鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.29 なぜイギリスが「魔法の国」なのか?
2015/4/21


イギリスの魔法ツアー、今年もやります!今回はそのイギリスツアーの見所について教えてほしいという要望があったのでこの場を借りて少しお話したいと思います。魔法やオカルト好きの人にとっても興味あることだと思うので。

まず、このツアーはざっくりいうと、僕がガイド役になってイギリスの占星術や魔術、神話や伝説等、スピリチュアル・オカルトに関連する場所をめぐるという旅です。毎年1回、もう7年も続いています。リピーターの方もいらしてくださり、なかなか好評なんですよ。
『鏡リュウジが案内する英国パワースポットツアー』
http://ttravel.jp/kagami/


僕も以前何度か参加させてもらいましたが、とても充実した旅でした。自分ひとりではなかなかいけないエリアにも行けるし、何といってもその場所にまつわる歴史はもちろん、オカルト・エピソードを鏡さんがバスガイドさん並に生解説してくださるのは本当に貴重。他では体験できないものであるのは確かです。


シュガー君、宣伝ありがとう(笑)いやたしかに参加者からは好評なんですよー。大好きなイギリスの魔法や占星術がメインテーマなわけだから、毎回、すごく張り切って解説しています。


ではまずはそもそも、鏡さんはなぜイギリスのオカルトと縁が深いんですか?


子供の頃に家族といったハワイ旅行とかは別にして、初めて本格的に海外に行ったのはイギリスなんです。僕の母校ICUでは、当時、ケンブリッジに大学関係者が安く泊まれる「ケンブリッジハウス」という家があって、夏休みにはそこに滞在したんです。語学留学という名目で渡英して、占星術のスクールや魔法関係者と会ったりしていました。

そもそも僕が占いに惹かれたきっかけはじつはタロットなんだけど、近代のタロットはイギリスがブームの元だからね。黄金の夜明け団というイギリスの魔術結社が今につながるタロットの教義を完成させていってるし。そしてもちろん、イギリスは占星術協会もあったので自然とイギリスに惹かれてしまっていたのかもしれないなあ……。

ヨーロッパを見ると、もちろん、イタリアなんかもオカルト色が強い国だなって思うけど、イギリスが特徴的なのはキリスト教色が意外と薄いということ。これはイギリス国教会の影響だと思う。実際、魔女狩りなんかもカトリックの伝統があるスコットランドの一部とかは非常に激しかったようだけど他のエリアでは、ジェームズ一世の治世や一時期をのぞけばわりとゆるかったんじゃないかしら。

そんなわけで、僕は、イギリス、もちろんアイルランドではケルト的な、自然崇拝的なものが残りやすかったんじゃないかと思っています。そういう面では八百万の神々を残しながら仏教文化が根づいていった日本ととても似ていると思う。

あともちろん、英語圏だからというのは大きい。ただ、同じ英語圏でもアメリカに行かなかったのは、占星術をとってみても、プラクティカルすぎてしまう印象が強い。


ああ、そうですね、一昨年イギリスの占星術の大会に出た時も、アメリカ人の女性占星術家が「サクセス・アストロロジー」という講演をされていて、すごい人気でしたもん。内容はあんまり覚えてないけど(笑)


ま、まじ?その教室、僕はいかなかったな。いずこも同じで実利的なことに人気があるのかしらん。ちょっと寂しいなあ。僕が熱心に占星術協会の大会に出ていたとき、かれこれ20年前の90年代は、もうリタイアしたおじいちゃんたちがたくさんいて、趣味を極めているという感じでした。


ここ10年の日本を見ているとまさにスピリチュアルブームで、「スピリチュアル」という言葉の意味は本来とは違ってきている感もありますが、完全に定着しましたよね。江原さんなんかも、やはりイギリスのスピリチュアリズムの系譜をたどっているようですが、鏡さんはそこらへんはどうとらえていますか?


