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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.49 おみくじのルーツ「歌占」とは?【2】
2017/1/19

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おみくじのルーツ「歌占」とは?【2】
  平野多恵×鏡リュウジ
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ところで、先生にひとつぜひ伺いたいのは、「占い」の「占」というのはどういう意味なんですか?


平野
口(くち)に卜(ぼく)と書きますよね。「卜占(ぼくせん)」の「卜」です。フトマニなどの占いで骨にあらわれたひび割れのカタチをうつした文字が「卜」、つまり占いの結果を意味します。そして、その結果を口に出して言葉にするのが「占い」ですね。


もうひとつ、神の意思をくじで伺うという「おみくじ」というのも、西洋とも不思議なつながりがあって面白いですよね。古代ギリシャでは、人間の魂は生まれる前に運命を自らくじによって選んで生まれてくると考えられていました。ただ、この世に生まれる時に自分が選んだ運命のことを忘れてしまう……。この神話はプラトンも語っていますよね。


平野
神様は占いとの結びつきが強くて、例えば日本神話でいうと、イザナギとイザナミが交わって日本の島々が生まれたという国生み神話。ふたりで最初につくったオノゴロ島に柱を立てて、それをイザナミが最初にまわって「ああ、いい男」とイザナギに声を掛け、それにイザナギが応えて、そのあと2人が合体して国が生まれました。でも、それで生まれたのは手足のない蛭児(ひるこ)、次に生まれたのも淡島(あわしま)というおぼろげなもの。それでどうしようと悩んで、アマツカミに相談したところ、それこそフトマニの占いをして、女から声をかけたのがダメだったとわかります。それで今度は男のイザナギから声をかけたら、本州、四国、九州などをはじめとする日本の島々がうまれたというのです。占いのアドバイスがなければ、日本は存在しなかったわけですね。


もうひとつ、籤は英語でロトともいいます。これはすごくマニアックな話しですが、占星術用語で「ロット」というのがあるんですよ。地平線や惑星の位置から計算によって算出するポイントなのですが、「幸運の籤」「結婚の籤」などなど何種類もある。天体の動きは確定しているものですが、生まれたときや問を発したときの星の配置は一種、偶然によって決まるわけでしょう?そうした星の配置の組み合わせから算出されるポイントが「籤」と呼ばれているわけで…。占星術でさえ、ある種の「籤」なんですよ。


平野
偶然の中から必然を掴み取るということですかね?



占いというのは必ず、ある種の偶然、ランダムさを拠り所にして行われますからね。確定的なものなら占いには使えませんから。全部がハートのエースのトランプでは恋占いはできませんものね。毎回、ハートのエースが出てきちゃう。笑

平野
考えてみたら世の中すべて偶然で、その偶然の中からどうやって自分に必要なものを見つけ出すか。歌占カードは、そういうものだと思っています。カードというカタチじゃなくても、神託というかお告げみたいなことはありますよね、「あ、今の自分にはこれが必要だ」とひらめいたりするような。それをカードにすることによって、受け取りやすくなると思います。



さまざまな解釈を許す、情感豊かな和歌というのもポイントのようですね。


平野
そうですね、和歌は1000年以上詠み継がれていますから、そこで詠まれることばそのものに意味の蓄積があります。



東洋の占いは、命(生年月日を使うような占い)、卜(筮竹やサイコロ等の偶然から導く占い)、相(人相、手相等の占い)の3つにわけられるとされていますが、こうした区別はどこからきているのか、ご存知ありませんか?

平野
その由来は残念ながら知らないですね。


西洋の伝統だと2種類。啓示的な占いと、推論的な占いがあるとされているんです。この分類はあのキケロの『卜占論』で論じられています。啓示的な占いは神様から直接的に託宣が降りてくる。典型的には夢に神のお告げがあるというようなものですよね。これは神の言葉がそのままだから正確だと考えられていたようですが、これは神が降りてきた時しか占いができないわけですから、いつでも占いたい時にできるわけではない。そこでさまざまな方法で人為的に託宣を得る工夫がなされて道具なども用いられるようになった。こういう占いカードは、レディメイドなわけだから推論的な占いに入るわけです。

ところで、今回の歌占カードは32枚からなっていますが、この和歌32首はどういう観点で選ばれたんですか?

