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上なるモノは下なるモノのごとく、下なるモノは上なるモノのごとく。



「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.40 イギリス占星術協会大会レポート【2】
2016/12/13

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イギリス占星術協会大会レポート【2】
  シュガー×田中要一郎×鏡リュウジ
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参考:イギリス占星術協会
http://www.astrologicalassociation.com/


大会は3日間にわたって行われますが、初日の夕方17時がオフィシャルオープニングでしたね。オープニングの晩には、記念講演がありました。これは、イギリスの主要な占星術協会からノミネートされた人がやるので、とても名誉あることだそうです。



そうそう。これは毎年恒例でね、「カーター記念講演」といいます。英国占星術協会を実質的に作ったチャールズ・カーターの名前を冠したレクチャーで、大会のひとつのハイライトでもあるんですよ。この講演者にノミネートされるのは、英国の占星術業界ではとても名誉あること。



田中さんはどんな印象でしたか?


田中
とにかく、オープニングが始まるまで、続々と占星術家が集まってくるじゃないですか。その中には、マギー・ハイドさんや、ジェフリー・コーネリアスさん、グレアム・トービンさん、ベン・ダイクさんなど著名な方がいるわけですね。その時の高揚感といったらなかったですね。オープニングで、三角形の置物のロウソクに会長のロイ・ギレット氏が点火して開会宣言するというセレモニーがあったんですが、「ああ、始まるんだ」というゾクゾク感がありましたね。



僕もあの演出は驚きました。



ああ、あれも恒例です。神聖幾何学に基づいた立体なんだろうけれど、今では当たり前になりすぎたのか、誰もそのシンボリズムとか由来について聞かなくなっている……今度一回聞かないと……。僕も気にしていなかったわ……。



で、その翌日の夕方が鏡さんの講演。なんといってもレクチャー後の質疑応答タイムがとっても盛り上がりましたよね。

先ほど仰っていた、悪魔祓い師ガスナーと催眠術師メスマーの対決を、脱魔術化の決定的な瞬間としての「近代の始まり」に位置付け、そこで外的世界に居場所を失った霊魂を内面世界に再び見出そうとしたのがユングでした。そのユングの出生図、そして『赤の書』が書かれた際のチャート、公表された際のチャートが「近代の始まり」のチャートと見事に掛け合わさり、示し合わせたようにひとまとまりのストーリーラインがスーッと浮かび上がってくるような。

そこに参加者も自分の体験を重ねて、「これはシンクロニシティーだ」と巻き込まれていって、すごくマジカルな時間を共有した感じでした。

もちろんすべてが完璧な整合性を示している訳ではないですが、鏡さんのプレゼンの流れが鮮やかで、聴いている側も、「おっこれはすごい!」みたいに心を動かされていくのがよくわかりました。あれはやはり、まず鏡さん自身がマジカルな実感を持って語っていたのが大きかったのでは?

そういう意味では、脱魔術化された現代人が再魔術化した瞬間でもありましたね。今考えてみると、そのつもりであの時あの場所のチャートを作って、即座に重ねてみればよかった(笑)



僕もうれしかったのは、多くの指導的な占星術家たちが講演を気に入ってくださったこと。リン・ベルさんは今年の「チャールズ・ハーヴェイ賞」(長年、英国の占星術界をリードしたチャールズ・ハーヴェイ氏を記念した賞。これに選ばれるのはやはり英国の占星術世界では大きな名誉)の受賞者でもありますが、とても講演を気に入ってくださった。

また、キャロル・テイラーという、英国を代表する占星術学校の指導者でリズ・グリーンなんかとも仲のいい人がいらっしゃいます。彼女が終わったあとに「とてもムービングだった(感動的だった)」と言ってくださったのは嬉しかったな。

今回の大会のテーマは「過去と未来をつなぐ」でしたからね。僕のレクチャーが、近代の中で占星術がいかに困難な立場にあるのか、というのがテーマということだから、それがチャートを通して『赤の書』の神話のストーリーと繋げて明らかに表示されたのは感動的だった、と。


↑準備していたペーパーも読まずに英語講演をこなす鏡リュウジ

田中
鏡さんがホロスコープを次々と出して、展開していくときの聴衆の皆さんの食いつき方はすごかったですね。聴衆の皆さんは占星術のプロであったり、かなり占星術を勉強されている方ばかりなので、ホロスコープが出た途端、前のめりになってホロスコープを自分なりに分析し始めて。それから積極的に意見を言ってそれが議論にも発展していくし。熱気を感じました。

