鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.30 シュガー推薦! 鏡リュウジの占星術本2
2015/8/27


僕もこの本を初めて読んだのは高校生のとき。最初に本格的に英語の本を読んだのはこれが初めてじゃないかな。当時、東京にあるオカルトサークルみたいなのに入っていて、まだ送料とか為替手数料とか高い時代だから、そこの人たちと共同購入しました。それでようやく手に入れたこの本。もちろん感銘を受けて、いつか翻訳を出したいと思っていました。

じつは『占星学』を出してくださった青土社の社長からは、同じリズ・グリーンでも『サターン』を勧められたんです。でも当時、生意気だった僕は『サターン』だと土星が●●座にあるとき…という表現が頻出するから構造上、占いの本というのが目立ちます。そうなるとリズ・グリーンは正しく理解されないし評価されない、と。

出版するなら、ユング心理学と占星術を融合させた初めての本格的な著作だから絶対にこちらです、『占星学』をやらせてくださいと言ったら、先代の社長が快諾してくださってやることになりました。

この本の原書のタイトルは『Relating』、人間関係なんですね。あらゆる人間関係は自分の無意識の投影からはじまっている、それならば自分を知らなくてはならない、そのためのツールとしてホロスコープを使いましょうというのがメインテーマの本。



『カラマーゾフの兄弟』と平行して読んでいた妙はまさにそこにあります。群像劇であると同時に象徴劇であり、ドフトエフスキーの自伝的要素も含まれているんですよ。そこにちょうど『占星学』が合わせ鏡のようになって…。

たとえば、「自分の闇の面に目を瞑ること。そしてそれを他人に投影することは、信じられないほどごく普通のことで、それから免れている人はほとんどいない」という一文は刺さりましたね! こういう文章のオンパレード。



リズ・グリーンの文章ってかっこいいんだよね!



事例にも色々な関係性が登場してきて、彼らの人生やそれに触れていくリズ・グリーンの語り口も惹きこまれるものがありますしね。



そして、結果的にこの本はユング心理学の入門書にもなっているんだよね。こういう言い方はアレだけど、へたなユング派の人が書いたおとぎ話解釈本よりもずっといいと思います。リズ・グリーンはもともとはユング派の分析家です。



神話を使ってざくざくと事例を掘り下げていく様は本当に素晴らしいです。あと日本語タイトルもいいですよね。



まさに! 先代の社長さんの天才的なところなんです!


これを読めばすべてを網羅できる本という感じがしますよね。relatingを当時、辞書で引いたら「関係」とかそういうのだけではなく、「紡ぐ」とか「繋ぐ」という意味もあると知って、よく分からないけどこれは深いなあ、と感激したんですよ。



結果「占星学」で正解でした。装丁もインパクトのあるものとなり、長く売れ続ける本になってよかった。



あと、占星術初心者におすすめなのは『星のワークブック』かな。やはり自分でキーワードを選んで書いて紡いでいくという感覚は、ただ覚えるのとは訳が違います。デメトラ・ジョージさんらがもっと分厚い書き込み式の本を作っていて邦訳されてますが、鏡さんのは情報量が絞られている分、とにかく分かりやすい。

あと何といっても、DVDでWindowsもMacも対応しているソフトがついているのは嬉しいですよね。それから、『占星綺想』はエッセイですが、古典占星術の入門書としても読めると思いますし、結構読み返してます。



80年代以前は、日本の占星術はひとつのパターンがあったんですよね。それはルル・ラブアさんや石川源晃さんの著作の影響が大きいんだけど、まずはチャートの作り方、読み方、惑星、ハウス、星座、アスペクトの説明で、性格描写や相性を見る…みたいなパターン化されたものがあって、占星術をやる人たちはたいてい、それが「占星術」だと思っていたところがあります。

それが80年代以降、心理占星術が登場し、ホラリー占星術や古典派といわれる人の著作も注目を集めて、占星術の世界が広がったという経緯があると思います。



あと占星術の翻訳本で最近目立っているのはスピリチュアル系のジャン・スピラーさんですかね。「新月の願い」。2000年以降のシーンを振り返ると、占星術にもスピリチュアルな要素が入ってきていますね。

これからの占星術の流れはずばりどうなると思われますか?



