鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研 File No.3 そもそもオカルトって何? 1
2011/10/17



今回のオカ研テーマは第三回にして、ずばり「オカルトってそもそも何?」ってことにしました。というのも、「新月の願いは効くのか」「パワーストーンのルーツを探れ」と、これまで2回「オカ研」を掲載して、そうだ、皆さんはどんなテーマを望んでいるのかって思ってTwitterで呼びかけてみたら、どうも僕の中の「オカルト」と世の中の人との見解がズレているって気がついてしまったんです。

あと、よく僕は「鏡さんの占いってオカルトっぽくないからいい」とか言われることも多いんだけど、自分では十分オカルトでアヤシイって思っているんだよね(笑) あ、こういうとまた誤解されそうですけれど。


なるほど。実際Twitterではどんな反応があったんですか?


スピリチュアリズムとか生まれ変わりとか、あとコックリさんみたいなものをテーマにしてほしいというのが多かったかな。僕はさ、「魔術とは?」「占星術とは?」「錬金術とは?」みたいなことを取り上げてほしいといわれるのを期待していたんだけど(笑) それで、じゃあいっそのこと「オカルトってそもそも何?」を一度ちゃんと振り返ってみようかな、と思って。


一般的なオカルト的想像力の出所ってどこでしょうね。やっぱり雑誌の『ムー』で取り上げられるようなUFOとか心霊現象、超古代文明なんかでしょうか。


そうそう。実は『ムー』では僕もお世話になっていて、最近12年ぶりに連載もさせていただいています。40代以上の僕世代の人にとってはテレビの「水曜スペシャル」のUFO特集なんかも原体験としてあると思う。それでね、ここに今している話の参考になりそうな、いい本があるんだ。『1970年代の日本を読む オカルトの帝国』(一柳廣孝著2006年青弓社)


面白そうな本ですね!(と、パラパラめくる)
オカルトブームは、1970年代初頭に起き、オカルト元年は、「1974年」と書いてありますね。火付けとなったのはエクソシストの公開によると。目次には、エクソシスト ノストラダムス 新宗教・・・と続いていますが。


そういえば、僕が最初に触れたムー的なオカルトはピラミッドパワーだったな。昔さ、「王様の発明」というアイデアグッズやマジックのグッズなんかを扱ったお店がチェーンであったんだけど、シュガー君の年齢では知らないかな(笑)

そこでピラミッドの模型の上で振り子がくるくる動いている展示が。何でもパワーがあるという触れ込みで、ピラミッドグッズみたいな置物が売っていたの。それ見て子供心にびっくりしたのをよく覚えてる。いやもちろん、モーターで動いているのに決まっているんだけど(笑)


へえ、知らないな。チェーンでそんな商品展示があるなんてなんかスゴイというか、時代を感じますね。『ムー』の創刊は1979年ですから、鏡さんがみたピラミッドも同時代ですよね?


もちろん、そう。それでこの『オカルトの帝国』という本を読んでハッとさせられたんだけど、エクソシスト以前は、ホラーとオカルトの境界線があいまいだったんだよ。つまり、なんというか、エクソシストのころは、見世物小屋とかアングラ的世界なんだね。


60年代後半のアングラ演劇的世界・・・怖いもの見たさですね。寺山修司の天井桟敷とか、横尾忠則のポスターのイメージ。あと個人的には澁澤龍彦とか。


シュガーくんさすが。まあ、寺山修二とか横尾忠則、澁澤龍彦というと、それぞれちょっとずつ方向性違っているけど、これらはもっと文化的な香りするよね。もっと大衆的な感じじゃないかな。少年マガジンのグラビアでも、UFO特集とかあったらしいよ。
この本が面白いのは、そうしたアングラの怪奇性と公害問題など科学の負の側面が結びついて表象されていたと指摘してるんだよ。


そうか、1970年の大阪万博前後、戦後日本が高度成長していって、科学の進歩がいくところまでいって、郊外から妖怪とか遠野物語的なものが消え去ることに対してのアンチとして「オカルトブーム」が出てきたとも言えるのかな。公害という、それまでの日本の自然観とは異質なものが人間世界に入り込んできたという恐怖もあったはずだし。


本来は科学の光が世界をくまなく照らすはずだったのに、科学がかえって奇怪なものを呼びこんでいるのではないかという不安が顕在化したのかも。もう一方では、そうした怪奇的なものを楽しもうという余裕もでてきた。オカルトと深くかかわる占いブームが起こるのも70年代。70年代初頭のアンアン、ノンノの創刊と同時にファッション的な「星占い」が普及しているから。


同時代、海外というか欧米ではどうなんでしょう?


ゴシックカルトやスプラッターものはその前からあるけど、なんといってもコリン・ウィルソンの『オカルト』がスタートでしょう。「オカルト」という言葉がまさに全面に押し出されたわけで。ムー的なテーマを全部網羅していたし。これが出たのが71年。

ただ、コリン・ウィルソンのオカルトは「科学と地続きにある」というのが特徴。科学技術をつきつめていけば、オカルト的なことも解明できるというスタンス。それが超能力開発とかにつながっていくんだけどね。


同時期の1973年には五島勉の『ノストラダムスの予言』が出てベストセラーになってます。超能力開発は日本におけるオカルトイメージの根本にもなってますね。ここから既に90年代のオウムにつながっていく流れを感じます。順番としては、オカルト、ニューエイジ、スピリチュアルと10年サイクルでしょうか?


