鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.2 パワーストーンのルーツを探れ 2
2011/10/3



ところで、セーラームーンに出てくる「クンツァイト」って、その名前のもとになったのはフレデリック・クンツだよね?


そうそう。さては宣伝しようとしてますね。鏡さんの監訳した『宝石と鉱物の文化誌』の著者。


あ、ばれたか。宝石の意味にまつわる伝承として、西洋では、ローマの大博物学者プリニウス、ダミゲロンの鉱石誌、11世紀末レンヌの司教マルボドゥスなどが宝石の意味の主なソースになっているわけだけど、そうした資料も収集し、かつ、自らも鉱石ハンターでもあったクンツが膨大な資料を渉猟して、一冊の本にまとめた。
うちには、その1913年の初版本もあるよ。

ぼくも若いころに『クリスタルパワー』や何冊か翻訳を出して、それが売れたおかげで学費や家賃なんかも払えちゃったわけだけど、あまりお手軽なものだけじゃだめだとずっと思っていたの、バックボーンを紹介したいなと。それで無理を言ってこの本をださせていただいたんだよね。

いまのところ市場では地味な動きだけど、石ファンには基本図書としてマストなんだけどな。


こうした本を読んでいると、かつては宝石が今よりもっと価値があったことを痛感しますね。王侯貴族の権力の象徴ってことだったんですかね? また超越的なものの象徴のような。


そうそう。シュガーくんがいってくれた「瑠璃光」なんてまさにそうだし、ダイヤモンドと同一視される「金剛」なんてのも仏教にもでてくるよね。ソロモン王の神殿も金銀財宝で埋め尽くされていたと書かれている。「ヨハネの黙示録」でも、天国はものすごい宝石で飾られている。

意外かもしれないけれど、王侯貴族だけではなく教皇はじめ聖職者もいろいろ宝石を身に着けていたからね。

ダイヤモンドなんて最初は男性のものだったし。もっともかつては社会的地位の高い人といえば男性だったわけだから。
ただ、だんだんと宝石は女性にも用いらるようになっていく。お姫様と宝石との関係が登場するわけで。市場も醸成されてゆく。

そんななかで宝石のランク付けがきまってくるわけ。ダイヤ、エメラルド、サファイア、ルビー、真珠だけが五大宝石として市場では圧倒的な価値をもっていた。そこで20世紀初頭、ティファニーに勤めていた鉱物学の権威、かのクンツが半貴石というジャンルを作った。


宝石の枠を拡大したんですね。そうか、その宝石の世俗化がいまのパワーストーンブームにつながるというわけだ。


うん、一般の人も手に届くようになったというのは大きいと思う。


宝石は権力の象徴で何かパワーを宿しているんじゃないかという話といえば、呪われたダイヤの話ってありましたよね?


「ホープダイヤモンド」ね。持ち主に不幸をもたらすといわれるけど、石に対する畏れが生み出したものだよね、きっと。もはや都市伝説ともいわれている。

じつは研磨技術が発達していなかったルネサンス以前の時代は、ダイヤよりもエメラルドやルビーのほうが珍重されていて、王侯貴族もこぞって身につけていたという記述がけっこうある。でもダイヤモンドの語源となっている「アダマス」の意味は「征服さらざるもの」というのが興味深い。


日本では、刀でそういう話がけっこうありますよね。権力や財産の象徴だから政変とか暗殺とつながりがあって、妬まれるんでしょうね。

話をパワーストーンに戻すと、なぜクリスタル・水晶が代表的存在なんでしょう?


ひとつはわりと世界中どこでも手に入りやすいというのが大きいと思う。あとは色じゃないかな? 無色透明のクリスタルクリアな感じがニューエイジの純粋無垢なイメージと重なったはず。


水晶といえば、水晶玉の占いですね。水晶と占いの歴史を教えてください。


エリザベス1世に寵愛されたジョン・ディーが水晶を使っています。みんなが想像するいわゆるジプシー占いっぽいのは19世紀以降かな。


たしかギリシャでは聖なる火を灯すのは水晶でできたレンズを使ったんじゃなかったでしたっけ? なるほど、太陽信仰と連動しての水晶なのかな・・・でも石と天体も関係性がありますよね?


