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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.33 タロット好きは必見!「ニキ・ド・サンファル」展 2
2015/12/7


では、ホロスコープ見てみましょうか。チャートはAstroDatabankからお借りしました。





ニキは自分のホロスコープをよく知っていたみたいですね。タロットだけではなく当然、占星術にも詳しかった。

ニキの作品の大コレクターで親友でもあったヨーコこと増田静江さんはこんなふうに述懐しているそうです。

「ニキ自身は自分のことを『ダブル・スコルピオ』という言葉で表現している。占星術ではさそり座は、かなり執念深いと言われるが、これは長所に転化すると持続力があるということだ。非常に明快な目的意識を持って、必ず達成せずんば止まずという持続力。それがダブルになって現れるのだから、その激しさは言うまでもない」
(黒岩有希『ニキとヨーコ』NHK出版)

ダブルスコルピオというのは、もちろん、アセンダントと太陽がともに蠍座であることを示しているよね。この言葉からニキが占星術に詳しかったことがわかる。



太陽もASCも同じ蠍座5度なんですが、これはホリエモンさんの太陽と同じで、サビアンシンボルだと「ゴールドラッシュ」ですね。人生においてその都度、後戻りできない一歩を踏み出していくという度数です。もうここには汲むべきものがないと感じると、次の鉱脈、地中深くに眠った豊かさを見つけに作風も生き方も同時に変えていった彼女そのものですね。



そして火星、月、太陽のTスクエアの配置だね。まさに射撃の作品だ。

重要な天体である太陽と月が火星という戦いの星と組んでいて、強烈に人生を戦い抜いていこうという意思を象徴している。



創造的で過激な獅子座の火星と、自立的な女性像であり、冷静に執着を手放していこうとする水瓶座の月と、不動宮のTスクエアは強烈というか激烈ですよね。まさに不動の巨岩をも動かさんとする闘士。で、その頂点で、鍵を握るのが蠍座の太陽。

それを踏まえると、「創作がわたしの壮大なる自叙伝であり、世界とのつながりである」という言葉がすごく象徴的に響いてくる。

蠍座は単独での表現というより、必ず何かしらの対象と深く結びついていくことで意味を孕むから。射撃の作品のところで、「私は絵画を殺した」とか「一瞬の一突きで」と発言したと音声ガイドで言ってましたが、蠍の一突きよ!ともとれる発言で蠍座を意識しているんじゃないかとさえ思いましたよ。でもその過激な言動の裏には、人一倍傷ついた女性性があるのでしょうね。



本当に強い女性だったんだと思うし、それは多くの女性たちをエンパワーしたことだと思うよね。蠍座は性の象徴でもあるし、またドラゴンでもある。ゴジラをモチーフにした、反戦、反核のテーマもここにありそう。セクシュアリテイ、ジェンダー、出産、そして生命、そしてそのサイクルを脅かす破壊的な力。そうしたものはすべて占星術では蠍座のシンボルだと思わない? ダブルスコーピオの面目躍如だね。

そして、タロットと深くかかわって、前人未到のタロットガーデン制作、運営に挑戦したというのもその不動宮の持続力を示すものだよね。

ただ、僕も不勉強だから知らないだけかもしれないけれど、図録や「タロットガーデン」を見ても、ニキがどんなタロットを持っていて、どんなタロット本を読んでいたのか、本当はもっと知りたいな。

彼女に実際に影響を与え得たタロッティストがいるんじゃないかと思うけどな。アメリカ人のイーデン・グレイとか会ってるような気がする。イーデン・グレイは70年代タロットブームを作ったような人。少なくとも本は読んでいたはずだし、当時、再評価が進んでいたウエイト=スミス版やクロウリーのタロットも、絵を描いたのは、二つとも女性だった。こうしたこともニキに影響したんだろうか。グレイとニキがもしどこかで交流していたら面白いんだけど…。



ニキは32歳で射撃絵画をやめた後、「花嫁」「娼婦」「妊娠」「出産」など女性性を直視し、見つめ直す、やや苦痛に満ちた作品を作っていますが、そこからニキがナナシリーズを作っていく転機となった作品であり、個人的にも見ていてとても興味深かったのが世界一巨大な娼婦「ホーン」ですよね。彼女という意味らしいですが、10万人ものがその膣を通り抜けていった。そして同じ時期にタロットに親しんでます。



うん、女帝の中に入って体内巡りをさせるというのは面白かったな。あとウィメンズ・スピリチュアリティにおけるタロットは他にもいくつか出ていて、男性が悪く表現されがちなんだけど。ニキのタロットガーデンも皇帝とか教皇はもっと悪く描かれるかと思ったけれどそうでもなかった。



「タロットは私にとって道であり、人間はその道をいく旅人なのです」「困難をひとつひとつ克服しながらハードルを乗り越えられれば最後はパラダイスに到達できると考えられたのは、一番の手助けになった」といったニキの言葉から感じられるのは、タロットガーデン作りは彼女にとって楽園への回帰のための行のようなものだったということですね。

従ってその創造のプロセスもまた、父性的な批判や征服、排除や切り捨てではなく、包含や統一、養育や世話などのソフィア的な叡智に支えられるものでなければという意識があったのかも知れません。そう感じたのは、彼女のタロットガーデン作りに集まったイタリア人の職人が結果的に男性ばかりとなり、彼らを「養子」として扱い、母として世話しようとしたというエピソードを読んだからです。職人たちの会合本部は「女帝」の中にあって、そのだだっ広い内部空間には、ニキのベッド用のくぼみが一つあるだけだったそうです。



