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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.21 英国占星術協会年次大会レポート
2013/12/27


ひゃーーー! もう、今年も終わりで焦る!!!

 
ほんとですよねー。もうあと数日で年明けだなんて……


 で、今年のうちに皆さんにレポートしておかなくてはいけないのが、この秋にシュガー君と2人で参加してきた英国占星術協会年次大会について。イギリス滞在中に現地から原稿書いてメルマガに載せたんだけど、ちゃんとまとめての報告はまだでした。

英国占星術協会の年次大会は今年で第45回になります。年次大会に僕が行きだしたのは20歳頃からだからもう、かれこれ25年位だね。当時はもちろんまだネットがない時代だからイギリスに行った時に本を買って手紙で問い合わせて資料を取り寄せたのがスタート。当時から150人くらいはいたかな?

 
今年も150人くらいでしたから、規模感は昔と変わっていないんですね。


そうだね。MAXで300人以上くらい参加者がいた時代もあったんだけどね。たぶん、あれはヨーロッパ大会かな。まあ、とにかく初めて参加したときはこんな会があるんだ、と感激したのをよく覚えている。でも勝手がわからないし、英語もぜんぜんおぼつかず、一人でブックショップのコーナーをウロウロしていたら、かの故チャールズ・ハーヴェイ氏が声をかけてくれたの。本当の英国ジェントルマンな方。


大会中のブックショップをのぞく鏡



当時、よく訊かれたのは日本に西洋の占星術なんてあるの?って。ポピュラーですよ、でもこういう組織はないですよっていつも答えてたね。

 
そういう状況も今とまったく変わってないですね。


この会は、プロ・アマ問わず西洋占星術ファンなら誰でも参加できて、毎年違ったテーマが掲げられますが、今年は「占星術の魔法」についてでした。大会というと、何するの、といわれるけれど、基本は講義と交流、そして夜のパーティかな。

いろいろなジャンルの占星術の授業を選べるのが楽しいんだけど、僕はずっと心理占星術に興味があったから、心理学と占星術に関する講義を選んでいたのを覚えている。あと、当時は、毎年違う大学が会場になっていたから、イギリスのいろいろな地方に行けたのも楽しかったなあ。バース、サイレンセスター、ヨーク、プリマス、ケンブリッジなどなど、いろんなところにいったのは「大会にいく」ためだったから。

 
僕としては講演者が皆、プレゼンがすごくうまいのに改めて感激しました。講義をするにしても、ただ知識を披露していくのではなく、ジョークを交えつつ、ちゃんとオチもつけてくる。画像や映像なんかも上手に入れてくるので、話を聞いていて飽きるということがないんですよね。まあ、僕は英語がまだ苦手なので、絵も抑揚もないトークだと、よく分からなくなってしまうというのも大きいかもですが。




発表のスクリーン。スピーカーがそれぞれ趣向を凝らして本格的。


 
いずれにせよ、3日間通しでいたら、大体15個コマくらいの世界各国の占星術家が工夫をこらしたレクチャーが受けられる訳で、これはすごいイベントだと思います。講師をされている方々も、みな無償でやっているし、参加者はもう四六時中占星術のことをしゃべりっぱなしで、すごい活気がありますね。ピアノを猛烈に弾きまくってる方もいたけど(笑)


ほんと、環境が違うよね。いろんな流派や立場の占星術研究家たちが一堂に会するというのは、まだなかなか日本ではできなていないし。やろうとしてもそれだけの参加者が集まるかどうか。英国でも財政は苦しいけれど、今年からは、チャリティステイタスといって、法的な資格も団体として公式にちゃんと得てます。

 
イギリスの古き良き紳士たちのクラブ文化というか、お社交の世界というか、そういうものの厚みを感じますね。


とはいっても、会自体は昔のほうが盛り上がっていたと思ってるんだ。というのは、ネット以前の時代は、情報が限られているし、交流もかぎられているから、年次大会の場に行かなくちゃ、という意識が高かったように思う。

