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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.6 「エイジ・オブ・アクエリアス」から魚座時代へ! 1
2012/1/23



いよいよ2月4日に海王星が魚座入りします!これは占星術的にはビッグイベントだよね。なんといっても海王星は公転周期がおよそ165年。海王星は魚座の支配星だとされていて、久しぶりに自分の本拠地に戻ってくるわけだから。


前回、魚座に入っていたのは1848年から63年ですから、それからようやく迎えた1周年ですね。海王星は、霊感、あるいは陶酔、物事を曖昧にする=異なる領域のものがつながるというのがキーワードです。


海王星が発見されたのは魚座に入る直前、水瓶座に入っていた1846年。海王星のことを考えるには、いわゆる「外惑星」のことも考えなくちゃいけない。天王星、海王星、冥王星などなど。こうした天体はいずれも土星より外側の軌道を回っていて、肉眼では見えないほど遠い。でも、現代占星術ではなくてはならない存在になっているよね。とくに占星術では天王星(ウラヌス)と海王星(ネプチューン)はセットで考えることが多い。海王星が発見された経緯もセットです。

まず、1781年に天王星が発見されました。それまでの占星術では太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星のいわゆる七惑星のうち、土星が一番地球から遠かったから、土星が太陽系と外の境界を表していた。天王星の発見によりそれまでの境界線が崩れたというわけ。


天王星の発見まで、土星は境界の内側を外から守り支えると同時に、内を厳格に監視する「父の目」として神に近い役割を与えられていましたが、それが天王星の発見でそうでもなくなったんですね。


ちょうどその頃に近代社会がスタートとしたと言えるからこれも象徴的なことだよね。歴史的に考えると、フランス革命やアメリカの独立と近いし。いわば、土星に象徴されているはっきりした境界線のようなものをどんなふうに超克していくかが外惑星の共通のテーマといえそうだね。

それで天王星の場合には「境界線をブレイクスルー」し革命を起こすけれど、その後に発見された海王星は、境界性がくっきりしているものではなく、境界線をぼかすというイメージだよね。


イギリス人のワットが革命的な蒸気機関を開発して、特許権をとったのが1769年頃。それで石炭の採掘が始まったり、綿紡績の生産性が10倍くらいになっていったりと、産業革命・工業化社会の幕が上がっていく。それまでの動力源は馬でしたから。まさに機械化=テクノロジーの勝利という点で天王星を象徴していますよね。

そして、海王星が発見されたのは、そうした機械化が進んでいって、工業のGDPが農業のGDPを上回る人類史上初の大転換がイギリス、プロイセン、アメリカと各国で起こっていく最中でもある。

同時に、帆船から蒸気機関船へと変わり、商人や軍隊、旅行者でさえ世界一周が可能になっていったのもその頃。このへん、ある意味一般的な海王星の、非科学的で少々だらーっとしたイメージ(笑)と逆説的で面白いですよね。


天王星はともかく、海王星の発見は科学の勝利といえるからね。天王星の動きが計算通りじゃなかったから、もしかしたらもうひとつ星があり、その重力が星の動きに影響を与えているとわかった。それで発見されたのが海王星。科学という「夢」が勝利したときかもしれないよねえ。

ところで、最初に海王星について書いた占星術家って知ってる?


いえ、分からないです。


実は、僕も知らないんだよね。20世紀初頭のチャールズ・カーターやクロウリーは書いているんだけど、最初に書いたのはだれなんだろう。

ちなみに天王星について最初に書いたのはウィリアム・ブレイクの友達のジョン・バーレー。天王星が発見されたのを知って、自分で位置を調べて自分のホロスコープと照らし合わせていたら、自分の家がヤバイ!とわかった。そしたらその日、本当に火事が起きて、自分の見立てが当たって喜んだっていう話が有名。


マッド占星術家の鑑ですね。ちょっと2chのスレタイ(記事の題名)みたい(笑)



●海王星=魚座時代、歴史を検証


海王星は1846年に発見されて、48年には魚座に入っています。海王星は魚座にあると本来の力を発揮するので、その時代に起きたことは、海王星的といえる。今回の回帰にあたり、ざっと前回の魚座海王星時代の出来事を振り返ってみましょうか。

たとえば日本では、1853年に黒船来航で鎖国が解かれ、58年には日米修好通商条約が結ばれます。つまりこれは海を通じて日本が世界とリコネクトされたのでとても海王星的。実はペリー来航の7年前にも通商を求めるアメリカ艦隊が来たんですが、その時は退去してるみたいなんです。

