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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.36 よろず占い処 陰陽屋へようこそ 1
2016/4/26

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 『よろず占い処 陰陽屋へようこそ 1』
  天野頌子×鏡リュウジ
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今回は特別ゲストに作家の天野頌子先生にいらして頂きました。『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』が2013年に錦戸亮さん主演でドラマ化もされているのでご存知の方も多いと思います。

先生、今日はわざわざお時間作って頂いてありがとうございます。僕はあまり小説は読まないほうなので、恥ずかしながら天野先生の作品はドラマで知りました。
たまたまテレビをつけたら、ドラマがやっていたわけですが、とても面白く拝見しました。仕事柄、陰陽師が主人公なら見なくっちゃ、と思ったんですが、これがハマってしまって…。


天野
ありがとうございます。そう言って頂けるとドラマのスタッフさん達も喜ばれると思います。



「陰陽屋へようこそ」というぐらいですから、陰陽師が主人公の物語ですね。ご存知のない方に補足しますと、東京にありながらも人情味が残っているような商店街にできた占い屋さんを舞台にしたドラマ。近くには王子稲荷神社という古いお稲荷さんもあるという設定です。

陰陽師を題材にしたものは、もちろん小説をはじめ、ドラマや映画、漫画にもたくさんなっていますが、天野先生が描く「陰陽師」は従来のイメージのものとは違っていて斬新、素晴らしい!と思いました。陰陽師にはスーパーパワーというか、霊力があるという前提で描かれていたパターンを、天野先生は、見事に覆しましたね。

詳しくはネタバレになってしまうので言いませんが、、、この陰陽師はホスト上がりのチャラいイケメン。頭脳は明晰だけれど、それが本当に超自然的な力からきているのかどうか、なかなか判然としない。

物語には、もうひとり瞬太君というキツネが登場します。彼は霊力があるという設定ですが、とくにそれが有効に機能しているとは思えないんです。中途半端な子どもキツネ。でもその天然キャラというか意図せずの行動が、相談事の解決にうまくつながっていくというシンクロニシティーが展開していきます。

陰陽師安倍祥明とキツネの瞬太の二人がいるからこそなのか、地元のまわりの人の善意にも助けられながら「場」が作られていきます。この流れが素晴らしかった! それでハマって毎週楽しみにドラマを拝見していたというわけです。

今日ぜひ伺いたかったのは、ああいうキャラクター設定はどのように思いつかれたのかということです。それを踏まえて占いというのもをどういうふうにお考えで、どういうふうに占いとつきあっていったらいいかが、今日の質問ぜんぶです。

ということで、まず、小説はいつ頃から書かれていらしたのですか?


天野
小説そのものは、子どもの頃から書いていましたけど、小説家として仕事をしているのはここ10年ですね。「陰陽屋へようこそ」はデビュー後1年ぐらいから書いていますから、もうずいぶん長く続いているシリーズものです。



陰陽師という設定は、そのころブームになっていたという影響もありますか?


天野
陰陽師ブームがなかったら思いつかなかった設定かもしれません。もっとも、女性はみんな、占いが好きですよね! わたし自身は特に詳しいわけではなく、本を2,3冊読んだことがある程度で、対面鑑定もしてもらったことはありませんが。



そうなんですね! 僕は占いに関することにとても詳しい方が、とてもよくわかっておられる上で、あのような設定をされたんだと思いました。占いはお嫌いではないにしても、ごく普通の占いファンというくらいの方だったなんて……

舞台を東京の王子にしたのは何かわけがあるのですか?


天野
架空の町でも良かったんですけど、編集長がプロットを読まれてから、「ご当地ものが流行っているからはっきりした実在の街を舞台にしたほうがいい」とおっしゃって、では王子で、と。王子稲荷神社という昔から有名なお稲荷さんがあるから、化けギツネの少年が暮らしている町として丁度いいし、何より、うちから近くて取材も便利だったので。



そうなんですか!? あれ、でも安倍晴明の母親が信田のキツネだったという・・・


天野
じつは晴明とキツネの関係は陰陽師のことを調べ始めてから知りました。先にお母さんの葛の葉狐のことを知っていたら、京都の話にしていたかもしれませんね。設定としては、占い屋さんが商店街にあるのは珍しいかと思ったんですが、占い屋さんって普通の町中にもあるみたいですね? 



うわ、これもびっくり。陰陽師とキツネの組み合わせといえば、晴明誕生の異類婚姻譚を連想している人多いと思いますよ。

そうそう、町の占い屋さんは結構あると思います。ただ、都市部ではもう少し観光的な占いブースが多いような印象がありますね。なんだろう、昔ながらの地域密着型の「あんまさん」とか「美容室」と、チェーン型のネイルサロンとかクイックマッサージくらいの営業形態の違いかな。

ともあれ、占いをテーマに小説をお書きになる段になってからは、研究されたんですか?


天野
図書館にいって陰陽師と名のつく本を調べてみましたが、一杯あるんですねえ。とりあえず全部閲覧室にもっていて、面白そうな本、役立ちそうな本だけを借りて帰りました。

何冊か読み込んでいるうちに、陰陽師はお祓いばかりやっていたわけではなく、占いをやっていた人なんだなと気づきました。しかも、平安時代では天文学者だったんだな、と。このへんは占星術とかぶってますよね?