質問や意見のレベルも高い気がしましたね。また内容からも世界標準のレクチャーとはこういうことか、と思い知りました。非常に学術的で、占星術の観点から『赤の書』を取り上げた方というのは、日本はもちろん、世界的にもあまりないのではないかと思いました。



いやいや、リズ・グリーンがすでに『赤の書』については論文を書いていますからね。ただ、僕は別の視点でやりたいなと。とにかく自分にとって重要なテーマをやればいいなと思ったからユング『赤の書』でした。

というのも、イギリスでも近代化の中の占星術というテーマを、テクニックではなく、占星術的な思想として理解している人は少ないのではないかと思っていたのもあります。近代化の中に占星術といういわば一種の迷信的なものと切り捨てられかねないものを実践するということにジレンマを感じている人が、どれくらいいるのかということに、逆に、興味もありましたから。



問題提起として、近代はいつ始まったのかとか、近代化していく過程で我々はどういうものを失ったのか、そこに占星術がどう関係しているのか、そもそも占星術とは何か、現代人にとって占星術を実践するとはどういうことなのか、といった問いは、日本人にとってもますます重要性が高まってきているように思います。

そういう意味でも、鏡さんがまずイギリスでそういう問いかけを暗に含んだレクチャーをして、大きな反響を呼んだという事実は、とても画期的でしたよね。


田中
占星術といってもさまざまな流派があるんですよね。大きくいえば現代的な心理占星術と、17世紀までの伝統占星術。イギリスでは、心理占星術をやっている人は、もっとたくさんいるという印象がカンファレンスに参加するまであったのですが、そういうわけでもないんですね。今回の大会は、ホラリー、デカンビチュア、ロットといった専門的な伝統占星術の技法のレクチャーが多かったように思えます。特に、ホラリーチャートを読んで未来予想をするというのが多かったですね。そういえば三重円を使って説明している方はいらっしゃらなかったかもしれないですね。



確かに三重円は今回一度も見かけなかったかも……。



それはもう時代のトレンドですよね。80年代から90年代にはもっともっと心理学的な内容も多かった。それから古典、伝統が復興してきて。いまは随分、落ち着いている様子です。

それから「三重円」というのは、日本ではとくに多く使われているけれど……。とにかく英国では昔からホロスコープをやたら重ねて変数を多くして複雑にする、というようなスタイルはあまりみかけないです。シンプルに、かつ生き生きとシンボルを際立たせるという手腕にこそ、パチパチと人が拍手するというのは、現代占星術も伝統占星術にも共通しているところでしょうかね?

それから次世代のスターが頭角を現すようになっている。今回、田中さんが関心をもっておられたベン・ダイクさんなんてその代表でしょう。


田中
ベン・ダイクさんは13世紀のイタリアの占星術師グイド・ボナッティのラテン語の文献を1600ページ、2年間という短い期間で翻訳した俊才ですよね。現在、伝統占星術をリードする人物の一人だと思われます。

今回のカンファレンスではロットとアヴァージョンの二つをレクチャーされていました。ロットというのは、通称「アラビックパート」(アラビア起源ではないのですが)などと呼ばれるホロスコープの上の計算で出すポイント、「アヴァージョン」というのは、星と星が意味ある角度を取らない状態、という、伝統、古典占星術ならではのテクニックなんです。とくにアヴァージョンはベンさんが貴重な古典資料から発掘して現代的に応用されようとしている古くて新しい技法なんですが……。しかし、僕が一番驚いたのは、皆さん、こうした技法でもけっこうシンプルにやっているな、ということ。

日本では伝統占星術の細かいルールを厳密に教えて、厳密に実践する人が多いのに、今回のレクチャーを聞いていると、ルールがシンプルなんです。これはすごく新鮮でした。

例えば、ハウスシステムで言うと、カンファレンスに参加されていた伝統派の方は皆さんホールサインシステムしか使っていない。それから伝統派では惑星の強さを計るのに、点数計算などを細かく教えることが多いのですが、そういう細かな計算も実際にはあまり見かけない。いわば「モダントラディショナル」といったような感じでしょうか。