スピリチュアル、という形容詞を名詞的に使うのは日本独自の現象でしょう? 確かにいわゆる近代心霊主義、近代スピリチュアリズムはアメリカ発祥だったとしても発達したのは英国という側面があるけれど、日本の「スピリチュアル」はいわゆるニューエイジ運動、文化と重なるところがかなり大きいよね。英国にはニューエイジと重なるところもあるけれど、似て非なるいわゆるペイガニズムや魔法の文化があるから、そこがうまく紹介しにくいんだけども……。

単純に英語圏だから翻訳しやすいというのもあると思う。イタリアとかカトリックの伝統が強い地域はエクソシストもいるくらいだからもっとディープな部分がたくさんあるはず。

あと、やっぱりイギリスで特徴的なのは、世界で初めて産業革命を成し遂げ、近代化した国であるということ。ということはつまり、その反動も一番最初にきた国なわけです。だからナショナルトラストを作る等、エコロジー運動についても先駆的です。

チャールズ皇太子が代替療法大好きというのもあってアロマとか植物療法、ホメオパシーなんかについても寛大な人が多いんじゃないかな。あとなんといっても幽霊好きな人たちだからね。


前に鏡さんがおっしゃっていたので印象的なのは、第一次世界大戦で亡くなった人たちの霊を呼び戻す、つまりは死んだ息子に会いたいとかそういう願いから交霊術が広まったという話。


まさにそう。あと同時に科学も発達していたから、それに対して検証しようということも盛んになった。サイキカル・リサーチといいますが、それが心理学が成立するきっかけの一つにもなります。

そのスピリチュアリズムに、神智学もイギリスをベースに発達したし、魔術の伝統もありました。つまり、19世紀末のイギリスの神秘は、一方の人は科学にいき(スピリチュアリズム)、一方の人は東洋(神智学)、一方の人は西洋の伝統(近代魔術)にいったというわけです。

まあ、占星術師もこの近辺にずっといるという感じですね。魔術師は占星術はあまりやらないけどね。


ああ、そういわれるとそうですね。ところで当時の魔術師さんたちの存在って、どんな感じだったんですか?生活とか、どうしていたのかな。


当時って19世紀末から20世紀初頭ってこと?魔術師は、魔術だけでは飯は食えないから、たいていはパトロンがいるの。やっていることはこの宇宙の存在の根源のような世界の探求だから、まあ、瞑想しているようなものだからね、檀家組織のないお坊さんに近いかな。

お金持ちのオバサマがたいていお金だしているんだけど、そこには現世利益的なものは期待されていないの。そのかわり「宇宙の秘密」を解き明かすというわけです。

当時、リプトンより大きかった紅茶商会のお嬢さんが有名な魔術師にお金を出したという事実もあります。アイルランドのノーベル賞詩人イェイツが魔術に深く傾倒していたり、こういう文化的下地がたくさんあるのがイギリスの神秘世界の魅力に繋がっていると思います。


それで、たしか魔女といえば、ツアーでは現代を生きる魔女に会いにいったりするんですよね?


うん、魔女の儀式を特別に行なって頂き、参加させてもらいます。怖くない魔法の体験だと思うよ。祭壇がすごくきれいです。魔女の方もすごく聡明で穏やかな素晴らしい方で、参加された方皆さん、いつも感動しています。

魔女というと知らない人からするとおどろおどろしいイメージがあるかもしれませんが、彼女たちは、古代ケルトの暦に則り、自然のサイクルで生きましょう、この世界は女神、あるいは神々の顕現であると考えている人たちなんです。


そのあたりは以前行った人たちも大分感銘を受けてましたよね。あとパワースポットということでいうと、イギリス最大の聖地といわれ、レイライン上に位置するグランストンベリーとかでしょうか?まずはレイラインについて教えてください。


20世紀初頭、アマチュアの考古学者のアルフレッド・ワトキンスという人が、ある時、閃いたというか、ビジョンを見て、イギリスは自然の地形や古い城跡など目立ったランドマークを結ぶと直線が浮かびあがるということがわかったらしい。そこだけ言うとそれこそオカルトっぽいんだけど、ワトキンスはあまりオカルト的な解釈はしていなくて、これは古代の通商路ではないかという仮説を立てた。そしてレイラインと名付けられたのが最初。