「タロットは私にとって道であり、人間はその道をいく旅人なのです」という言葉は、タロットの絵札が人間の魂の成長過程を示すという、いわゆる「愚者の旅」という、70年代以降にポピュラーになり、現代のタロット観を大きく染めている考え方そのまま。ニキが70年代タロットカルチャーの影響をいかに深く受けていたかがよくわかります。そして「グレートマザー」に相当するとされた「女帝」にそこまで強い思い入れを示したのも、広い意味での女神カルチャーを後押ししたんだと思う。

ただ立体の作品はもちろん素晴らしいけれど、展示の中にタロット22枚を1枚の絵の中にしていたのがあった。カードとしてもちゃんと商品化してほしいよね。

うーーん、とはいえやっぱり一度は「タロットガーデン」行ってみたいな。

それから、お母さん的なものと男性的な攻撃的なものがつねにミックスしているね、この人は。まさにテロリストとアーティストが同居している。



そうですね、ホロスコープでもそうした矛盾する要素の結びつきは見られますね。太陽を軸に見た時、先程の月と火星とのTスクエアだけだと女性性がかなり傷ついてしまってキツいですけど、もう一つ太陽は海王星と土星の組み合わせともアスペクトしています。

10ハウス乙女座の海王星が2ハウス終わり山羊座の土星とトラインで、蠍座太陽を頂点に小三角(二等辺三角形)を作っています。楽園願望は占星術では海王星ですが、単なる意識上の回帰で済ますのでなく、この世に形として残るよう、建設しようとするのは土星ですから。

女帝では、ニキはよくコーヒーを振る舞って皆と休憩したそうですが、これも土星に伴われる支配欲や操作性、厳しさや退屈さなどの暗い側面を、海王星で和らげ、魅力をふりまき魔法をかけたのだとも言えますね。

そしてアセンダントの支配星(チャートルーラー)の冥王星は9室にあって木星とコンジャンクション。ここにスイッチが入っていくと、宗教性が開花して、多くの人を巻き込んでいこうとする動きが伴われてくるんですけど、これが母性の蟹座にあるんです。母なる宗教と、その背後に見え隠れする愛憎の激しさ。いずれにせよ、彼女の影響力の大きさにも非常にうなづける配置と言えるでしょうね。



水星が29度でノーアスペクト。だから言語表現はしないか、或いはメッセージ性がすごく強い。



個人として、あるいは友人としてのニキという点では射手座の金星も顕著な感じがします。最前線を疾走し続け、限界を超えて可能性を広げていこうとする。金星は火星と天王星と火のグランドトラインで、よく整備されたエンジンを積んでる感じで、本当にどこまでも走り続けられる。また海王星とはスクエアで、無謀や過激さ一本槍ではない、自らの芸術や交際関係における緊張感が伺える。そういえば、射撃絵画を辞めたのも、「溺れてしまうのが怖いから」という理由でしたからね。



単に海王星が強かったりすると、そのなかに「耽溺」しっぱなしになってしまうかもね。意識性の強さというのもニキのすごいところだと思う。すごい人だ。


そこはやはり月と火星と太陽のTスクエアも関係してくるでしょうね。ここはサビアン的にも面白くて、火星の獅子座4度は「正装した男とヘラジカの角」というサビアンで、自らの力強さを証明するためのイニシエーション通過を意味する度数で、一方、月のある水瓶座4度は「インドのヒーラー」という自分の自己治癒力に目覚め、その力を自分だけでなく多くの人でシェアしていく、というシンボル。



それは、まんまだね!



こういう人は、やっぱり作品を作っていなかったら、とことん病んでしまったでしょうね。あるいは、人にやってもらうのでなく自分で自分を癒す道を見つけるのでなければ。その意味で、彼女はすごく難しい綱渡りを生きた人です。


今ちょうど、土星と海王星がスクエアですよね(来年の暮れ、そして来年の夏から秋にかけて)。ニキは、いわば太陽を通して土星と海王星を有機的な結びつきを生きようとした人とも言えます。だから、いまニキを観て、ニキの生き様を追体験していくということは、心の底にある想いを下手に諦めたり、切り捨てたり、幻滅して終わるのでなく、曖昧な願望やビジョンをきちんと現実化させていくためのヒントとなるんじゃないかと思いました。

タロットガーデンの「節制」のところから引用しておきます。
「この札を理解するのは大変だった。私の情熱的な性格とは、かけ離れていたから。私にとって<節制>は妥協のように思われた。どっちつかずの道。でもある日、光が差してきた。節制こそが正しい道。節制の礼拝堂の頂きに、天使を造った。礼拝堂には、宇宙を映し出すたくさんの鏡や、陶器でできた花やアート、そして黒いマドンナがいる。それは魔法の空間。」



「自分は社会を変えることはできないけど、ビジョンは示せる」とインタビューで答えていたけど、あれは、まさに土星と海王星の発言だね。この国際情勢の今、みなさんにもおすすめの展覧会です。女性にはとくに見ていただきたい。



ニキ・ド・サンファル展 12月14日迄 国立新美術館
http://www.niki2015.jp



(了)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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