それはイギリスが成熟してきたからですよ。90年代なんかはみんな厳密にルールを守ってがっちがちにやってましたよ。


田中
なるほど、そうなんですね。


シンボル解釈の面白さを活かすにはそうするしかない、ということでしょう。細かいルールを字義的に守っても、シンボルは生かされない。



字義的にではなく象徴的に語る、ということの重要さについては、例えばリチャード・スウォットンさんなんかも今回ホラリーの授業の中で取り上げ、強調されていて印象的でした。メソッドからリチュアル(儀式)へと。最も大切なことはテクニックやルールを正確に守ることではなく、態度や感受のあり方なんだという訳です。


田中
日本もイギリスに倣ってシンプルにすべきだと、そこまでは言いませんが、イギリスの実情がそうなっているんだという認識は重要なことだと思いますね。特に研究者の方はそうだと思います。そういった実情を知っている知っていないで、取り組み方が変わってくるとは思いますので。

それにしてもあれだけの人数が集まって大会をやるのはすごいですね。しかも、二泊三日の泊りがけですよ。一時間に4種類の授業が同時進行で好きなものが受けることができるし。またレクチャーの内容も心理占星術から、伝統占星術、それにインド占星術。テクニカルなものから学術的なものまで多種多様で、このような大会は、日本では考えられませんね。日本でやったらあれだけの参加者が集まるかどうか。ちょっとうらやましく思います。



あれだけ多様なアプローチや焦点があるのに、それが一堂に会しているというのはそれ自体驚きですよね。伝統占星術に勢いがあったのは確かですが、心理占星術のレクチャーでも、内容もさることながら、雰囲気も素晴らしいなあと感じるレクチャーがあって、とても印象に残りました。

例えば、ジョン・ワッズウォースさんの職業占星術。技法としてはハウスをメインに取り上げ、シンプルなんですが、妙を得た解釈を作り出していく豊かさみたいなものをしみじみと感じることができました。鏡さんが横で仰っていましたが、これぞ大会のレクチャーの王道といった感じ。

他にもユキコ・ハーウッドさんの日本の過去の射手座土星期に出てきたシンボリズムや、アウソウラ・リオーニさんの抑圧と不安についての占星術的考察、後は僕は直接受けませんでしたが、犯罪者心理を扱ったレクチャーなんかもありましたね。

田中さんは特にどのレクチャーが印象に残りましたか?

田中
鏡さん以外ですと、グレアム・トービンさんでしょうか。「カルペパーの占星医学」についてですね。情報量が半端なかったです。全授業中一番スライドが多かったんじゃないでしょうか。カルぺパーを中心に、ガレン(ガレノス)、ヘルメス文書、フィチーノ、新プラトン主義、錬金術と、次から次に溢れんばかりの知識が提示されていきました。

あとはやはりベン・ダイクさんですね。博士号を取得されている方ですが、難しい単語を使わない非常に平易で分かりやすい英語でしたね。知識が頭できちんと整理されている方のレクチャーは分かりやすい。他にもたくさんレクチャーがありましたが、スピーカーの皆さんは講義の上手い方が多かったですね。

基本的にパワーポイントのスライドを使って説明されていますが、しゃべり方や伝え方、講義の組み立て方、一時間の短い間にテーマを絞ってどうまとめていくか。自分も教える側の人間でもあるので、すごく勉強になりました。

あと違った意味で驚いたのはマイケル・ルーティンさんのトーク! 僕も芸人ですが、占星術をテーマにほとんどマイク一本で話してあれだけ会場をどっかんどっかん笑わせる、あんな占星術家がいるなんて驚きましたよ。スタンダップコメディを見ているようでした。レクチャーでは人が入りすぎて、席が足らないような状態になってしまっていて、人気の高さが伺えました。

参考:イギリス占星術協会
http://www.astrologicalassociation.com/

(つづく)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン


田中要一郎(たなか よういちろう) プロフィール

1974年和歌山県生まれ。早稲田大学卒。占術研究家、翻訳家、芸人。西洋伝統占星術、子平、インド占星術、風水、易、タロットなど洋の東西を問わず占術を研究する。訳書に「子平推命基礎大全」梁湘潤 著「クリスチャン・アストロロジー第3書」ウィリアム・リリー 著(いずれも太玄社刊) がある。

http://uranaigeinin.com/

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