オウムがあったから95年以降タブーの10年というのもあったかも。


ああ、そうですね。
戦後の科学技術への信仰の裏返しとして70年代オカルトブームが起こったのだとしたら、その後の流れをもう少し詳しくみていきたいですね。


うーん。科学技術の裏返しともいえるけど、じつは接続していると思う。発達した科学技術を使って、どうやったら内的な力を強化し、発揮できるか、その方法を開発しようという発想。科学モデルの援用でもある。そのパラダイム自体は変わっていないんじゃないかな。


なるほど、それが超能力やパワーにつながっていき、ESPとかスプーン曲げとなっていって、実質的に近代科学的パラダイムは持続・加速していったと。そういえば、僕が新入社員の頃、『できるビジネスマンは瞑想をする』という本を先輩にもらったなあ・・・。


そうか。超能力開発は潜在能力開発とつながっているし自己啓発系とも地続きかもね。
あと、70年代オカルトはある種見世物小屋的な側面があったという話をさっきしたけども、カラーテレビの一般家庭への普及もそれに寄与しているだろうね。水曜スペシャルに代表されるUFOの映像とか、ああいうインパクトのある映像をみて、それが「オカルト」のイメージとして定着していった訳だし。

それで80年代に入ってニューエイジになると、クリーンオカルトというか、テレビ的じゃなくなって、輪廻転生とか精神論的なことがテーマになってきたんだよね。そして80年代も後半にってバブルの消費社会になると、チャネリングが登場してくる。


それって占星術のブームの系譜とリンクしてますね。70年代は占星術を科学的に、計量的に、統計学的に裏付けようとする流れがありましたし、80年代に入ると今度は占星術は深層心理学に擦り寄っていき、心理占星術が表舞台に登場してきました。まさに占星術は時代を反映していますね。


本当にそう。そして日本で90年代のアタマにココロジーが流行ったころ、欧米でも心理占星術が一番元気だった気がする。
なにしろ、あのペンギン社のペーパーバックで「アルカナ・コンテンポラリー・アストロロジー」というシリーズが出て、リズ・グリーン、エリン・サリヴァン、ハワード・サスポータスといった知的で読みごたえのある心理学的占星術の専門書が次々に出ていた時代だった。ぼくもずいぶんはまりました。


新々宗教もそれにあわせてきてますね。戦後すぐにできた新宗教に入るのは、貧困や病気といった動機が多いんですが、80年代に入ると、そういった直接動機じゃなくて、なんとなく死にたいとかそこはかとなく不安だといったような、間接動機になっていきます。

また、1976年版『国民生活白書』によれば、60年代末の時点で3000万人ほどだった全国神社仏閣への正月三が日の初詣者数が、76年時点で6000万人を超えているんです。単純に倍になっている。つまり質、量ともに、70年代はオカルト・宗教界において日本人のターニングポイントになっているんですね。

ところで、僕はリアルではわからないんですが、ニューエイジは80年代後半からですか? 自己啓発セミナーの流行は90年前後がピークですよね。


うーん。ニューエイジブームの象徴的存在はシャーリー・マクレーンの『アウト・オン・ア・リム』(日本語版初版1986年)。ハリウッド女優が生まれ変わりを信じていることを告白した本で大いに話題に。


あと、たとえばカルロス・カスタネダとかもですか? 人類学者がフィールドワークとしてシャーマンに弟子入りするうちにミイラ取りがミイラになり、自分もシャーマンになってゆくっていうシリーズものでしたけど。その描写がシャーマニズムの世界観を提示するようになったきっかけになりましたよね。


あのころは本の内容自体カスタネダの「創作」ではないかという批判というか論争もずいぶん出たんだよね。カスタネダ自身、謎につつまれていて本当に実在するのかとも言われていたし、ネット以前の時代だから・・・。ただカスタネダはニューエイジよりもっと前でコアだし、一般的なブームとはまではいえないかな。

もちろん、精神世界やニューエイジには強い影響を与えてロングセラーだけど。以降、同じようなスタイルの本がいくつも出て、「シャーマノベル」(シャーマン+ノベル、の造語)ともいうべきジャンルが成立している。カスタネダについては宗教学者の島田裕己先生の研究書もあります。


なるほど、そうですか。それで93年に、青山圭秀が『理性のゆらぎ』でサイババを紹介してブームが起き、その後オウムの影響で10年ほどオカルトや宗教への警戒・沈静ムードが続いた後、2005年に「オーラの泉」が始まっています。


そうだね。で、こうなってくると、「オカルト」的なテーマが人生訓となってクリーンなイメージになってきているのがよくわかるよね。「オカルトとは違って・・・」という言説がこのころから登場したんじゃないかな。ところで、そろそろ本題というか(笑)、オカルトという言葉の使われ方って歴史的にはどうだったのかな? 振り返ってみようよ。

(つづく)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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