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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.1 「新月の願い」は効くのか? 1
2011/8/15

* 新月の願いって何?
新月のタイミングから数時間から数日以内に「〜がうまくいきますように」「〜になりたい」といった願いごとを10個紙に書き出すことで、願いごとが叶いやすくなるというもの。


最近、すごく「新月の願い」って流行ってるけど、そもそもあれは誰がいい出したのかな? 新月の日に願いを書きだすと叶う、っておまじない。しかも10個書けという。


ジャン・スピラーというアメリカ人占星術家の『魂の願い―新月のソウルメイキング』という本がアメリカで2001年に出て、日本では徳間書店から2003 年11月に出ているんですけど、今のブームの直接的なきっかけはここからでしょうね。そう考えると、日本ではまだ10年経ってない訳ですが…。


ジャン・スピラーさんってもともと「前世」とか「魂」、「カルマ」といった用語を占星術と絡めた本を出しているよね。たぶん、アメリカのニューエイジ系の人でしょう?
僕が初めて「新月の願い」を聞いたとき、新月の日に願いごとリストを書くと叶うなんて今まで全然知らなかったから、ちょっとびっくりしたもん。もう、3,4年ぐらい前のことかな。昔からの伝承ではないと思ったから、そのときはそんなに重視はしなかったんだけど・・・。
いまではスピ系の人の間では「当たり前」みたいだもんね。ぼくも便乗してます。笑。


でも月と魔法、月と願いというのは、スピラー以前にも、歴史的な背景がありますよね?


じゃあ試しにウチにあるオックスフォードの迷信辞典をひもといてみようか。日本語名は、『英語迷信・俗信事典』(大修館書店)って言うんだけど、いろいろな伝承について、出典がのっているから面白いよ。


では見てみると・・・ニュームーンっていうセクション、5ページ近くありますね。しかも「新月(は願いを叶える)」という項目まである。

「月がやがて新月になったときに王のもとに行って願いごとを頼みなさい。王はそれを叶えてくれるだろう」

これは1050年にコケインという人が書いた『治療法』という本からですが、古くは紀元前後に生きた古代ローマの詩人ホラティウスの書いた抒情詩の中にも「フィデルよ、もしお前が新月の時に、天に向けて手を挙げるなら、お前のブドウは疫病に罹ることはないだろうし、収穫が台無しになることもないだろう」なんて記述がありますね。

さらに近代に入っても、例えば1852年の『ノーツ&クリエイツ』という本で、「新月をはじめてみたとき、ぜひとも持ちたいものや成し遂げたいものをひとつだけ、心にとめよ。その願いごとはその年の終わりまでに実現するだろう」という記述があります。

つまり新月に向かって何かを祈るという慣習自体は、少なくとも2000年以上昔から連綿と民衆の間で保たれ続けてきた歴史がある訳ですね。ただ、いずれも基本的に願いは1つです。今それが日本で10コにまで膨らんでいるのは、こうした伝統的な月の願いに関する伝承に、何らかのバイアスがかかっているのは明らかでしょうね。


あ、それ面白いね!でも、新月って1年に12回から13回あるわけでしょう?
毎月同じ願いを書かない、ってルールはないんだろうけど、もしそう考えると年に120個の願いを書きだすことになる。これって、考えてみたらすごい作業かもね。
だって、煩悩って108つとかいうわけでしょう。「たくさん」って意味で。本当の強い願いなんて100個もあるわけない。
書きだすという練習をやっているうちに「あれも書いたなあ」「これは先月も書いたなあ」なんて自然に思えるとしたら、すごい思考整理のツールかもよ。なんてこれも半分は冗談だけど。

あと、願いを言葉にして書きだすってのは日本の書きぞめみたいなもんかもしれないけれど、アメリカのセルフヘルプとかニューソートの影響かもね。「心が現実を作り出す」って教義。


ああ、スマイルズの『自助論』とか。


そうそう。ただ、月が満ちていくときに増大させたいことを始めようというのはすごく伝統的。古い農事暦には月の満ち欠けで作付けをするとか雑草を刈り取るなんてものがあるし、吉兆の時を選ぶ「エレクショナル」占星術ではまずは月の満ち欠けをみよというものね。

そういえば、ニューエイジ系や魔女文化の月のイメージでは、月のサイクルを女性の一生にたとえてるんだよ。
「新月から満月までが乙女」「満月で母になり」「満月から新月にかけていくまでが老女」これが月の3つのフェーズ。

多くの学者はこの区分は、比較的現代に入ってから、具体的には詩人のロバート・グレイブスの「ホワイトゴッデス」が出元になっていると見ていたんだけど、古くからの知り合いの占星術家であり異教の歴史の研究家でもあるプルーデンス・ジョーンズ氏は、その伝統は形さえ異なるけれど、古典時代遡ると指摘している。
彼女がイギリスの「カルチャー&コスモス」という雑誌に寄稿している論文では、月の満ち欠けのサイクルではなく、月の高さでフェーズを分けている記述を探し出してきているの。
「地平線にある月」「天上にある月」「地中にある月」の3つ。これも月の満ち欠けを成長と衰退の女性の姿と重ねていて、非常に興味深い。

(つづく!)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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