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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.8 占いファンの聖地・原書房に聞いてきた「他では言えない話」3
2012/4/9


●初心者がするべきただ1つのこと


初心者の方がいらっしゃった時なんかは、どうされてます?

原書房の番頭さん
評判のいい本なんかは勧めますよ。どれがいいですかって相談してくれたら、「ごちゃごちゃ色んな本買うより、これ一冊買った方がいいよ」って感じで。たいていどのジャンルの専門家が聞いても大丈夫だってチョイスでね。


ああいいですね。じゃあせっかくなので、東洋の占いの本で三冊くらいオススメの本を教えてもらえませんか?ぼくはまったく素人ですから。


それは名案ですね。お願いします!

原書房の番頭さん

『易入門―正しい易占の要領』 柳下尚範


『あなたの運勢をひらく用気術―吉方選定・傾斜鑑法・同会判断法』 横井伯典


『九星象意大全』 石門会・編


これAmazonじゃ絶版になってる本だったり、うちでしか売ってない本なんだけど、内容がよくまとまっていていいですよ。


九星象意大全は原書房さんだけなんですか。そういう冊子本のコーナーも充実してますね。ありがとうございます。普段オススメを聞かれる方ってそんなにいないですか?

原書房の番頭さん
ないない。たいていはメモを手にしてきたり、目当ての本を探しにくるとかね。


じゃあ逆にお客さんの方から聞いてくれた方が、選択肢が広がったり、確かなチョイスができるってことですよね。その方がお店としても助かると。

原書房の番頭さん
そうですね。ただ、四柱推命と奇門遁甲に関しては、勧めてません。理由は、とにかく流派がありすぎるから。


なるほど。でもお話伺ってると、けっこうお教室ベースなんですね。

原書房の番頭さん
そうですね、確かにうちは占いの教室や学校さんとの絡みが多いですね。店内にも、信頼できる教室さんの案内なんか置いてますし。シュガー君の教えてる学校のもありますよ。



あら、そうなんですか!


でもやっぱり、少し勇気を出して相談したり、オススメを聞いてみるというのは大切ですね。少し恐いかも知れませんが(笑)、そこを通過してしまえば、一気に豊かな世界が広がる。


●古本披露 & その価値はどこから生まれる?


海外からの問い合わせなんかもあるんですか?

原書房の番頭さん
2階の浮世絵はきますね。主にヨーロッパから。ただ下はぜんぜん。古本の市場ってのは毎日やってるんですよ。ただ、洋書の市場ってのは別で、うちは洋書はあんまり入らないんですよ。大陸の本屋がたまに仕入れにくるぐらいかな。大陸いったら翻訳されて別名で売られていたりね(笑)


版権とかでいえば、古い本なんかは版権がないですよね。それをデジタル化したり電子書籍なんかにしたりっていうのはされないんですか?

原書房の番頭さん
それはないです。買う層が少ないし、第一合わないでしょ。問い合わせ自体もほとんどないですね。古いものといっても、明治・大正の頃のはもう漢字が難しいから読めないってなっちゃうし。本当は読もうと思えば読めるんですよ。でもダメーって拒否反応が出ちゃうから。占いでいえば、西洋の本も昔は潮島さんみたいに個人で出されてる方もいて、売れましたけどねぇ。今はもうなくなっちゃったし。


昔買ってましたよ。日本占星学研究所から出ていた私家本。当時のぼくにはお高い値段でした。お年玉をためて買ったなあ。

原書房の番頭さん
支天庵というところからもテキストが出ていました。


ああ、貴船根康吉さんの! 先にもお話ししましたが、そのI部を原書房さんで買わせていただいたんですよね。1966年に支天庵という占星術塾からヤコブソンのホラリー書を土台にした手書きガリ版の教材。そうそう、『欧米占星術三箇月卒業書初歩より奥義までの独学篇』。

あと貴船根さんには海外に渡った九星の本、『不思議に当る東洋占星術』もありましたね。実はあれの原典が見つからないんです。原著者はセファリエルってことになっているけど、ひょっとしたら自分でお書きになってるんじゃないかなと、思ったり。まあ、これはもう少し調べないと。

原書房の番頭さん
隈本有尚さんの本もありますよ。これは大正時代。近代日本で一番古い西洋占星術の本ですからね。



『天文ニ依ル運勢予想術』ですね、うちにもあります! 知ってるよね、シュガー君?


え、そうでしたっけ……(汗)でも隈本有尚は最近まで忘れられてましたけど、アラン・レオと親交を結んでいた日本占星術界の先駆者ですよね。『坊ちゃん』の数学教師・山嵐のモデルにもなった非常にユニークな人で、占星術史上の重要人物。実はシュタイナーの神秘学も紹介してたり。

原書房の番頭さん
いいですね。ただほんと、うちでも古い本はずーっと棚にいらっしゃいますよ(笑)。たとえば日本で最初期に「風水」という名前を使った木版本。これは買う人いないんですよ。木版の本てのは面白くて、版木の売り買いしてるんですが、これは文化13年。売ってた本屋もちゃんと書いてある。
『風水秘録』


これは人相学について書かれた巻物で、年代書いてないけど、たぶん江戸中期。とうぜん手書きですよ。
書名不明


それから幕末頃の絵入り本で、周易を都々逸で覚えようなんてハウツー本もありますよ。
『流行都々―観唐詩辻占』



おお、これはすごい! そのへんのハウツーよりよっぽど面白みがありますね。歌いながら64卦を覚えるなんて風流だな〜。

原書房の番頭さん
でも占星学の世界は進んでるから、もう古いでしょう?


いえいえ。実はいま、この時代のものが復活してきて価値があがってるんですよ。というのも、それこそ現代占星術は20世紀に入ってから書かれたものばっかりだったんですが、80年代に古い占星術の本が次々と欧米で復刻されるようになって、その流れがやっと日本にも入ってきてるんです。

原書房の番頭さん
そうなんですか。へぇ。


ええ。ホラリーなんて一度死に絶えたと思われてたんですが、実はここにきて生き返ってきているんです。先程も名前が出た、アイヴィ・ヤコブソンという人が昔の伝統的な占星術をかなり残していて。貴布根さんの本は、このヤコビソンの本を底本とする翻訳でもあるんです。

実はこの時代のものが、17世紀までの占星術と20世紀以降の占星術をちょうどブリッジする重要な役割を果たしているんですが、ほぼ同時代にそうした本が日本で出ていたというのは、文化の受容史として極めて重要なことだと思います。だから、この時代の古い本が逆に今の占星術の世界ではすごくバリューがあるんですよ。

原書房の番頭さん
そのあたりは、なかなか聞けない話ですね。


ぼくは個人鑑定はしていないけれど、占星術や占いのいろいろな側面は知りたいし、文化としての重要性をもっと世に知っていただきたいと思っています。だからこそ、こういう書店は占いの実践者ばかりではなくて、文化遺産の倉庫として本当にかけがえのないものだと思っているんです。


最後に、番頭さんからもメッセージをお願いできますか?

原書房の番頭さん
書店にいき慣れてない方も、まずは何でも聞いてみてください。それから、先生はよく選んで。強いて言えば、この2つですね。

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どうもありがとうございました。



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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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