アレクサンダーロマンの時代からあります。アレクサンダーロマンスというのは、アレクサンダー大王の伝記なんだけど、だいぶ神格化されていて、いまでいうファンタジー小説かな。いくつものバージョンが出ていて、中世には大ベストセラーになる。

その伝説では、アレクサンダーの母親オリュンピアが、エジプトの魔術師で占星術家であるネクタネボンを訪ね、これから生れる子供について占ってくれという。そうすると、ネクタネボンは王妃に誕生日を聞く。そして、宝石でホロスコープをつくるの。

「手をふところにいれると、そこから小さな書板を取り出した。・・・(書板は)黄金と象牙でできており七曜の星と誕生時に上る星つまり誕生星が記されていた。太陽は水晶、月はダイヤモンド、ゼウス(木星)はアエリオス、アレス(火星)は鉄血石(ヘマタイト)、クロノス(土星)は蛇石、アプロディテ(金星)はサファイア、ヘルメス(水星)はエメラルド、誕生時の星宿(アセンダント)を示す誕生星は白大理石でできていた)

どう? 惑星と石の対応がでてくるんだよ。


おお、誕生石のルーツみたいなもんかな。


今の誕生石は20世紀の宝石商組合のプロモーションらしいんだけど、(笑) その背景にはこれほど長い歴史があることになる。

そもそも、パラケルススだとかルネサンスオカルトの世界では石は生きもので星の光を養分として育つという信仰があったようだからね。


錬金術では賢者の「石」の発見と獲得こそ、錬金過程の最終過程であり、知恵の最高段階の象徴でしたね。でもそこまでいかなくても、どうせ宝石を手にするなら、何か自分用にオーダーメイドされたストーリーがほしいという心理は生じるかな。友達がパワーストーンのブレスレット屋をやっているんですが、生年月日を調べてどういうご利益ほしいか聞いて「あなただけのオリジナル」を作るのが一番評判いいらしいですし。


それはあるよね。僕、女性誌の取材で沖縄にいったついでに、編集者にパワーストーンショップに連れていかれたことがあるんだけど、どうやらそのお店、かなりの有名店で、霊感があると思しき人が直感でその人に合う石を選んでブレスレットを作ってくれるというシステム。でもね、僕のはすごく地味な色の石ばっかりで残念だったのを覚えている(笑)。一緒に行った編集者の女性は綺麗な石で作ってもらって喜んではったけど。


鏡さんでも作ってもらったりしたことあるんですね!


一通りは経験するタイプ(笑) でも、あのブレスレットは今までスピリチュアルとか、そういうものと無縁そうに見えていた、いわゆるビジネスマンたちもつけているのを見かけるね。一部ファッションもあるだろうけど、おまじない的なものが公の舞台に出てきている象徴だととらえられるかな。

良し悪しではなく、オモテとウラの境界がなくなってきていることが加速されていて、僕世代はちょっと戸惑ってしまうのは年かなーー(笑)


あはは。確かに僕のまわりの男性、とくに代理店とかIT系の人たちはつけている人、けっこういますからね!


でも、ぼくなんかが違和感なくつけられるような男性向けのものはまだまだ少ない! 誰か、一緒にやりませんか?(笑)


追記

*1回目がUPされたあと、ツイッター等で情報をいただきましたのでここでご紹介します。

パワーストーンという言葉を紙媒体で紹介したのは、かの「MISTY」誌かもしれません。 説話社のAさんからの情報なんですが、東西の占いに通じておられるマギー氏がわかりやすい言葉として選ばれたということでした。
なお、このマギーさんは日本人の方で英国のマギー・ハイド氏とは別人です。

以下、Aさんからのメールの引用。
・・・・・・・
弊社の誌面でのご紹介としては、マギー先生が弊社担当と相談し、「パワーストーン」と名付けて89年創刊のMISTYの前身雑誌・増刊マイバースデイで紹介した、とされています。
(当時は「霊石」と呼ばれていたため、もっと別の名をと検討してのことだとか)
これはセミナーで先生がお話くださったことでもありますので、少なくとも、紙媒体で紹介されたのは最初だといえそうです。

※国会図書館の検索によると、同名で初めて出た書籍は、マギー先生の『パワーストーンの不思議』二見書房, 1992.9.(サラ・ブックス)のようですね。

また、トライアングル様(88年)のほかにも八川シズエ様が86年に提唱した、とおっしゃっておられるようです。

・・・・・・・

(次回のテーマは「オカルト」。更新予定日は10月17日です)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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