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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.34 歌占を引いてきました 2
2016/1/27



室町時代末期に歌占がレディーメイド化していった際、和歌を選ぶ際に「呪歌」を唱えてから引くようになったというのも面白いですね。今日も、天祖神社で「歌占」を引くときに、引く前に呪文の歌を唱えさせられました。

「ちはやぶる神の子どもの集まりてつくりし占ぞまさしかりける」

要するに占いが的中するように願をかけている訳ですが、その対象はあくまで神さまであり、「神の子どもの集まりて」とは歌占の源流に神と繋がる巫者の存在が示唆されている。この呪歌を唱える形式は、現在では廃れてしまってますが、あったら面白いですよね。あるいは、現代人はなんとなくそういうものを必要としてる気がします。



もともと、シャーマン的な巫女が神と交信する前に、歌ったり舞いをしたりという儀式があったのかもしれないね。変性意識に入る前にそういうものが必要で。

今、僕たちがおみくじを引くという行為も神様からの御神託をいただくと考えると、呪歌を唱えてから引くのは至極もっともな行為。



あと面白いのは「歌占」が書籍化されると、即興ではなくあらかじめ決められた歌の中から1首を選んで占う形式に変わっていく訳ですが、64首から1首選ぶんですね。易の卦と同じ数。江戸時代中期以降に刊行された本では、易の64卦の意味を理解するために和歌が添えられるようにさえなっている。無闇矢鱈なランダムではなく、流行に合わせてレディーメイドな形式も洗練されている様がうかがえました。

同じような意味で、明治・大正期からもちいられていた大阪天満宮のおみくじで、太占(フトマニ)を図案化したものがありましたがこれも面白い。フトマニとは動物の肩甲骨を火で焼いた際にできるひび割れで占うもので、記紀にも登場する、神々のあいだでも行われていた最古の占いです。こっちは同時代の流行ではなく、神話に合わせた洗練ですね。

時代的にもナショナリズムが盛り上がっていたことが表れていますね。1859年の幕末期に『神代正語籤』、1870年(明治3年)『神占五十占』が作られて、今のおみくじの基礎が出来上がったとのことですが、占星術的に興味深いのは最初の『神代正語籤』が出ているのは、海王星が魚座にあったころ(1848〜1861年)で、ちょうど2012年以降(2025年まで)に海王星が魚座に戻ってきている今と同じ配置なんですよね。

海王星は深い無意識とつながりを象徴する惑星であり、魚座にあるとその本来の本質がもっとも強まるので、時代的な空気感としてもそうした目に見えない世界との繋がりには追い風になるのでは、とも読めそうです。そういう意味でおみくじやその本質としての歌占というのは、目に見えない世界との繋がりの中で、僕たちの心の置き所を見出していくための素材としても要注目だなあと。



そうなんだよね。だから面白いなと思うのは、神々からのダイレクトメールである歌や太占(フトマニ)という自発的霊感の源と、易や詩を体系化していこうという形式化の動きがそのときどきに応じてミックスされておみくじという託宣形式が発展していくということ。

それから、占星術の実践者であるシュガーくんならもう気がついていると思うけど、改めてこの「籤」(くじ)というアイテムと運命の感覚の深い結びつきに感銘を受けているよ。

プラトンが『国家』で語るエルの神話においても、人は生まれる前に運命の女神のお膝元で、自らの運命の籤を引き当て、それをもって地上に誕生するというでしょう?

籤は英語ではLOT(ロト)、これは伝統的な占星術の用語そのもの。有名なところでは「パートオブフォーチュン」というのが知られています。太陽、月、アセンダントの位置から算出する幸運の座ですが、この「パート」は「ロット」とも呼ばれて、この幸運の座のほかにも結婚のロットとか死のロットとか、天体の組み合わせで極めてたくさんの種類が用いられるようになりました。

ロットというのは、偶然性のなかになにかの運命の必然を感じる人間の心性に直結しているのかもしれない。

太陽系を移ろう宿命的な天体のそれぞれの位置が偶然におりなす計算上のポイントを「籤」にみたてて、そこに運命を見出そうというのは本当に面白いよね。
占星術はこうみていくと、天体運行という壮大な回転運動を一種のルーレットとして運命の籤を引くという行為にも見えてきます。

今回、この天祖神社で歌占みくじを引くと、神様の名前と和歌が書いてあるんだけど、その神様と縁のある神社内のお末社にお参りするという試みもいいね。密教のイニシエーションを思い出しました。曼荼羅に花を投げて落ちたところが自分の守護神という……。



天祖神社で引いた歌占


デザインが双方向的ですよね。意味のある偶然を通じて縁をいただいた神様と仲良くなったり、そこで自分を変えていく契機が一定の幅をもって個人に与えられているというか。柏手うったり、参道あるいたり、なんとなく風を感じたりするのって気持ちいいですしね。

今回の歌占に登場する神様は、天祖神社の御祭神と江戸時代の「天岩戸開」の絵馬に描かれた16柱の神様がモチーフ化されていますけど、本来その対象は星の数ほど多様であっていいし、もちろん火星であったり木星であってもいい訳です。

そして神さまとのコミュニケーションとしての歌占も、もともとはシャーマンの御神託であった和歌が時代時代で、弓にぶら下げて引くスタイルに変わったり、『魔法の杖』みたいな自分ひとりでやれるビブリオマンシーになったり、今なんとなく年に一回神社や寺院でお正月に引くようなスタイルになったりしていますけど、僕たちが現代でやっている占いコンテンツという形でも生き残っているといえますね。


タロットの一枚引きや、オラクルラードも人気だしね。


やっぱり多くの人にとって、シンプルでわかりやすいものが生き残っていくということですかね。でも、ダーウィンがいう「適者生存」による淘汰がおみくじや占いコンテンツにも働いていった結果、そこで生き残っていくものが現在の基準では「ばかばかしい」ものに映ったり、「なんだかよく分からないもの」である可能性は決してゼロではないんじゃないかなぁとも思います。そういう意味でも、今では廃れて隠れてしまった伝統や一見あやしいものの中に、これからも現在の隘路を突破する着想を探し求めていきたいですね。



ということで、皆さん、今年もこちらのサイトもよろしくお願いします!

(了)

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シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン

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