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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.23 「心理占星術」見直し 1
2014/6/10


今日は、ちょっと改めて「心理占星術」を見直していきたいなって思ってるんですが、いかがですか? 近代占星術の父といわれるアラン・レオに注目したいと思います。


おお!!アレン・レオ!いいところに注目してくれましたね!実はぼくもレオの再評価をすべきだと思っているんだよね。
まずは、個人的な思い出から。

今の若い占星術ファンの間ではどうかわからないけれど、僕が占星術を学び始めた70年代終わりから80年代ではアラン・レオの名前は伝説的な響きを持っていました。

日本で本格的に占星術を普及させたのは、ルル・ラブア先生の存在が大きいと思うんですが、その先達にあたるのは潮島郁幸先生らであったわけですが、その著書の大きなソースが、英国の占星術家マーガレット・ホーンのThe Modern Textbook of Astrology(1951)でした。これは英国の占星術スクール「ファカルテイ・オブ・アストロロジカル・スタデイーズ」の教科書的な役割をはたしてきたんですね。

その流れをたどっていくとチャールズ・カーターがいて、さらにその前にアラン・レオがいる。1915年にアラン・レオとその妻ベシイがイギリスに「神智学協会占星術ロッジ」を設立。これが英国占星術教会を含め、現在、英国に存在するいくつもの主要な占星術団体の「母」になっているんですよ。占星術コミュニテイなるものが存在するとしたら、実はアラン・レオこそその水源であるといっていいわけだよね。

それだけ重要な人物であるにもかかわらず、どうも、このところアラン・レオの旗色は悪いような気がしていたんですよ。

あとでお話しすることになると思うけれど、アラン・レオには現代的な視点からするとかなり「オカルト的」な色彩が強いから。


●占星術の敵は占星術師


占星術を「科学的学問」にしようと努力されている占星術家たちからすると、占星術を呪術やオカルトにとどめてしまっているというふうに見られてしまった。ときに「占星術の最大の敵は一部の占星術家たち自身だ」なんて表現もあって。

でも、そんな表現をしらないはずの、英国の占星術家ジェフリー・コーネリアス博士は、最近のニューヨークのセミナーのときに、占星術を「疑似科学」にしようとする人たちをさして「占星術の最大の敵は、占星術家」とはからずも同じフレーズを出して、ちょっと笑ってしまった。


立場を異にする占星術師から同じフレーズが出てきたのは面白いですね。


まさに。それで、アラン・レオはまた気の毒なことに、伝統占星術をやる「伝統派」「古典派」といわれる人たちからも批判されることが多かったんだよね。

レオは占星術の歴史を断ち切って、それまでのルールや法則を簡略化しすぎてしまった、占星術を「改悪」してしまったのだ、というわけ。まあ、今はあまり声高にそういう人はいないと思うけれど。



これはあくまでも僕のイメージですが、今日「占星術」という響きになんとなくロマンチックなものを想起するとすれば、それは間違いなくアラン・レオの影響だと思います。「霊的な進化」ということを占星術の文脈で言い出した走りは彼ですからね。一方、古典派というものは、現在「いかに当てるか」ということを大切にしているという風に理解されていますね。


言ってみれば、アラン・レオは、統計によってたつ科学主義者といわれる占星術師、古典派といわれる伝統的な占星術師の両方の立場から批判されがちな気の毒な人ということになるのかも。実際、そういう批判者もレオがいなければたぶん存在しなかったと思うんだけど…。


●アラン・レオと神智学



そうしたレオに対する批判はいつ頃から顕著になったんでしょうか? 90年代位から?


いやいや、批判ということではないけれど、レオのもつ「オカルト性」を脱色しようという動きはもっと初期からあったと思います。

レオのオカルト色…それはとりもなおさず、「神智学」だといっていいわけだけれど、神智学から脱しようという動きのもとにファカルテイやいくつかの団体が誕生していったわけですから。

もっとも、僕自身も若いころは前世やカルマがどうの、アストラル体が、というような「オカルト色」に戸惑っていたのです。

91年に書いた僕の心理占星術の入門書『魂の西洋占星術』では、心理占星術のパイオニアであるデイーン・ルデイアを「心理学というよりもオカルト的な方向に流れているようです」とさらりと流してしまっていました。