平野
江戸時代までの神様のお告げの和歌や和歌占い本に載っている歌を集めると300首以上ありますが、その中から現代の人が読んでもわかるようなもの、他の歌と解釈がかぶらないもの、多様な解釈ができそうなものを選びました。32枚は易の六十四卦の半分です。


易の卦の半分ということでしょうか。なぜそれを聞いたかというと、歌占のおおもとは、霊感的な占いですよね、それがレディメイドの占いになっていくときに、ある種のコスモロジーがあるかどうかを伺ってみたかたんです。でもこの歌占カードがたとえば100年後、今のタロットカードのように、「定番」となっていく可能性があるということですよね。例えば、タロットももともとはゲームだから、おそらく元来は神秘的な体系が内包していたとは考えにくい面もあるんですが、19世紀以降になるとユダヤの密教でもあるカバラの宇宙観と結びつけたりする人が出てきたりしています。

平野
カバラの数秘術とも結びついている説があるんでしょうか?


タロットはルネサンス時代のカードゲームが起源なんですが、18世紀にエジプト起源を言い出す人が出て、さらにユダヤのカバラと結びつける説が出てきました。オーソドックスな切り札の枚数22枚。そしてカバラでは言葉がとても重視されているのですが、ヘブライ文字も22種類あるので、この二つを対応させてゆくことになったのです。
もっともタロットが発明されたと考えられる15世紀当初には切り札の数は22枚に決まっているものではなく、順序なども異同があって、カバラとの対応は後付けだと考えるのが実証的な研究者の大半です。

平野
そういうこじつけは日本にもありまして、和歌は仏さまの真言と同じで、和歌の三十一文字が大日経の三十一品に対応するという説もあって。思想と結びつけたくなるんでしょうかね。


何かの体系を作っていきたいという衝動があるわけですよね。
占星術で用いるホロスコープやタロット、易の卦というのは、この世界全体を象徴していると考えられているわけですよね。この世界の基本的な、つまりは元型的な構成要素が占いで用いられるシンボルであると考えられている。タロットは世界そのものの縮図であって、それでプレイするということは、世界そのものを手中にしてテーブルに開示する、ということだと考えていい。占いをする時のあの独特の高揚感やスリルというのは、世界の縮図を手中にしていると感じていることからくるのかもしれない、と僕は思います。

平野
そうですね、和歌も一首の中に一つの世界があって、三十一文字の中で完結しているのが面白いところでもあります。



なるほど。それこそホログラムみたいなものですね。部分が全体を表しているという、一首の中に世界があり、さらにいくつもの和歌がひとつの世界を構成することになるという……平野先生が考案された「歌占カード」が、100年後、どのような変遷を経ていくか、タイムマシンで見てみたいですね! カード占いの世界は本当に奥が深いと思います。今度開催される、歌占カードの講座でもどんなお話が伺えるか楽しみにしています。そうそう、宣伝になって恐縮ですが、カード占いといえば、ルノルマンでも新刊がでましたので良かったらご覧になってくださいね。


『歌占カード 猫づくし』平野多恵著 遠藤拓人絵

*書籍情報、一枚引きの無料サイトはこちら

*1/20の講座情報はこちら
「はじめての歌占カード講座」講師:平野多恵、聞き手:鏡リュウジ


『運命のルノルマンカード占い』リズ・ディーン著 鏡リュウジ訳

『秘密のルノルマン・オラクル』鏡リュウジ著

(了)

ー 他コンテンツ紹介 ー

平野多恵(ひらのたえ) プロフィール

1973年富山県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。十文字学園女子大学短期大学部准教授を経て、現在、成蹊大学文学部教授。日本中世文学、おみくじや和歌占いの文化史、アクティブラーニングによる古典教育の実践を中心に研究。著書に『明恵 和歌と仏教の相克』(笠間書院、2011)、共編著に『大学生のための文学レッスン 古典編』(三省堂、2009)、『明恵上人夢記訳注』(勉誠出版、2015)など。


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