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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.28 占いと神話 1
2015/3/16

占いと神話 1


今回は「神話」にフォーカスしたいと思います。神話と占いは非常に親和性が高くて占いをやる人にとっては必須科目だと思うんですが、人気ないんですよねー。僕が授業でギリシャ神話をとりあげる、というと、興味ないとか、日本人には関係ないとかけっこう残念な発言が返ってきたり。


名前がややこしいし荒唐無稽すぎて頭に入りにくいのかもね。神話アレルギーって一部の人にはどうやらあるみたいだね。実際、ぼくもそうだんもん。プラネタリウムで話されるような星座の神話のお話しはずいぶんとわかりやすいものになっているし、僕の世代では「聖闘士星矢」だとか、もう少し下の世代ではセーラームーンなどでおなじみになっているかもしれないけれど、原典とされる『神統記』とか『転身譜』などを読もうとするとなじみのない名前がいっぱい出てきて頭の中で整理するのも大変。

それに、そもそも論だけれど、そもそも、「神話」って今の普通の使い方では「ウソの話」ということでしょう? たとえば、「安全神話」が壊れた、なんて言い方をするわけで。そんなウソの話をすることに何の意味があるのか、ということになるかもね。


確かに神話はウソであってウソでないというか、少なくとも西暦何年に誰が何をしたのかといった現代人にとって分かりやすい歴史的な時間は介在していませんね。霧が立ち込めた橋の向こう側の世界のお話という感じで。


そうそう。ところが占いや深層心理学では逆の見方をするということだよね。僕がイギリスで受けていた占星術スクールの講座は、占星術の話なんだか神話の紹介なんだかわからないようなものがたくさんありました。実際、優れた現代の占星術書にはそんなものが多いの。

ペンギン叢書も入っていた「アルカナ・コンテンポラリー・アストロロジーシーズ」なんてのはたいていそう。僕は夢中になって読んでいた時期があったけど、「占い」の「当てる技法」ばかりを求める人には不満だったみたいだけどね。

まあ、好みだから何ともいえないんだけど、たぶん、そういう人は象徴というものが理解しにくいのかも。神話や昔話が歴史を超えて、ワンパターンなのに語り継がれるというのは、そこに「誰しもが」共感したり、自己投影できる要素をはらんでいるからだ、神話の中にこそ人間経験の共通要素があると深層心理学では考えるわけです。

シュガーくんがはからずも「霧の立ち込めた橋の向こう側」といったけれど、これは境界の先の次元、日常とは違う次元ということでしょう? 神話は日常的次元で考えると「ウソ」の話。神話やおとぎ話は「神代のころ」とか「むかし、むかし、あるところに」で始まるのが定番ですが、これは新聞報道であれば5W1Hという基本も飛ばしたダメな内容だよね。でもだからこそ、意味がある。時間も場所も特定されないというのは、いつでも、どこでも起こっているということでもあるから。これを深層心理学などでは「無意識次元での出来事」と考えたりする。

そもそも、やっぱり人は「ウソ」の話、あるいは現実を超えた話が好きなんだと思うんだよね。だいたい、人の話ってそうだよね。「俺の若かったころは」なんておやじ自慢は丹念に調べていくとたいてい、尾ひれがついている。京都では「化けてはるなあ」なんていうけれど、でもその人にとっては心の本当はそっちにある。

大ヒットする映画やドラマなんて神話の焼き直しの多いこと。たぶん、みなさんご存知だと思うけれど、あの映画の『スター・ウォーズ』は神話が下敷きになっています。この映画は、僕が「マジンガーZ」とか、子供向けの映画以外で初めて映画館で見た本格的な作品だったと思うんですが、ほんと、夢中になりました。特撮にもびっくりしたけれど、同時に主人公ルーク・スカイウォーカーが仲間たちとともに巨大な帝国に挑んでいくというストーリーに本当にはまってしまったんですよね。

で、それがあからさまに神話を下敷きにしているということを知ったのは、大学生のころでした。スター・ウォーズを制作したルーカスのメンター(師)の一人は、神話学者のジョーセフ・キャンベルだったんです。テレビでビル・モイヤースがキャンベルにインタビューし、大ヒットした番組『神話の力』は今では本にもなっていますが、大学生のときに知人がこのテレビの録画を見せてくれたんです。


おお、本より先に映像を見てたんだ。鏡さんから見て、神話学者としてのキャンベルの特徴ってどんなところにあるんでしょうか?


『神話の力』は世界的なベストセラーになりましたが、このキャンベルは、アカデミックな世界ではかなりの異端児だったけれど、とにかく文武両道、博覧強記な人でした。知能指数が高い人が入れるクラブの会員で且つアスリートとして世界記録も持っていたという。

彼の野心的なところは世界中の神話を探して神話素、原神話を取り出したと主張したことにあります。『千の顔を持つ英雄』という本は、世界中の英雄神話をまとめたもので、神話の構成要素には、コーリング(呼びかけ)があって、試練があって、敵を倒して、宝を得て帰還するというサイクルがあると分析しました。

このサイクルを全部使っている神話もあれば、ごく一部だけ取り出して作られた神話もある、と。例えば「永遠の少年神話」というのは試練のところでとまっている、こういう解説をやったのが、キャンベルの特徴です。ルーカスが影響を受けたのはまさにこの部分で、「スター・ウォーズ」を見れば納得です。

もちろん、これは心理学者ユングの元型論からきています。ユングは人間には集合的無意識というものがあって、時代や文化を超えて、同じようなイメージを自然に生み出すようになると考えていたわけで。

ユングが中心的な役割を果たし、世界中の超一流の知性が集まったエラノス会議の年報をキャンベルが編集していることも忘れちゃいけないんよね。

このキャンベル流の神話解釈というのは、占星術やタロットやってる人には非常に使いやすいものなんだよね。


(つづく)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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