アラン・レオの著作物は、10代、20代前半の自分にとってオカルト過ぎたという印象があったな。アストラル体がどうしたとか言い出してる。けれど、リズ・グリーンはそこはほとんど排除してユング心理学の枠内だけの言葉でおさめていて、僕はそれに出会ってリズ・グリーンすげーっ!ってことになったわけです。

神智学の教義を「信じる」ことはないけれど、それを否定せずに系譜として冷静に消化する能力は20代の僕には、あるわけなかったんだよね。


アラン・レオが出てきた背景としては、19世紀末はご存じの通り、降霊術なんかが盛んに行われて心霊主義が台頭していた時代です。

キリスト教の求心力がなくなってきて、信仰の柱となるものは代わりにないのかということになり、スピリチュアリズムを背景にして、ロシア出身の霊媒だったブラヴァツキーの神智学協会がでてきて、「人間は霊的に進化しうる存在だ」と言う考えに多くの人が飛びついていった。

アラン・レオはそういう考えを、占星術を通してもっと一般の人に広めていこうとして、冊子を発行したり、1シリングホロスコープと銘打って安い値段でホロスコープ作ってそれを読んだものを送ってあげたりしてたんですよね。

儲けのためではなく、あくまで先の時代精神に応えようとする使命感をもってやっていた点が「占星術の父」と言われる所以だと思います。それに100年以上経った今テキストを読み返しても古びてないと言うか、面白いんですよね。それはやはり偉大です。

あと、近代占星術で一番大きい貢献をしたのは「太陽星座」を採用したことですね。ブラヴァツキーの霊的な、不可視の太陽という意味合いで「太陽星座」を用いたようですが、その点について鏡さんはどう考えていますか?


そう。けれど、太陽星座占いというのは、簡便化された星占いとされてしまった感があるのが残念だよね。もちろん、誕生日だけでわかる星座というのは便利だったし、1930年代以降のメデイア占星術では大きく普及していきます。ただ、これはレオの没後のことです。

彼の思想の中核にあるのは、ソーラーロゴス。ソーラーロゴスとは、宇宙には、キリスト教でいえばイエスのような存在、つまり、宇宙を司る根本原理があってそれが太陽なんだ、という考え。

この、目に見える太陽ではなく霊的な太陽があるという考え方は、新プラトン主義から連綿と続いてきたもの。フィチーノらのルネサンス時期のオカルト復興を経由して、神智学協会が復活させたもの。

キリスト教ではない、古代から続くヨーロッパのスピリチュアルな系譜を継いだ上での「太陽星座」という話しなんだけど、「本当の占星術は雑誌の占いのように12星座だけじゃなくて、ホロスコープという細かいチャートを読む複雑なものです!」って言いたがる人たちからすると、太陽星座占いは単にインスタントな占いなだけ!というふうに大きく誤解されてしまったというわけ。こんな残念さがアラン・レオにはあるんですよー。気の毒(苦笑)。


占星術って本当はすごいんです!って言いたい文脈でみんなその言い回し使いますからね。
占いは統計学ですってのと二大巨頭。あと、太陽の重要さを表そうとした指標としては、星座の記述をかなり内面的に書き換えていきましたよね。


●19世紀まで星座の性格描写はほとんどなかった



そうそう、19世紀までの星座の記述って半ページくらいしかないの。


牡羊座は毛むくじゃらで顔が赤いとか、そういう記述でした(笑)。場所なら戦にいい場所です、とか、性格の描写では全然ないのは知らない人からすると意外なことだと思います。


ニック・キャンピオンも『世界史と西洋占星術』などで指摘しているところだけど、17世紀の大占星術家ウイリアム・リリーの代表的な占星術の教科書『クリスチャン・アストロロジー』を開いてみても、リリーは、800ページ以上もあるこの大部の著作のなかで、わずか半ページで牡羊座の記述をまとめてしまっています。

性格描写といえば享楽的、節度のない、乱暴な、たった3つの形容詞だけ。あとは牡羊座がつかさどるものとしては「かつて家畜が餌を食べていたところ」「砂と丘」「泥棒の隠れ家」、とか、病気の種類とか。むしろ、性格的な面でいえば惑星のほうがまだ記述は充実している。


19世紀末より前の占いは、それがすべてではないにしても、実際に探しものを当てるとか、そういう活用が主だったってことですね。少なくとも性格判断ではない。そこを継いでいるのが、いわゆる古典派の伝統占星術です。


(つづく)


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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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