鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.16 ハーブと占星術と信じる力 1
2013/4/16


今日は先日、イギリスで会ったハーバリストの方が印象的だったのでそこらへんの話を……。

エリザベス・ブルーク(elisabeth・brooke)さんといって年齢は60くらいで、日本にはない「メディカル・ハーバリスト」という公的な資格をちゃんと持っている魔女(ウィッチ)なんです。この資格は、ハーブを薬として処方することが公的に許可された、薬剤師に準じる立場。で、魔女としてウィッチクラフトに関する本も書いています。

以前に、ニールズヤードジャパンの社長さんが言ってたんだけど、実は日本というのはアロマセラピーの文化に関しては世界で一番普及しているらしいです。

確かに色んな雑貨屋さんに行っても、香り関係のものがここまで置いてある国ってあんまりない。とはいえ、アロマセラピーの本場はフランスだったり、公的な資格さえあるイギリスなんだよね。


魔女と薬草の組み合わせはなんだかんだやっぱり深いつながりがありますもんね。


うん、伝統的な魔女の仕事というのはやっぱり薬草使いでしょう。ハーブによって人を治療していくような、今でいう漢方家に近い役割があったんだよね。

それにはもう民間伝承に近いものもあれば、ある程度科学的に実証されているものもあった。それで、ハーブの医療が集大成されるのが17世紀なんだけど、ただその集大成した人物というのが、近代的なハーバリストからすれば厄介なことに、占星術師でもあった。


ニコラス・カルペパーですね。話が占星術につながってきましたね。


◆医学と占星術


その当時の医学というのは、占星術と不可分というか同じ学問でもありました。それはどういうことかと言うと、古代ギリシャに遡る西洋の人体観にルーツがあって、例えば「あの人にはユーモアがある」という時のユーモア(Humour)というのは、体液のことなんです。「湿り気」をHumidというのも同じ語源ですな。


ユーモアがあるというのは、単純に笑いのセンスがあるってことだけじゃなくて、語源的には、いい体液を持っている、つまり気持ちに余裕があって、いい流れを持っている訳ですか。


イエス。その体液には4種類あって、ひとつは血液、もうひとつは粘液、それから黄色い胆汁、そして黒い胆汁。英語というかラテン語で言うと、血液はサングイン、粘液がフレグマ、黄色い胆汁はコレリック、黒い胆汁はよく知られているメランコリアだね。

メランコリックな憂鬱症というはからだの中で黒い胆汁が過剰になるということを指す。で、この4つの体液というのはもともともっているバランスというのもある訳だけど、そのバランスが崩れたときに、病気になると考えた。ちなみに、メランコリックのメラはメラニン色素のメラで、「黒」ね。女性のみなさんの大敵。笑。


体液論で言うところの、多血質、粘液質、胆汁質、憂鬱質ですね。それぞれエレメントの風、水、火、土に対応していて、アリストテレスはそれをさらに、熱い、冷たい、乾いてる、湿ってるという4つの性質の組み合わせによって構成されているという考え方を導入した。

あったかくて湿っているのが風で、熱くて乾いているのが火、冷たく湿っているのが水で、冷たくて乾燥している土ですね。


◆「年代」で体液バランスが変化


そうそう、だから、どういう時に体液バランスが変化するかというと、一番大きい要因は「年代」。シュガー君なんかまだ実感ないかも知れないけど、年をとってくるとドライネスが増してきて、乾燥してくるから保湿が必要なんです。

ただ、今の考え方と決定的に違うのは、ドライ(乾)とモイスト(湿)というのが同時に成り立つという点。つまり、普通は湿り気がないことを乾いていると言うけど、昔の考え方だとそうじゃなくて、湿り気と乾きが“質”として両方存在していて、両方とも過剰ということがありえると考えた。


男性性と女性性みたいな感じですね。どっちも強い人もいれば、どっちも薄いという人もいると。鏡さんは、どっちも過剰かな。


言ってくれるね! 