僕は、占いは占いとして、「学」じゃなく「リベラルアーツ」としてやろうという潮流が出てきそうだなって思います。というかそう願っている。

現代は、人文系の学問が軽視されがち。占いも、スクールで学んでお免状もらう、というような「実学」にすぐになりがちです。でもそういう流れは今後、もっと加速しそうな気がするな。

でも、僕がイギリスの占星術が好きだったのは、おじいちゃんおばあちゃんの趣味の世界みたいな部分があるところなんですよ。商売っ気がなくて、みんなこの占星術の世界が好きだからやってる、というところに惹かれたのは大きいかな。

『占星綺想』が出たときは、自分としても書きたいテーマだったこともあるから、かなり嬉しかったんだけど、同業者の一人からこの本を出した意味がわからないといわれてショックでした(苦笑) 「これで占えることが増えるの?」と聞かれたから、いやいやそうじゃなくて、その背景にあるものも含めて、こんなのもあるよ、ということで…なんて言ったら「そんな本、なんでわざわざ書いたの?」とかいわれたりして。ネタ探し的な実用部分も盛り込んであるのにね…。実用的な占いのメソッドだけ学ぶのではなく、その歴史を紐解いて学んでこそ面白いのに、と思う。



それは結構、衝撃的なエピソードですね…。でも、意外ではまったくない。国立大学から人文系の学部をなくそうという発想が出てくる現在の流れも、そうした下地の延長線上にあるに過ぎないと思います。

鏡さんがよく引き合いに出すチャールズ・ハーヴェイさんの言葉だったと思いますが、占星術を学ぶ人は、とにかく映画を見なさいとおっしゃっていましたね。手っ取り早い技法の本ではなく。小説でも、詩でも、漫画でもいい。それは言い換えれば、占いが目指しているのは、暗記の再現や作業効率の追求ではなく、言葉を超えたイメージを柔らかく受け止めつつ、ちょっとした内面の変化や現実への違和感に目を開かせ、選択肢を増やしていくことだ、ということなんだと思います。人間しんどくなると、どうしても選択肢が狭くなってしまいがちですからね。



やっぱり占星術という目に見えない世界を、目に見える世界の論理にもってきてしまうのはもったいないな、と思います。世界が狭まるのだから。

リベラルアーツというのは「教養」という意味ですが、もともとは自由人のための学問という意味でもあり、まあ、余裕ある人のためのものということでもあったんですが、同時に人を自由にするための学問ということでもあります。

実学というのは、現状の、あるいは近い将来の社会にすぐに適応するための学や技術ということでしょう?

でも、「今」にすぐ適応ということだけを考えていたのでは、逆をいえば社会そのものの枠組みや潮流が変わった時に適応できる力が育ちにくいよね。社会の変化が少なくとも一世代ごとであればそれでもいいんだろうけど、今はそうじゃない。



現在の社会状況はむしろ、色々なフェーズでこれまでのフレームが通用しなくなってきて、これからどうしたらいいんだろう、とみな考えあぐねてる感じですよね。個人鑑定なんてしていると、ほとんどの相談の根にそういう時代の空気のようなものが絡んでいるように感じます。



そもそも占星術というのは、普通の考えでいえば17世紀以前のものだから、それがどのようにしてサバイブし、リバイバルし、変化しているかを見ていくことだけでもすごく参考になるし…。なんて、こんな言い方をするとやはり「役に立つ」というエートスにのっちゃってますよね。

適応は大切で、生き残るためには目の前のことに向き合わなきゃいけないけれど、そことは違う世界や価値観もあるんだということを知っておくことはある種の余裕を生み出すんじゃないかと思う。

占星術や魔法というのは、そんなもう一つの世界だと思いますよ。

そんな世界を開く本をこれからも出していきたいし、シュガーくんもそんな本やコンテンツを出していってほしいな。



はい、僕もそうありたいと思います。

『星のワークブック』鏡リュウジ著
http://www.amazon.co.jp/dp/4062136112


『占星綺想』鏡リュウジ著
http://www.amazon.co.jp/dp/4791763467


(了)


ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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