それが1930年代、ダイアン・フォーチュンという魔法使いが、自分が書いた小説の中でパワーセンターと名付け、エネルギーが流れているラインだと言い出しました。

一挙に広がったのが70年代半ばかな。レイライン上ではUFOや妖精がたくさん見えるとか書いたジョン・ミシェルという人の本"View over Atlantis"(1961年)が大ベストセラーになりました。アルフレッド・ワトキンスの「古代の通商路」説と、カバラ的な数秘術や神聖幾何学、さらには東洋の風水など、色々な思想を重ね合わせて、英国の聖地が神秘的な力のネットワークをもとに設計されていて、大地の力を調整している、という主張。その背後には超古代文明があったという…。まあ、真偽の程はアレだけど。これ、日本でも『アトランテイスの記憶』として翻訳されていますね。


確かロンドンのアストロロジーショップのおやじさんも、繁盛の秘密はお店がレイラインの交差している上にあるからって言ってましたっけ。今回の旅もこのレイラインに沿ったコースなんですか?


まず、南西部のコーンウォール地方までバスで移動。セント・マイケルズ・マウントにいきます。大天使ミカエルが降り立ったという伝説が残っている聖地で、ここがレイラインの最西端。フランスのモンサンミッシェルみたいなところで美しい場所です。

目玉の一つはボスキャッスルの魔女博物館。これは、本物の魔女たちが使った魔法の道具を展示する、世界でも稀有なミュージアムなんです。もともとはマン島にあったんですが、何度か移設されてここに落ち着いています。現代の魔女運動にとってとても重要な施設なんですよ。そしてイギリス最大の聖地とも呼ばれるグラストンベリーに行きます。もちろん、ストーンヘンジにもね。ストーンヘンジは、行かれた方が多いかと思いますが2年ほど前にビジターセンターとミュージアムが新設されたので、二度目の方にもオススメです。あと今回はハリーポッタースタジオにも行きますよ!


お、話題の場所ですね!楽しそうじゃないですか。鏡さんの一番のおすすめの場所は?


やっぱりグラストンベリーかな。というのも、大学時代、僕が習っていた魔法の学校の先生に連れて行ってもらったのが最初だから思い出深い土地でもあります。ドルイドの聖地でもあったとされていますが、キリスト教の修道院あともあって、土着的なものとキリスト教が融合している場所です。


グラストンベリーにあるチャリスの井戸があるガーデンで、ジョン・レノンがイマジンの作詞のインスピレーションを受けたという話しを読んだことがあるんですけど、これ本当ですか?


それは僕もネットの噂レベルでしかしらないな。


前回いったときは瞑想に興味なんてなかったけど、あそこは不思議な場所で、瞑想しているグループもたくさんいましたね。今行ったら瞑想したくなるような場所ですね。赤い水と白い水があり、イングリッシュガーデンがきれいで……。


あそこにある修道院跡がすごく静謐な感じがして聖なる場所とされているのがわかる気がします。


5月だから季節も最高だし、また行きたいなあ……。


イギリスの神秘を僕が愛する理由は、なんとうか、はまり過ぎない、ベタすぎない余裕を感じられるところ。パトリック・カリーという占星術家でもある歴史学者が論じていることなんだけど、マジックとエンチャントメントは違う、というのがあります。つまり、マジックは現実を操作しようとすることであるのに対し、エンチャントメントは、異世界を感知したうえで、この世界をより豊かに味わうということ。

カリーはこの区別をトールキンから着想しています。イギリスといえばファンタジーも有名ですが、かのトールキンの『指輪物語』はエンチャントメントの世界なんですね。もう一つ世界を作り上げてそれによって、この現実世界を豊かにして、楽しむ、味わう、という姿勢です。妖精の魔法というのはこっちであるとトールキンは言っていて、占星術というのも、エンチャント的であるほうがいいと僕は思っています。

現実をてっとりばやく操作して支配しよう、なんてことなら科学技術者や経営コンサルタントさんなどにお任せしたほうがいいわけで、もっと繊細に、豊かに見える世界と見えない世界を行き来しながら味わう、という姿勢が素敵。

ここがイギリスのスピリチュアルの世界の伝統的な態度だと僕は思っているんです。

ツアーに参加される方もされない方も、オカルトやスピリチュアル、占星術という異世界を巡ってこの現実をより楽しく味わって人生、豊かにしましょう、という感じかな?

ツアー、迷ってる方はどうぞご参加を!(笑)


ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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