一方、お国許のアメリカでは1850年代後半の奴隷制をめぐる決定的な流れから南北戦争が勃発し、リンカーンによる1963年の奴隷解放宣言、65年の戦争終結をもって奴隷制が正式に廃止されます。

ヨーロッパに目を向けると、ちょうどその頃にロシアでも農奴解放令がでています。これは、オスマントルコをめぐって、ロシアとフランス・イギリスら連合軍の対立が深刻化して勃発したクリミア戦争でロシアが敗北し、近代化しようとした結果です。

考えてみればアメリカがヨーロッパの目を盗んで日本にやってきて不平等条約を結ぶことができたのも、ヨーロッパ勢がこのクリミア戦争に釘付けになっていたおかげなんですよね。


農奴解放というと領主と小作、奴隷解放というと白人と黒人、つまり身分の上下という境界があり、鎖国解禁は自国と他国という水平な境界があったけど、いずれにせよ、足かせとしての境界線がすーっとなくなっていった訳か。


そうですね、少なくとも公には。あと忘れちゃいけないのがマルクス・エンゲルスの「共産党宣言」。これは1848年。ブルジョアジー(資本家階級)とプロレタリアート(労働者階級)の階級闘争を超えようという主張ですね。こんなふうに境界線を突破しよう、世界をひとつの膜で覆ってしまおうという世界的な流れ、時代精神は実に海王星らしい衝動の反映と言えますよね。


確かに、そうだね。フランス革命の「自由・平等・博愛」というと、天王星のキーワードになるんだけど、ユング派心理療法家のグッゲンビュール・クレイルが面白いことを言っていたな。

平等とは、海王星のイメージに近い神様のデュオニソスのアーキタイプだと言っていた。これはなるほどと思ったんだ。人類は決して平等ではない、と。だけど平等になれるというヴィジョンが理想的な夢であり、まさにそれが海王星的なものを象徴していると言っている。


なるほど。確かに差別はなくなった訳ではないですし、共産主義という大きな物語の終焉も僕等の社会はすでに経験しています。覚めた後に初めて気付くのが夢だとも言えますね。

ちなみに僕が個人的に非常に海王星的だなと思っているのは『エヴァンゲリオン』の人類補完計画です。鏡さんご存知ですか? 


アニメは何回か観たことあるけど、詳しくは知らないの。ゴメン。


人類補完計画というのは、簡単に言えば地球上に住む人々の個体としての境界線を消し去って、出来損ないの群体として行き詰った人類を一つの完全な個体へと人工進化させる、という計画です。

つまり、人類全体が融け合って原初の始原が体現していた理想的状態へ移行させちゃおうっていう、リセットボタン的というか“母胎”回帰的な救済ですね。でも、これには裏ストーリー、というかむしろこっちが本筋というものがあるんです。

主人公の碇シンジの父親ゲンドウはネルフという、人類補完計画を推進する人類補完委員会という国際連合の下位組織にあたる特務機関のリーダーなんですけど、上位組織の意向とは別の個人的な意図を持っていた。

この計画を推進し始める直前、ゲンドウは妻、つまり碇シンジの母親を亡くしてるんですが、それは開発中だったエヴァンゲリオンという新たな“母胎”でもある人型兵器に取り込まれての死でした。ゲンドウは、新たな進化を遂げた最初の人類「アダム」をその手に宿し、死んだ妻のDNAからの複製に近い形で生み出された女の子であり、主人公と同じく人型兵器のパイロットでもある綾波レイ(新たな母胎)と融合することで、原初の母へ帰るという上位組織の意向とは異なる形で補完を発動させ、自分を含めた人類の欠けた心の隙間を埋めようとするんです。

ちょっとかいつまみ過ぎたかな。つまり、これは奥さんともう一度会いたいということを、人類を巻き込んでやるんですよ。ロマンチックだけど破壊的ってことで、非常に海王星的だと思います。


えー、庵野監督のホロスコープ、後でみてみよう!

