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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.24 カード占いの魅力 1
2014/8/27

  
今日は鏡さんが占星術と同じように研究されて、コレクションもされているカード占いをテーマにしたいと思います。まずはそもそもカード占いっていつ頃から始まったんでしょうか?



紙や印刷技術の発展を見てみれば自ずとわかるけど、印刷されたカードそのものだってじつは、古代から続く、といえるほど歴史が古いわけではないんだよね。ましてやカードが占いに使われるようになるのは18世紀の後半になります。

あれほど、当時のことをいろいろ書き込んだダンテやシェイクスピアの作品の中にも、星占いなどについての記述はあるけれど、カード占いは登場してません。

トランプそのものもヨーロッパに入ってくるのは14世紀。十字軍などを経由してイスラム圏からヨーロッパのラテン系の国に入りました。因みにこうしたカードの原型は中国に遡るようですね。


ユーラシア大陸の東から西へと渡っていったものなんですね。トランプって最初から遊戯として使われていたんですか?



そう。最初は紙を手に入れられるような、富裕層の遊戯だったんじゃないかな。今のタロットの成立はさらに15世紀前半。タロットもゲームであったものの、高価だったので観賞用という面もあったかも。



遊戯としてのタロット。と言っても今の時代と当時とでは遊戯の位置づけや意味合いが微妙に違いそうですが、ではトランプやタロットが占いとして使われだしたのはいつ頃なんでしょう?



18世紀に入ってだからずいぶん後だよね。ただ、ルネサンスの頃に、ダイスを振ってその組み合わせを、トランプのようなものが盤というかシートになっているものを占い的に読むというのは成立していたみたい。一枚一枚のカードになっていたのではないけれど。

占いとしてのタロットが広まったきっかけとなったのは、1781年にフランスのジェブランという人がタロットエジプト起源説というのを唱えたこと。タロットは占いというよりも古代エジプトの秘儀を寓意化したものだという説が登場しました。

フランス革命前夜の時代で、いわゆる「アンシャン・レジーム」、古い時代の枠組みを壊して乗り越えることが唱えられていた。そのレジームを支えていたのはカトリックだったから、カトリックよりも古い人類の英知が求められていたようで、白羽の矢がたったのが古代エジプトだったよう。なんでもエジプト起源にされた時期があったようです。


ヨーロッパにおいてのエジプトブームの時代ですね。



そうそう。その直後に「エッティラ」(エテイヤ)と呼ばれる、プロのカード占い師が出現。文学のなかではカサノヴァのなかにトランプ占いをする女の子が出てくる。


それは面白いですね。稀代のスーパーナンパ師が占いの火付け役でもあったとは。それでその頃、トランプもタロットも両方、ゲームとしても、占いとしても使われていた訳ですよね。ただタロットをゲームとして楽しむ文化はその後すっかり廃れてしまったんですか?



いまもイタリアなどの一部ではゲームも残っているはず。


カード占いというのは、紙の普及によって中産階級にも広まっていった感じでしょうか。占星術はきちんとやるには技術も費用も必要だったでしょうからね。ゲームにも占いにもなり得る身近なものがカードだったというのはとても分かりやすい。



この間、伊泉龍一さんと一緒にやったセミナーで話が出たんだけど、タロット占いを中心に見据えると、最初から2つの流れに分かれていく。エッティラ、ないしはルノルマンに代表されるプロの占い師たちがいる一方で、19世紀の魔術師エリファス・レヴィが提唱する、タロットは古代エジプトないしカバラの秘儀を表したものだと解釈する人たちがいた。

魔術的な人たちは占いを少しバカにするんだよね。タロットは占いもできるけど、じつはそこには宇宙の真理が書かれている、と。それで魔術オカルトの方向にいく。これにはレヴィから、魔術結社の黄金の夜明け団という流れがあります。

黄金の夜明け団の中で、ウエイトが、いま現在普及しているウエイト版タロットを作ったわけだけど、おそらく本人は占いとしてのタロットをどれだけ重視していたのか……。

実際、ウエイトはもう一つ、より秘教的なタロットを作っていますし。しかし、1970年代にアメリカのイーデン・グレイがわかりやすいタロット占いの本を書いたのをきっかけにタロットが爆発的に占いとして普及していく。欧米のタロット関係者はグレイを「タロット占いの母」と呼んでいます。現在活躍しているタロティストでグレイの影響を直接、間接に受けていない人はいないでしょう。



今のお話を聞いて思い出したんですが、ロンドンのオカルト書店に行ったときに、お店の人からタロットをやっている人たちと占星術をやっている人たちの属性は少し違うんだという話をきいたんですね。日本だとこの2つは占いということで同じような印象ですが、そこらへんは鏡さん、どういう印象を持っていらっしゃいますか?



