鏡リュウジ公式サイト BETWEEN THE WORLDS

上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.32 生命が存在しているかも!? 火星について語ります 1
2015/11/19


今日は、「火星」をとりあげたいと思います。9月29日、NASAが火星表面に「水」が存在し、生命が存在する可能性もあると発表しました。


「探査機「マーズ・リコナサンス・オービター」の観測により、火星の表面で水和鉱物の一つである「過塩素酸塩」が検出された。この物質は水の存在を示す証拠であり、NASAは現在の火星の表面に液体の水が存在していると発表した」と天文ニュースサイトにはあります。


http://www.astroarts.co.jp/news/2015/09/29mars_water/index-j.shtml

アストロアーツさんのサイトの天文ニュースより

この液体の水、というのが驚きだよね。過酷な環境で生き延びる生命が存在することや、地球の生命とはまったく異なる環境に適応する生命が存在する可能性もあるけれど、液体の水が存在するとなると、僕たちにとって想像しやすくわかりやすい生命のハビタブルゾーンに火星が存在する、ということになるわけだからね。


僕がこのニュースを聞いて最初に思い出したのは、アメリカの天文学者パーシヴァル・ローウェル(1855-1916)の「火星には運河がある!」。冥王星の存在を予見した人として名高いですが、ボストンの大金持ちの息子で、もともとは火星を観測するために私財を投じてローウェル天文台を作ったんですよね。

当時はスエズ運河などの巨大運河建設が盛んで、運河は科学技術のシンボルでもあった時代ですから。ローウェルはもし火星全体を縦横に走る運河網があるなら、そこには高度に発達した文明を持つ火星人がいるはずだ、という説を熱心に信奉し、啓蒙していました。彼はそこに地球の未来を見ていたんですよ。

とはいえ学者の間では運河なんてあるわけないと言われて、ある種ちょっとキワモノ的扱いを受けていた人なので、今回のNASAの発表を聞いて、ローウェルに思いを馳せてしまいました。



ローウェルは、火星の表面の模様を見てそう主張していたんだよね。縞があるように見えて、運河が走っているように見える、と。実はそれには前史があったようで、イタリアの天文学者スキャパレリが、火星に観測できた縞模様をイタリア語で水路を表すカネリと読んでいた。

これが英語でcanal、つまり人工の運河も意味する言葉に訳されたというのもあったらしい。ローウェルはそこから火星人がいると想像した。後にその話しに影響をうけたSF作家のハーバード・ジョージ・ウェルズが『宇宙戦争』を著したというわけ。

この小説はアメリカでラジオドラマ化されたんだけど、本当のことだと思ってパニックが起こったというエピソードも伝えられているけれど、それが本当に起こったか、起こったとしてもどの程度のものだったかは実ははっきりしないようですね。



都市伝説化しただけなんだー! でも『宇宙戦争』のラジオドラマが放送された1938年って、アメリカでラジオの公共放送が始まった年でもあるんですね。新興メディアが受けとり手側にもたらしたリアリティーのなまなましさを想像すると、都市伝説化したのもうなづけるかも。「火星人=侵略者=ラジオ」とイメージをつなげると、新聞なんかいかにも悪意を持って書き立てそうだし。



という連想もあるだろうし、新聞からすると、「ラジオは誤解されやすい情報を流し人心を惑わす!」というネガプロパガンダに使いたかったというのもあるかもねえ。

ではこのニュースが日本に入ってきた、9月30日の午前2時のホロスコープ見てみようか。






火星は乙女座。オーブやや広めだけど、海王星とオポジションで、ずばり隠れた水をめぐる主張。ちなみに、火星と海王星のアスペクトは、ローウェルの出生チャートでも太陽をはさんで合なんですよ。彼の場合は魚座で、火星・海王星のミッドポイントに太陽ですね。しかも12ハウス。

海王星が本来のサインにあり、これは非常に強力なビジョンやファンタジー、高い理想を表し、そこに太陽・火星という英雄的で実践に落とし込もうとする働きが混ざりこんでいく。火星・海王星のアスペクトを「おとぎ話の王子さま」なんて表現することがありますが、海王星の外側にある未知の惑星を予見した訳ですから、まさにそれを地で行った感じですね。

また、ローウェルは能登半島を訪れた際の体験をもとにした『NOTO』や『極東の魂』などの著作がある知日家でもありますが、来日のきっかけが、ある日地図を見ていたときにインスピレーションを受けたから、というエピソードなんかも火星・海王星らしいですよね。





9月30日のチャートに戻ると、逆行明けで射手座の頭にある土星もスクエア。形成されつつある土星と海王星のスクエアに火星が組み込まれた感じです。土星と海王星は、これまで海の底に沈んでいて、陸地から見ればあるかないかも分からなかった幻想や深みのあるイメージが現実の世界にサルベージされ、白日の下に晒されると考えることもできます。



幻滅という考え方もできるけど。



確かにこの組み合わせ、普通は悲劇的な解釈をすることが多いですね。幻滅の他にも、避けられない混乱、不安や恐れ。ただこれは明瞭な現実を象徴する土星が海王星に飲み込まれていく際のイメージですから。