うん、たしかに、それはある種当たっているね。リズ・グリーンは海王星について、重厚で大きな本を書いているけれど、それは原初の生命の海としてのイメージであるといっている……。

そしてさっきのディオニソスは破壊の神様でもある。この破壊ってなにかというと、現実に閉じ込められている個別の魂を犠牲にすることによって、つまり死をもって個別性を解放し、もとの無境界の世界へ返却するイメージ。

あと、ユング心理学では海は子宮の象徴でもある。救済というのは、ちょっとネガティブにいうと子宮回帰願望、楽園願望でもあり、みんなが平等がいいというのもその楽園願望につながる。

やっぱりユング派のマリオ・ヤコービがその名もずばり『楽園願望』という本を書いていて翻訳されているけど、昔読んだ時にはまったく海王星的だと思っていました。ケン・ウィルバーの『無境界』という本もまさしく海王星的だよねえ。


なるほどー。ただ日本の修験道だと、母胎回帰として山に帰っていきますよね。洞窟とかで胎内めぐりもするけど、「死んだらお山さ行くだ」とか言うし。楽園たる“自然”の表象にも色々あるんでしょうね。


あ! あとロマン主義もそうでしょ。時代的にもぴったりで、海王星は水瓶座の時に発見されて魚座の時代にロマン主義が出てきてる。ちょうどその頃、イギリスだとロマン主義的な、僕が好きなラファエル前派の人たちが同盟組んだりしていた。

それから、共産党宣言と同じ年にアメリカで心霊主義、スピリチュアリズムが起こっている。これ、ツイートもしたことあるんだけど、共産主義とスピリチュアリズムは双子のきょうだいなんだよね。共産主義は唯物論で人は平等になって幸せになると信じ、心霊主義は死後の世界を認めてつまり生者と死者を平等に扱ってつながれば幸せになれるという……つまり唯物論と唯霊論というわけ。


その時代はまだ、ブルジョアジー(資本家)とプロレタリアート(労働者)の対立構造が分かりやすい形で存在していましたよね。ある意味で、天国と地獄の二元論で、物か霊かっていう。

エンゲルスはもともと資本家の生まれでしたけど、ある時、工場労働者の実態を知って衝撃を受けてこれではいかん!と思ってそれが「共産党宣言」につながっていきましたね。

それを現代に置き換えたらどうなるかと考えると、ブルジョアジー(資本家)というのは例えばグローバル企業です。例えばファストファションブランドは、世界中に工場を持ち、途上国の労働者を搾取することで成り立っている。

一方のプロレタリアート(労働者)はその時代は人民とか市民とか、もともと「目を見えなくした奴隷」を意味する民という日本語が当てはめられて呼ばれていたけど、今の時代はどういう言葉があてはまるか……。

もちろん、途上国では飢餓に陥っている人や、搾取されている労働者はそうでしょうが、今の日本に目を向けると、TPPとかベーシックインカムの議論にぶち当たります。そこの救済対象者となっている人たちが当てはまるのだろうけど、まだちゃんと見えてきていない気がします。

ベーシックインカムなんかをやると、みんなが平等になるからいい、救われる!かと言うと事はそんな単純じゃない。制度構造を単一化しちゃうと、そこからの支給に対する依存度が強まることになる。そうなると、結果的に権力構造が強化されて、たとえばその権力サイドから見て都合が悪いことをすれば「お前反乱分子だから支給停止な=実質的な死刑宣告」みたいなケースが起こりかねない。

ベーシックインカムという平等という名の下の支配構造の強化だから、夢としての救済措置って何なのか分からないなあって思います。

先にブルジョアジーは想定可能みたいな言い方もしましたけど、かといってグローバル企業や経団連や政府や東電を批判してればいいという問題でもない。同時に、プロレタリアートについても、何を救うことが必要なのか、あるいは、「救う」とか、「“反”ブルジョアジー」いうストーリーラインが果たして本当に妥当なのか。

これからの魚座海王星時代、そこらへんが再検討されるんじゃないかな、と思います。平等とか救済のヴィジョンです。実際、生活保護受給者増加とか自殺者増加とか年金の世代格差とか、平等のヴィジョンをみんなで考える必要性は非常に高くなりそうですしね。


確かにそういう新しいヴィジョンが必要な時だね。あと、魚座時代をベタに考えると、境界線が曖昧になるから、生と死の境界線も曖昧になってしまいそうだな。自殺率とか考えるとちょっと怖いです。あとは感染症とか。ガスとか海洋資源も海王星魚座のキーワード。


海王星の影響が強くなると、他者と自分の境界線が曖昧になって共感能力が高くなるという反面、めちゃくちゃ影響されやすく、悪影響も広がりやすいですよね。


だから、意識して心の免疫力をつけなくてはいけない。身体ももちろんだけどね。

(つづく)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
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