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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.23 「心理占星術」見直し 2
2014/6/13


アラン・レオ以降、性格描写をするようになっていったんだけど、古典派からすると「そんなのはなんとでも言えるじゃないか」ってことになる。わかりやすいツッコミをされてしまう。

それがアラン・レオになると、牡羊座の記述はとてもリッチ。全7巻にわたるレオの占星術教科書の最初に当たるAstrology for Allでは13ページから47ページにわたって太陽星座の解説がある。レオにとって太陽は「個人性individualityを示すものであり本人の性質の不動の基盤」だったのです。(”Key to Nativity”)

「牡羊座は前向きであり、高度な理想をもとめるリーダーであり、パイオニアである。頑固なことはあるが、高い知的な力をもつ。先のことに対して感性が鋭いせいか、未来を予言することを好む…」(大意)といった描写が細かい文字で3ページくらいも続いていくんですから、17世紀のリリーとは全然違うでしょう? いまの星占いの性格描写に直結する内容です。


●占星術と霊的進化論

ところがそこだけではすまない。別のところでは、牡羊座、牡牛座は未分化な意識状態を表していると言っているんです。これは神智学的な思想を背景にしていると思うんだけど、チャートは霊的な進化、心の進化のロードマップだという考え方につながっていく。


それについては、僕の手元の資料ではこんな風な象徴的な一文もありますよ。「それぞれのホロスコープは栄光に満ちた進化のステップを示すものであり、魂の性格と関係を表す、そのことによって自我が今回の誕生によって到達する段階を示している。」(アートオブシンセシスより)


霊的進化論についてもう少し説明しておくと、ブラヴァツキーの「神智学」の仮想敵は、ダーウィンだったわけだよね。ダーウィンのヒトの祖先はサルだという進化論からすると、人間だけが特権的な生き物ではないということになるので、伝統的なキリスト教界の人にとっては大変困る。人間だけが魂をもっていると考えていたわけだから。ここらへんは日本人からすると理解し難いんだけど。

ブラヴァツキーはこういう唯物論的思考に対してものすごく反発したんだけど、ところが彼女も進化論を取り入れた。人間の魂は不滅である、と。生まれ変わりを繰り返すことによって人間の魂は進化していくんですよ、と。だからこの世はレッスン場で、星ごと、或いは民族ごと生まれ変わる、と。


そうでしたね、金星から地球へとか。伝統的な仏教の教えでは、輪廻と言ってもそういう考え方では全くありませんでしたから、ある意味で、神智学が輪廻転生の科学を生み出したと言ってもいいかも知れません。


7つのサイクルで生まれ変わるとかすごく細かい宇宙論を組み立てた。それがおそらくいわゆるアセンションのルーツとなってるはず。



●占いは、未来予測ではなく「性格の傾向」とすると、魔女禁止法で訴えられない



あと、レオについて大きかったのは、当時はまだ魔女禁止法があったこと。


ああ、アラン・レオ、そうですよね。2回訴えられましたね。1回目は無罪だったけれど2回目は有罪となって罰金をはらってる。で、その年に亡くなったんですよね。それはいわゆる憤死だったんでしょうか?


1890年に雑誌を発行しているんだけど、その時点では占星術は天体の位置と角度によって未来を予言する科学である、と定義しているんです。こうした未来の予言、この予言(prediction)って言葉が引っかかったみたい。

当時の魔女法ではさすがに魔術をかけることができるとか予言ができるということは前提になっていなかったけれど、「未来を予言できると詐称する」ことは有罪だったから。

そこで彼は戦略を変えて、わたしがやっているのは「性格の傾向」である、と。だからそれまでの教科書を全部修正しようとしたの。結果、ものすごく昼夜を問わず働いたから過労で死んだんじゃないかと言われてます。


つまりアラン・レオが占星術の文脈上で転換したのは、2点ですね。未来の“運命”ではなく、あくまでも性格の“傾向”をみるものだと言ったという点と、人間は生きてるうちに変わり得る、ということ。

後者についても、キリスト教世界の人からしたらものすごいショックだったわけですよね。だって、人間が神様に近づくなんてあり得ませんと言われ続けてきた訳だから。

そこでは霊的に進化を遂げていく流れから外れた人は獣人とか、人ではない領域になっていく。こういう霊的進化論は、60年代のカウンターカルチャーの思想や、オウム真理教など新興宗教の教理のベースとなっている、と大田俊寛氏などは言ってますね。

上祐さんの言から、麻原は「人類の種の入れ替え」をしようとしていたのだと。確かにこの言い方はまさに霊的進化の過程から外れた獣人種を社会から無くそうという発想から出ています。


アラン・レオはもともと貧しい生まれでクロウリーと同じで原理主義的なキリスト教徒の家に育っている。世紀末英国の工業地域で貧しく働く労働者を見ている一方、イギリスには貴族階級もあるわけで。

考えてみたら、インドの「カルマ」の考えがカースト制度とセットになっているとすれば、英国の階級社会もまたこの考えと親和性が高いともいえるかもね。努力がなぜ報われないのか、ということからスタートし、前世とかカルマの思想に共感したんだと思う。

のちのEsoteric Astrologyとう本の冒頭では、人はみんな本当は平等なんだけど、エゴのありようによってその現実化の形が変わるといっています。陶器はいろいろなかたちがあるにしても、それを変えるのは職人であるのと同じように、と。そして人にはその背後に、大文字のStarがあるのだというのです。


●アラン・レオ、妻との出会い


ひとつロマンチックな話があって、1シリングホロスコープで奥さんと出会ってるんだよね。奥さんとなる人が知人を介してホロスコープをやってもらいたいと打診があった。ヒントなしでデータだけ送ってみたら、その答えがすごくよく当たっていた、と。

彼女は神智学協会に入っていて、手相と骨相をやっていました。それでいつかアラン・レオに会いたいと思っていた。それでホロスコープを申し込んだだけど、アラン・レオと一緒にホロスコープ分析をしている人が、たまたま自分では見れないからアラン・レオに見てほしいともってきて、彼がみたところ、自分と太陽と月がコンジャンクションでほとんどすべての星がトラインでこの人とは結婚するだろうとわかった、という。

それで彼は、自分は占星術と神智学に人生を捧げるから独身を貫くつもりだったけれど考えが変わったと言って彼女に会いにいった。まだ早い時間だったけど彼女のお父さんは寝てしまっていたから、2人で夜中まで喋り倒してホテルに帰ろうとしたところ、明日は早くに神智学ロッジに行かなければならない、といったところ、彼女のほうもわたしもそこにいきます、と。

それで2人は結婚し、奥さんとなったベッシー・レオは彼の仕事をアシストすることになったという。けっこうロマンチックなんだよね。二人はしかし、純潔なまま結婚生活をつづけたとも言われています。

あと、レオの大きな功績としては占星術のロッジを作ったこと。1915年にいまの英国占星術協会の原型をつくったんです。このロッジはいまでもロンドン占星術ロッジとして存続しています。


そうそう、じつは神智学協会といえば学生の頃、日本の神智学協会に資料請求したのを覚えています(笑)。確か早稲田あたりに事務局の看板を見つけたから直接ノックしてみたりもしたんですけどね。その時は縁がなかったのかな。


結構動いてるね(笑)。アラン・レオが影響を受けた神智学協会のプラスの面については、スピリチュアリティの系譜というのがあると思う。なぜかというと、人間の魂と星とを結びつけることは、古代から占星術には連綿とあって、それが心理学というカタチをとって再浮上してきたのだと理解すべきじゃないかな。

(つづく)


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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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