同様に、冷たいと温かいも絶対零度とかそういう客観的基準があるんじゃなくて、冷たさという質が存在していて、一方で熱という質が同時に存在できると考える。

でも、今でもコスメ系の雑誌をみるとこういう感覚がスキンケアのなかの体感として出てきているので驚かされることがある。「オイリーに見える、感じられる肌もほんとは乾いていることもあるんですよ」とかね。昔なら湿と乾がともに過剰だというふうに考えたんじゃないかなあ。

で、その体液から出来上がる気質のことをテンペラメントTemperament と呼ぶんですね。これは今でいう心の状態や性質と、からだのそれの両方を表す言葉になっている。サングイン=血液が強い人は、見目麗しく、陽気で楽しいとか。黒い胆汁が強い人は、毛深かったりチビだったり、色黒だったり。ろくなもんじゃないみたいな(笑)


なんかそれだけ聞くと妖精とドワーフみたいですね。サングイン=風が強い多血質の人は春の子供のように軽く伸びやかで、メランコリア=土の強い憂鬱質の人は冬の老人のように重く縮こまっているということなんでしょうけど、表現が誇張的というか空想的というか博物誌的というか。


◆体液は「月や惑星の動き」でも変化する


ほんとだね。ただ、ルネッサンスに入ると、こうしたある種の素朴な解釈に大転換が起こって、黒い胆汁質が強いメランコリックな人は、哲学的であるというふうになっていった。

それから、体液バランスの変化の要因となっているのが、「季節」だよね。秋から冬になると乾燥してきて、春になると熱と湿り気が出てくるといったように、ちょうど春夏秋冬が、血液、黄色い胆汁、粘液、黒い胆汁に対応しつつ、変化するものと考えられた。

あと、「月や惑星の動き」でも変化すると。例えば月は人によって色々と解釈が違うんだけれども、大体、月が満ちていくときに水分が増え、欠けていくときに水分が減ると言われている。


月は「湿っている」天体だから?


少なくとも、ハーブ医療の大成者でもあったニコラス・カルペパーらによれば、一番湿っている天体が月なんだって。それから金星は基本的に水の性質なんだけど、太陽より前(オリエント)にあるときは風(血液=サングイン)の性質で、太陽の後ろ側(オキシデント)にあるときは水(粘液=フレグマ)とされています。太陽や火星はもちろん火(黄色い胆汁=コレリック)、木星は風で、典型的な土星は土(黒い胆汁=メランコリック)であると。

それで、占星術師は、ある人の出生チャートからテンパラメントを計算していく。それから、その人が病気になった時に、デカンビチュア(ラテン語で「横たわる」の意)という病気になった瞬間のチャートを作って、それを読んでいった。まぁ病に臥す瞬間と言われても実際にはその特定は難しいから、占星術師が相談を受けた時刻をもとにチャートを立てていたみたいだけれど。

基本的な見方としては、アセンダントの支配星が本人の生命力を表し、第6ハウスの支配星ないし在泊星が病気や症状を象徴すると。それで、本人と病気のどちらが強いかで、治るかどうかを見ていた。

ここで注意したいのが、例えば第6ハウスに木星というラッキースターが入っているからといって、治るとは判断しないんだよね。本人を表す支配星が弱い一方で、第6ハウスの木星が魚座なんかにある場合、病気の方が強いから、むしろ治らない、あるいは治りにくいという見解になる。


「強い」というのは、つまり惑星の品格(ディグニティー)の良し悪し、ということなんですね。それから、そもそもデカンビチュアのアセンダントや支配星が、本人を表しているのかどうか、その妥当性について検討するという、予備的考察も最初に入りますよね。


コンシダレーションね。その人のルックスとか訴えてきている症状なんかと合致するかどうかとか。そもそも、そのチャートが有効か同化を判断する基準がいくつもあって、そこもチェックした上で、本人と病気を表す2つの支配星が、いい角度を作っていったりすると、経過がよくなると判断した。

それから、天頂の第10ハウスの支配星が治療法を象徴すると。で、病気の原因となるものを「補うもの」か、あるいは、「同質のもの」のいずれかを処方したんだよね。その処方の仕方が、何回読んでもよく分からないんだけどさ(笑)


ケースバイケースなんですかね?


そうみたいだね。ホメオパシーみたいに、「毒をもって毒を制す」というやり方か、不足を補う、ないし過剰を抑えるというやり方のいずれかということなんだと思う。


東洋の五行思想とかだと、足りないものを補うのが基本ですけど、多すぎたらもう間に合わないから、救急処置的にそれこそ毒をもって毒を制す的なことをやるそうなので、そこは同じかも知れません。そうした微妙な判断の按配こそがカルペパーはじめ、治療家の腕の見せ所であり、明文化されていない技術や知恵なんでしょうね。

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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