うーん、どういうことだろ? おそらく、タロットというと魔術に結びついていて、さらに魔術というと、どうしても黒魔術の印象が先立つから、キリスト教圏の人たちからするとちょっと怖いというイメージがあるかもしれないね。あと、タロットは、直観とか霊感を使うイメージがあって、占星術はロジカルだというのもあるかもしれないね。



なるほど、科学とディビネーションという構図がここでもイメージとして表れていると言えそうですね。ところでトランプ占いでスタンダートな占法やスプレッドみたいなものってあるんですか?



それはちょっと僕も調べたいところ。どうなんだろうね? タロット占いが日本に普及したのが70年代で、その前はトランプ占いが主流だと思うんだけど。多くのトランプ占いの本には共通して乗っているスプレッドもあります。「グランドスター」とか。

手元にある、1冊まるごとトランプ占いに当てた本は、大正14年の上殿重次郎という人の『トランプの占ひ』ですが、ここにも「グランドスター」が登場しているし、52枚と32枚の意味(正逆ともに)や、36のスクエアなどが出ています。どこか最初のソースがあるのかなあ。


そうなんですか。これは人から聞いたんですが、佐藤栄作は執務室でトランプ占いをしていたという話しがあるんですよ。真偽は定かではないですが、奥さんの回想記によると、大事な人事を決める際、一人で執務室にこもりトランプ占いをしていたらしいです。

最初の佐藤栄作内閣が発足したのが64年で、72年に総辞職してますから、ちょうどタロット占いが普及する前ですね。もしもう少し後の時代だったら、日本の総理が執務室でタロット占いをしていた、なんてこともあったかも知れませんね。

ところで、鏡さんはそもそもなぜカードに惹かれたんでしょうか。


なぜかなああ。占星術よりもタロットのほうが先だしね。なぜか魅せられてしまったんだと思う。


こんなことを言っては身も蓋もないですが、実際、タロットが物凄くビビットに当たった経験ってありますか? タロット占いをやっている友達の話をきくと、当たるときはものすごくわかりやすく当たるということはごく当たり前にありますね。


そういうこという人はいるよね、たしかに。


それからここ最近は、スピリチュアル方面では、天使とか妖精のオラクルカードがものすごく流行っていて種類もたくさんありますね。あと、カードといえば、ポケモンカードや、かつてのビックリマンシールなんかも大興奮しましたし、定期的にブームがやってくる印象があります。カードというアイテムは、どうしてこうも人を魅了しコレクション魂を刺激するんでしょうか? 


カードというのは、集めていって増やしてコンプリートをめざすのと、タロット占いのように最初から完成しているものの2パターンあるよね。共通しているのは、この世界が自分の手の中に収まるというのがいいんじゃないかと思う。



僕が小学生のとき大流行していたビックリマンシールの「悪魔VS天使」シリーズにも、神様とか悪魔が出てきて、創世記を思わせるようなストーリー性がありましたし、シールの裏にも謎めいた文章が書いてあったりして、確かにそれで戦うことというより、集めて自分なりの世界を作ってる感覚が楽しかったなあ。



「手の札を見せる」とか「外交カードを切る」という表現があるけど、それはまさに自分が戦う場における表現だよね。占いは「カードが出る」ということになる。能動と受動の違いというか、男性的と女性的ともいえる。

そこでですが……私も本を出したばかりですが、いま世界的に大注目の「ルノルマンカード」。この起源は人生ゲームにあるんです。人生ゲーム的な遊び方をしていたゲーム用のカードが占いに転用されたんですよ。


『秘密のルノルマン・オラクル』鏡リュウジ著
http://t.ryuji.tv/online/detail.php?online_id=10014&online_sub_id=1





へえ、面白いですね。それはタロットでも同じですものね。最後の「世界」でコンプリートですものね。



ルネサンス期に「マンテーニャのタロッキ」と呼ばれるものが作られましたが、これは「物乞い」から始まって宇宙そのものを動かす「第一動者」にいたるまでの、宇宙の存在の階梯(かいてい)を50枚セットのカードにしたもの。

明らかに宇宙の要素すべてを含みつつ、それをばらばらにし、また組み立てなおすことができるという構造をもっている。宇宙の要素を机上で弄ぶことができるわけだよね。


(つづく)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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