さらにチャールズ・ハーヴェイさんの存在が大きかった。この「派閥争い」が起こりがちなこうした世界にあって、チャールズさんを悪く言う人はいませんでしたね。本当に占星術の世界を大切にされていて、ネットワーカーであり、かつ、占星術研究の水準を上げるために尽力された方だった。大会では、今でも毎年「チャールズ・ハーヴェイ賞」が占星術の世界に貢献した人に授与されるんだよね。

 
占星術をひとつの文化へと押し上げてきた功労者へのリスペクトを、年に一度の大会の場で結束や発意の象徴として行使する。これはとても素晴らしい儀式だと思います。

レクチャーの場でも感じることですが、日本みたいに皆がおとなしく聞いているということがなくて、思い思いのことをガンガン発言してくるという風土であるということを考えても、そうした結束の象徴の意義は大きいのかなと。あと今年はテーマがテーマでしたし。


●「考古天文学」「詩的天文学」とは?



まあ、イギリスだからアメリカほど賑やかではないけどね。今年の大会のメインテーマは「占星術の魔法」だったけれど、もう一つ力をいれていたのが「考古天文学Astro-archaeology」だったね。占星術とは違うんだけど、ストーンヘンジが日の出の方向を向いているとか、アイルランドの神話は星の動きを擬人化したものなんじゃないかとか、そういう歴史的研究。ベツレヘムの星が何だったかを推定し、それに基づいてイエス・キリストの誕生日を算出するとかね。

今まではこういうのはメインストリームの学問からはちょっと疑問視されていたけれど、そういうことをちゃんと検証していこうという動きも実際、出てきています。

 
 考古天文学では今までピラミッドなどのモニュメントを主に読みといてきたけど、たとえばエジプトでは「死者の書」のようなテキストも、実は星の動きを描いたものなのではないか、という講演もありましたね。星の配置をちゃんと検証していくと、既存のテキストの読み解きにおいて新たな発見があるというもの。


そうそう、その読み込みがけっこう深いんだよね。「ポエティックアストロノミー=詩的天文学」といいますが、ホルスとイシスの神話が当時の太陽やシリウスとの配置をそのまま神話に置き換えたんじゃないか、という説。

それによって未来を占ったりはしないけど、地上の世界との新しいつながりをつくろうとしている感じだね。

あと、深読みすると、こういうジャンルだと大学の中で研究しやすいというのがあると思うな。占星術研究の安全領域を作っておこうという……。

 
なるほど。確かに「未来を予言するためのもの」では分が悪くても、あくまで「地上の世界の位置づけを表すもの」というアプローチであれば、NGにはならない。考えてみればこうやって、自身が生き残るための戦略を流れの中で必ず宿してきたのも占星術の特徴ですね。

そういえば、一方の「占星術と魔(magic)」というメインテーマはどういう流れで考えればいいでしょうか? 最初に聞いたときは、日本人としてもとてもタイムリーに感じられました。テーマが実際どういうきっかけで決まったのか、というより、このテーマをどう受け止めればいいか、という意味で。


占星術は星の動きを受動的にうけとめてるもの。つまり宿命論で、一方のmagic(魔術)は星の力を「使う」もの、という見方もできるよね。本当はその両方があるんだけれど、近代に入ってから占星術はずっと魔術的要素を排斥しようとしてきた経緯があるんだよね。占星術は科学的なものだ、と言いたかったから。


●現在の占星術に「魔法」を取り戻そうとする学問的背景


でも最近になってそれらを見直そうという流れがでてきた。それで今回のテーマになったんじゃないかな。それになによりも、20世紀に入ってからの占星術の歴史の学問的な研究は、ルネサンス時代の占星術と魔術の研究が起爆剤になっていることが大きい。実際、ルネサンス期の占星術についての発表が多かったね。

例えば、アビ・ワールブルグがイタリアはフェラーラのスキファノイア宮殿のフレスコ画を読み解くことに成功した。それは実は占星術図像だったんです。そうした、いわゆるワールブルグ学派と呼ばれる人たちの活躍はとても大きかった。