歴史的にはいってみれば公務員なんですよね。僕も詳しくはないんですが、派手に霊力を使って悪霊と戦うなんてことはほとんどなくて、随分地味なことをしていたと思います。月や星の動きを見てカレンダーを作成するとか。もっとも、占いとしてはいわゆる怪異があったらそれを解読する。流れ星がいっぱいあったとか、地鳴りがするとか、月食起こったとか、そういう時にどうしようとか……。現代では、陰陽師ブームの影響か、霊的なスーパースターとしての存在感が強くなりましたね。

主人公である安倍祥明とキツネの瞬太のキャラクター設定はどのようにされたんですか?


天野
最初の連載媒体が女性向けの雑誌だったので、イケメンのお兄さんとかわいい男の子はおさえておかなくちゃ、というのがまずありました(笑) だからイケメンの陰陽師にすることにしましたが、果たして占い師としては、本物か偽物かはわからないままで進んでいって、最後の最後に明かされるのがいいのかな、と。

あ……そうか、話していて気づきましたが、全然胡散臭くない本物の占い師という設定でも良かったんですねえ、まったく気づかなかった。すみませんーー。



いえいえ、普通にはそう考えるところなので、そこが面白いところですし、リアリティがあります。考えてみれば、現実世界の中で「本物の占い師」ってなんやねん、というところですから。


天野
陰陽師の格好をしているというだけで、じゅうぶん胡散臭いから、本物か偽物かわからない胡散臭いキャラで押してしまおう、とその時に思ったんでしょうね。

占いの勉強については、いくら陰陽師とはいえ、いつも六壬式占ばかりだとワンパターンになってしまうので、手相やタロットといった他の占術も本で読んだりはしました。

あと、大前提として、占いをビジネスというか、そういうものと結びつける人もいらっしゃるので、本を書くときには占いを肯定しすぎないよう気をつけています。読者がいろいろ信じすぎて、変な宗教に走って壺や判子を買わされても、わたしは責任とれないですからね。



そこらへんの配慮が素晴らしいですね。


天野
手相鑑定やりますと言って、じつはそれがカルト宗教の勧誘につながったりするというのは、一時期、問題になっていましたし、今もきっとあると思うんですよ。

だから基本スタンスとしては、占いは楽しんでほしいし、本も読んでほしいし、けれど、ほどほどにね、と。それはちゃんと伝えたいですね。

何か迷いがあったときに相談にいくのはいいと思うんです。客観的な意見が必要な場合もあるし。その問題に直接利害関係がない人は客観的にアドバイスしてくれると思いますからね。



そういうある種「健康的な」占いとの付き合い方がきちんと作品に反映されているのが魅力につながってますね。

僕はてっきり占いには相当詳しい方が書かれた物語だと思っていましたが、陰陽師ものをやると決まってから勉強されたとは驚きました。さすが小説家ですね!

主人公の安倍祥明さんが自分の守備範囲を決めているという点もすごくいいと思います。家出人を探すなら探偵に行けとか、そういう症状があるなら医者に行けとか、ちゃんとわかっていて、自分の守備範囲を超えるときは他の人をうまく巻き込んでやってます。


天野
そうですね。本の中でも「守備範囲外の相談は受けられません」と祥明は言ってますしね。当たるも八卦当たらぬも八卦というのも口癖のように出てきます。でもそこはきちんとわかっていてほしいところですからね。占いを信じすぎてしまって自分を見失いすぎてはいけないと思っています。



ご自身は対面鑑定のご経験はないとおっしゃってましたが、占いの体験談でいうとどんなものがありまうか?


天野
じつは鏡先生のネットで頼める個人鑑定のブックレットを申し込みました(笑)

「あなたは古いものを掘り起こして伝える役割がある」と書いてあって、その時はピンとこなかったんですが、1ヶ月後ぐらいに「あ!わたしは陰陽道の小説も、茶道や華道の小説も書いていた!」と気づきました。

伝えるなんてすごいことはしていませんが、掘り起こすぐらいはしているかもしれません。占いってやっぱり当たると楽しいですね!



それは素晴らしい! ありがとうございます。


天野
こちらの本(「鏡リュウジの占い大事典」)でルネーション占いも初めて知ったのですが、調べてみましたら、わたしは細い月、たしかバルサミックムーンの生まれです。



それは神秘的なものに興味があるタイプですね。

天野
そうなんです。それでよく見てみると、ちょうどフルムーンの時期にドラマ化があったんですよ。だからこれも当たってる!と(笑)



そういうふうに楽しんでもらえると僕としても嬉しいです。

■『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』
天野頌子著
http://www.amazon.co.jp/dp/4591122379


■『鏡リュウジの占い大事典』
鏡リュウジ著
http://ryuji.tv/mobile/online.php?online_id=10009


(第2回へ続く)

ー 他コンテンツ紹介 ー

天野頌子 プロフィール

天野頌子(あまの しょうこ)
長崎県佐世保市生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。
らいとすたっふ小説塾を経て、2005年『警視庁幽霊係』でデビュー。
他の作品に、『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』、『タマの猫又相談所 花の道は嵐の道』(ともにポプラ社)『僕と死神の黒い糸』(講談社)などがある。

『よろず占い処 陰陽屋へようこそ』
http://www.amazon.co.jp/dp/4591122379

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