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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.2 パワーストーンのルーツを探れ 1
2011/9/20



パワーストーンってこの数年、ずーっと流行っていますよね。ショップもすごい増えたし……ってことで、オカ研第二弾のテーマは「パワーストーン」。今のパワーストーンブームって、クリスタルパワーのブームがルーツみたいですけどいつぐらいからなんでしょう?


石に対しての信仰という意味ではそりゃあ、古いよね。人類学者の植島啓司先生の著書では、「聖地」というのは奇石、巨石があるというのが条件らしいし、「勾玉」信仰なんていうとそれこそ古いものね。そもそも、アクセサリーというのは護符的なものだったはずだから、それを考え出したら有史以前にさかのぼっちゃう。いぜんシュガーくんとも一緒にいったイギリスのストーンヘンジなんかも一種の巨石信仰だし。


たしかに不思議な場所でした。それに、ぼく、趣味で登山もやるんですけど、聖地としての山にはご神体めいた石や岩がたくさんあります。いわゆる磐座ですね。

そもそも、貴重な石のことを「玉」(ギョク、タマ)というわけで、魂とも石は関連づけられていたんじゃないかなあ。


たしかに。
でも、鉱物としての石要素が濃くなってくると話が壮大になりすぎちゃう。ここではいわゆる宝石としてのパワーストーンについても触れていこうよ。
まず、自然の力の象徴としての石があって、パワーストーンはそれにアクセサリー要素もからめてきた流れがあると思う。

もともと宝飾物はお守りからスタートしているから宗教的な側面があるんだけどね。古代、男も女も祭祀とかで、骨や歯や石とかでジャラジャラしたものを使っているでしょう、その中できっと、ある日山の中でキラキラしたものを発見したんじゃないかと思う。

古代の祭祀を行っていた人たちは、自分を飾ることによって身に着ける石に向かっていったんだと考えられます。
「ユダヤの大祭司の胸当て」がネックレスのような宝飾品の起源とも言われている。もともと護符の意味合いで作られたものだと思うけど。

古代エジプト時代の宝飾品や護符はすごく豪華だし、デザイン的に見てもかっこいいね。カルティエ展を見たけど、今の宝石デザインの多くは古代エジプト時代の流れを汲んでいるともいえるのがよくわかった。

でも、まあ、いわゆる「パワーストーン」というと日本では、80年代くらい?なのかしら。ニューエイジ運動、文化の象徴的なアイテムだったよね。
ハリウッド女優シャーリー・マクレーンのニューエイジブームのバイブルみたいになった『アウト・オン・ア・リム』にも登場してあのころから、石のショップが増え始めたんじゃないかな。

どの映画だったか覚えていないけど、アメリカのホラー映画のなかで、悪霊にとりつかれた家で引き出しのなかの水晶が真っ黒に変色してしまう、というシーンが出てきたの。このころにはもう水晶が「浄化」の力をもつというイメージが定着していたんだろうね。

あと、80年代頃の印象的なことといえば、巨人軍の選手たちも水晶とか着けていたってこと。


そもそもパワーストーンで誰が言い出したんでしょうね?


そういえばぼくもわからないなあ。シュガーくん、ぜひ調べてみてよ。なんて丸投げしたりして。ただ、「ニューエイジ」ブーム以前にも、パワーストーン的なブームはありました。

シュガーくん世代だと覚えていないかもしれないけれど、いろんな雑誌に「幸運を呼ぶラピス」の広告が出ていたの。実はこのラピスの会社はぼくも仕事をさせていただいたことがあって、いろんな方とそこが出していたカタログ誌で対談させていただいたんだよね。すごく売れていたみたい。


へえーー。ラピスラズリだけに特化していたんですか?
たしかにラピスって、古代エジプトではすごく大切にされていたんですよね。ツタンカーメンのマスクだって黄金とラピスの組み合わせだし、パワーもありそう。

ラピスは石という意味だし、アズールは「青」。金色に輝く斑点が深い青の石に浮かぶこの石は、まるで夜空のようだって思われていたんでしょう?


そうそう。日本でも信仰されていたよね。確か。


日本語では「瑠璃」ですしね。浄瑠璃なんて言葉もあるし、瑠璃光なんていうと、浄土の光を表わすようですね。たしか、「無量寿経」なんて、浄土の世界を描写する浄土教系統の仏典にも出てきていたはずです。

でもその会社、ほかのクリスタルなんか売らないで、ラピスに特化していたなんて、面白いですよね。


うん。たしかに。で、ぼくはそのネタ元は実はトービス星図さんという方の本ではないかと思っているんだな。もちろん、推察でしかないんだけど。

トービスさんというのはもちろん、今は故人だしぼくも面識はないんだけれど、日本の占星術の草分けのような方だったんだよね。1950年代には、『星占いの魅惑』なんて本も出されているけれど、そのなかにはホロスコープやホラリーといったものもあって、かなり本格的。あのころの本はいまよりずっと本格的な内容が新書、実用書のレベルであって、ほんと感心しちゃう。

トービスさんはイスラム神秘主義にも傾倒されていたようなんだけど、その著書のなかにはラピスラズリを特別視するような記述が結構出てくるんだよね。『神秘学入門』(霞ヶ関書房)なんかを開いてみても…(とシュガーに渡す)


本当だ「もっとも神秘的なラピス」って書いてありますね。いろいろ解説されている宝石の筆頭にあがっていますし。


そうなの。この石をとくに重視されていた様子がうかがえる。で、ラピスラズリの偉大な徳が占星術家たちに伝わっていって、それが採用されたんじゃないかなあと。


へえ、ところで僕のなかでのパワーストーンといえば、『セーラームーン』なんです。セーラーマーキュリーとかセーラーマーズが占星術的な惑星の象意と関連していることはご存知だと思います我、実は敵側は全員、四天王が石の名前で、しかも四天王の最強がクンツァイトって言うんですよ。当時はそれがパワーストーンだなんて思っていなかったんだけど、あの時見ていた女の子たちも知らないうちに刷り込まれていたりして。


女の子はみんな本当に宝石好きだよね。いまはアニメでいえば『ジュエルペット』なんかもあるし。

そうそう、パワーストーンといえば、拙訳の『クリスタルパワー』(二見書房)は、石のおまけ付きで1989年に出たんだけど、すぐに版を重ねたし、ずっと売れている。今考えるとすごい話です。


それって20年以上前からずっとブームってことですね。今のブームってセレブカジュアルのファッションとして、チャームとかパワーストーンって流行ったという流れもある気がします。チャームとか流行りだしたのはこの4、5年ですかね? もちろん、例のブレスレットがすごいですけどね。石のショップも本当に増えました。


もっとも、石ファンと言っても別に女性だけのものじゃないよね。
石のショップって鉱物マニアの石好きとも少しかぶるし、ミネラルショーみたいな見本市にいくような鉱物好きな人も多い。これは澁澤龍彦的にいうと、「少年的な趣味」でしょう? 無機質な鉱石に魅了される。宮沢賢治の世界や稲垣足穂の世界にも通じるような。もちろん、長野まゆみさんのような女性の作家の世界もあるよねえ。あちらはどこか硬質で、「この石もつとラッキー!」みたいなものとはだいぶん色合いが違うけど。

(つづく!)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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