彼らの多くは占星術師ではないけれど、占星術の歴史について学問的研究を推し進めたんだよね。さらに、元型心理学のジェイムズ・ヒルマンなんかも、こうしたワールブルグ学派の研究を下敷きにして新しい心理学を構築しようとしてきた。現在の占星術世界に「魔法」を取り戻そうという動きには、このような学問的な流れが背景としてあるの。実はチャールズ・ハーヴェイさんも、ジェイムズ・ヒルマンの友人だったんだよね。

 
そうした経緯を踏まえると、「占星術はDivination占いなのか?」という命題がむこうでホットな議論の呼び水となるのも理解できますね。これまでは、いや違う、占星術は科学なんだ、と半ば強硬に言い張ってきたけれど、もはや現実のリアリティーはそうした強弁が通用しないところまでとうにきていたと。

リアリティーの変容、すなわち魔法magicとしての占い。魔術、占い、占星術。その中でもう一度、星が占星術が人間のリアリティーをいかに捉ええるものなのかを問い直してみよう、と。今回のテーマはそういう占星術における認識論的枠組みの再構築の必要を改めて突きつけているのだとも言えるかも。


●学問レベルで占星術を研究する場


 
しかし、今回なんといっても感動したのが、そういうテーマを扱いつつ、適度な距離感をもった大人のコミュニティが成立していることでした。人種や社会的立場を越えて占星術が好きな人が集まっている中で、お互いに「一番興味があるテーマは何?」とか「どこが一番おもしろかった?」などと会話が弾んだことも素晴らしいと思いました。

で、おすすめの本とか教えてくれたりするんだけど、それ以上には踏み込まない絶妙な距離感が心地よかった。占星術関連で純粋に知的な交流ができるというのは、ほとんど体験したことなかったですから。



学問レベルで占星術をまじめに研究しようという人たちがあんなに大勢集まるというのはすごいことだと思うよね。イギリスでももちろん、テレビに出るようなポップな占い師はたくさんいるから、占いをやっている人の層の厚さを感じます。

この大会に参加している人は、いろんな人がいるけど、生業としては占い原稿を書いたり、個人鑑定をしたりして、専門的な本を書いたり、英国占星術協会のジャーナルに寄稿したりしているね。

ただ、どちらかというと、それほどアカデミックでマニアックではない講演も多いから、僕はここ数年、足が遠のいていたんだ。そのかわり、ニック・キャンピオンとかリズ・グリーンを中心にしたような、学問的な小さな学会にばかり顔を出すようになっていた。でも久々にいくとこういうお祭り的なのも楽しいね。


年次大会のディナー風景

種族を超えたシャーマンが何年かに1回集まることがあるらしいけど、この大会はそれと似たようなものと言っていた人がいたんだよ。

 
 そうですね、なんとなく「シャーマン」という在り方は、今後の鍵となる気がします。カウンセリング?占い?いやあ、大切な儀式です。と言えるような感性というか。

それから最後に、ごく個人的に印象的というか、そうかあと思ったのは、じつは鏡さんほど“分かっている”人はイギリスの年次大会へ行ってもそうそういないということ。

もちろんすごい人はたくさんいるけれど、逆にじゃあ鏡さんが交流されているニック・キャンピオンさん、ジェフリー・コーネリアスさん、マギー・ハイドさんら長老級の大家と同等に語れる人がいるか?といえば、ほとんどいなかった。

鏡さんが家族同然に親しくされているジェフリー&マギーさん夫妻にしても、考えてみれば二十年近く前の時点で、「占星術は占いdivinationなのか?」というラジカルな問いを立ていた訳ですからね。


『ユングと占星術』の著者であり鏡も親交の深いマギー・ハイドさんと。




ということで、日本での鏡さんがされているお話がじつは世界的にも貴重なものだということが、よーーーくわかりました!


 お! シュガー君、いいこと言ってくれるね。ということなので、皆さん、僕の占いサイトを来年もよろしくお願いします。



(了)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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