。僕も見学だけだったら機会を作ってぜひ見てみたいですね! また「陰陽屋」シリーズの新作が出るんですよね。楽しみにしています。この小説は占いを上手に楽しむ方法がギュッとつまっていると思いますので、そうだ、僕の中学生の姪っ子にも読むように勧めなくちゃ。今日はありがとうございました! 


■『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』
天野頌子著
http://www.amazon.co.jp/dp/4591122379



■『鏡リュウジの占い大事典』
鏡リュウジ著
http://ryuji.tv/mobile/online.php?online_id=10009



(了)

ー 他コンテンツ紹介 ー

天野頌子 プロフィール

天野頌子(あまの しょうこ)
長崎県佐世保市生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。
らいとすたっふ小説塾を経て、2005年『警視庁幽霊係』でデビュー。
他の作品に、『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』、『タマの猫又相談所 花の道は嵐の道』(ともにポプラ社)『僕と死神の黒い糸』(講談社)などがある。

『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』
http://www.amazon.co.jp/dp/4591122379

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