逆に、不明瞭ではっきり確認するよしもなかった海王星が、土星を通じて輪郭をあらわにし、リアルに感じとれるようになっていく方へ解釈することもできますね。これはまた、現実を左右する大きな力として、2012年頃から続いてきた天王星・冥王星とは異質な、新たな展開とも言えるでしょう。



火星と海王星のコンビネーションということで面白いのは、あのタコみたいな火星人のイメージを打ち出し、ローウェルの火星運河説を一般に広めたH.G.ウェルズの出生ホロスコープにもこの配置があることなんですよね。火星は蟹座にいて海王星とぴたりスクエア。天王星と合で「家を求めて故郷を飛び出した火星人」というイメージとぴったりだもんね。





『宇宙戦争』だけではなく『タイムマシン』をはじめSFの父としてみると、アセンダントが技術の水瓶座でその支配星・天王星が創造性の5ハウス、火星と合となって冒険活劇を示すのが面白い。知性や文筆の水星は自分の支配する乙女座で強力、職業を示すMC射手座の支配星(出版、旅)である木星や冥王星と正三角形。なるほどーと思うよねえ。

ベタなシンボルというところでは火星を火星人としてみると、テクノロジーを持っているけれど(天王星と合)水棲生物的な(海王星)タコというイメージを定着させたということもあるかな。



それ面白いですね。「未開」と「先進」が同居している。ビジュアルとしては映画「マーズ・アタック!」のイメージですね。脳が巨大化して膨れ上がったような。



それもウェルズの小説からきてるようだね。すんごくいやらしい生き物として描写されるんだけれど、顎がなくて目が異様に大きくて黒い…火星人を目撃した主人公の描写をきいた軍人がこんなふうにたとえています。

「タコだな」とその男はいった。「おれに言わせるとタコだ。」
(創元SF文庫 井上勇訳)

このあたりからタコ型宇宙人としての火星人のイメージが固まったんでしょう。
火星は地球より重力が小さいから筋肉が発達しないはずだという考えもあるようで。



火星人はタコだけど、金星人は美人のイメージですね。アダムスキーのとか。だから子どもの頃はどうせ宇宙人に連れ去られるなら金星人がいいと思ってました(笑)

ところで、アメリカの大衆小説誌などをもとにして作られた架空の神話体系で、クトゥルフ神話というものがあります。そこでも中心的な宇宙生物であり、太古の地球の支配者として出てくるのはタコに似た頭部をもつ巨大な軟体動物です。タコのイメージって何か特別なものがあるんですかね?



西洋人から見ると気持ち悪い生き物の代表的存在なのかもね。悪魔の魚とかいわれちゃうし。スペインとか南イタリアの地中海エリアでは食べてるけど。

もっとも、ウェルズの『宇宙戦争』を改めて開いてびっくりしたんだけれど、最初に主人公が火星人を見たときの描写はこんなかんじ。

「しかし、ながめていると、やがて影のなかで、なにかうごめいているのが見えた。重なり合った、灰色の波のような動き、それから、光を出す二つの円盤…目のような。そのうち、散歩用のステッキくらいの大きさの、小さなステッキくらいの大きさの、小さな灰色の蛇のようなものがいくつもの触手が突き出されていて、それにつられてしろもののまんなかからとぐろを巻きながら出てきて、空中をわたしのほうへのたくってきた…そしてまたひとつ」

「大きな、灰色を帯びた、まんまるっこい、おそらく熊くらいの大きさのしろものが、ゆっくりと苦労しながら円筒(宇宙船?)から出てきていた。それがふくれあがって日に当たると、濡れたなめし皮のようにてらてらと光っていた。 

ふたつの大きな黒っぽい目が、わたしをじっとながめていた。その目を囲んでいる、そのものの頭にあたる塊りは、まんまるくて、いわば顔になっていた。目の下に口があり、その唇のないふちはわなないて、あえぎ、よだれをたらしていた。そやつのからだを全体が起伏して、けいれんするように脈うっていた。……とがった上唇をした奇妙なV字型の口、眉の隆起がなく、くさびのような下唇の下に顎がなく、その口が絶え間なく震えていて、ゴルゴンの蛇の髪のように群生する触手、なれない大気の肺の息づかい、一層大きな地球の重力のせいで明らかに重苦しそうな骨の折れる動作…なによりもまず、そのでかい目の異常に強い輝き…そういったすべてのものが、ひと目見ただけで、いかにも活力があり、強烈で、…そのぬめぬめした褐色の皮膚には、なにがなし菌類に似た感じがあり、ぶきようで気ながの、のんべんだらりとした動作は、いいようもなくいやらしかった」(前掲書)

ちょっと長く引用しちゃったけど、これって、クトゥルフ神話群に登場するようなクリーチャーだって言われても通るんじゃない? 先駆けだよね。



おお、ほんとだ。完全に神話的怪物じゃないですか。まあことほど左様に、火星人のイメージは不吉なものとして描かれ、定着してきたんですね。占星術でも、火星は古来より凶星とされてきました。

(つづく)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

鏡リュウジ占星術

鏡リュウジ占星術TOP
鏡リュウジ占星術公式スマートフォンサイト
鏡リュウジiPhoneアプリ
鏡リュウジ占星術携帯サイト


鏡リュウジ夜間飛行