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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.40 イギリス占星術協会大会レポート【3】
2016/12/15

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イギリス占星術協会大会レポート【3】
  シュガー×田中要一郎×鏡リュウジ
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参考:イギリス占星術協会
http://www.astrologicalassociation.com/


マイケル・ルーティンさん、すごいですよね。ニューヨークの占星術家。日本ではほとんど知られていないかもしれませんが、英語圏の占星術世界ではすごい有名人です。UAC(アメリカの最大の占星術カンファレンス)の立ち上げにも尽力されていたと思いますよ。話術もさることながら占星術家としてのスキルも卓越しておられるようで、人気者の上に尊敬もされています。

みんな商売っ気がないのもなんだかいいですよね。講演者に「で、あなたの本は大会でも売っていますか?」と質問すると、「えーっと、今回扱ってもらっていたかなあ、僕もよくわからないから、書店の担当のジョンさんに聞いてみて」なんてかえってきちゃうくらいですからね。

こういう言い方をすると、英国びいきにすぎるかもしれませんが、アメリカの大会はフェアとか見本市に近いかな。最近は参加していないからわからないけれど、自分のコースや本の宣伝が多い印象があったなあ。


田中
本といえば、大会で解説されているブックストール(書店)も貴重ですよね。僕も下手をすると買い込みすぎてしまうから、気を引き締めてそのコーナーにはいかないと。結局誘惑に負けて大量に買い込んでしまいましたが(笑)。なかなか購入できないような本も多くあり、結果としては良かったですね。ただ、帰りの飛行機の重量制限に引っかかったらどうしようかと多少不安でしたが(笑)。



そうそう。ブックストールは占星術大会の隠れた名物のひとつ。ずっと昔からブックストールを運営しておられるジョン・エリントンさんは、ミッドヘブンブックショップという、いまはオンラインの占星術書店のオーナーさんですが、本当に親切な方でね。僕ももう30年くらい知り合いじゃないかしら。昔はカムデンに実際のお店があったんですよ。今回、古書が格安で出ていたりして。


田中
シュガーさんも随分買い込んでましたよね?(笑)



僕は今回はロンドン市内で購入した本がほとんどだったんですけど、ブックストールでパトリック・カリーさんの『A Confusion of Prophets』っていう19世紀前半にイギリスで占星術が復活してきた頃の精神的・文化的下地について検証した本が特価で安く買えました。良書が安く買えるのが魅力的ですよね。聞けばオススメしてくれる人も周りにたくさんいるし(笑)


田中
あとは先ほど鏡さんがおっしゃってた「チャールズ・ハーヴェイ賞」の発表もいいですよね。こういう占星術の名誉ある賞が日本にもあれば、日本の占星術家の励みになりそうですよね。


食事が終わってみんなでお酒を飲みながら語り合うのも貴重な時間ですね。ジェフリーさんも素晴らしいホスピタリティでした。もっとも、皆さんの英語は早口だし、内容も非常に高度なものだったから半分くらいしかわからなかったのですが(笑)

鏡さんとジェフリーさんがある議題にそってえんえんとお話されているんですが、内容からもまるで神学者同士の対話のように見えましたね(笑)日本もイギリスもそうですが、皆さんずっと占星術の話を熱心にされている。私も含め皆さん本当に占星術が好きなんだなぁとひしひしと伝わってきました。



そうそう、ふだんは堅物のジェフリーさんが深夜まで飲みながら話されたりしていてね。トップの研究者と親しく話せるチャンスがあるというのがこうしたカンファレンスの一番の価値でしょうね。

そう、あのときに盛り上がっていたのは、僕の思い出話からはじまったのですよ。何度も続けて大会に毎年出席していたときに、ジェフリーさんに話しかけられてね……。私には君がここに来ているのはミステリーだ。何しにきてるの、と言われました。日本からわざわざ飛行機にのって毎年のようにレクチャーを聞いている、そのわりに自分を売り出すこともしないし、一体なんなのか、という感じだったようです。

僕が京都人的というか、日本人的に「先生に会いにきてるんですよ」なんて少しお世辞的にいったら、その時、すごく怒られてしまったんです。お前はクリティカルじゃない、と。日本語にそのまま訳すと批判的ってことだけど、そういう意味ではなくて、クリティカル・シンキングができていない、と。おべんちゃらを聞きたいわけじゃない、ということですね。もっとお前の考えなり、知的な議論に参加しろ、というわけです。僕もお客さん気分で行っていたところがあって……。しかもいろいろと遠慮していたから、はっきり意見などいえなかったでしょう?

そうしたら、隣からマギーさんが助け舟を出してくれて、彼はクリティカルよ、と言ってくださった。そこから、この人たちにはちゃんとしゃべらなくちゃいけないな、と思って、拙い英語ながらがんばって話すようになったわけです。


それは幾つぐらいの時なんですか?



20代半ばから後半くらいかな。そのうちお家に泊めていただくようになってね。ジェフリーさんは柔道をやられているんだけど、僕がそれにちょっと驚いたら、イギリス人が柔道をやるのはおかしいか、なんて言われまして……。その時、ブランデーを出していただきながら、質問されたのが印象的でよく覚えています。大会の夜は、そのときの話になっていたわけ。

柔道には「型(カタ)」があるが、ギリシャ哲学におけるフォーム(形相)とかプラトンのイデアとはどう違うと思うか、と。英語だと両方、「フォーム」でしょう? これには困ってねえ。柔道は知らないけれど、柔道のカタのほうがずっと身体的だし、きっともっとフレキシブルなんじゃないか、などと会話を重ねたんですよ。それが占星術のホロスコープ解釈のモードと重ねていく。ジェフリーさんのところに泊めていただくとこういうことでほんと、深夜まで話されるんですよね。

この思い出話から、あの大会の晩の議論になりました。占星術というディシプリン(学問)の本質はどういうところにあるのか、というようなね。最後はハイデガーとか、中世神学のハクエタス(独自性というか一回性)とかでてきちゃって。もう、みんなお酒も入っているし、真夜中だし、抽象的な議論だしで、僕も皆さんに通訳しきれなくなったというわけです。みんな学生の時のように熱く話すのは楽しいでしょう。

還暦も超えた先生方が学生のように目をキラキラさせてホロスコープ解釈のモードや占星術の本質について哲学や思想史の文脈を参照しながら一文の得にもならんことを会話する。なんとも贅沢。ときおり、ユーモアや皮肉を挟んでくるし、ある意味、とっても英国的です。まあ、僕たちのテーブルにはジェフリーさんや、グレアム・トービンさん(『占星医術とハーブ学の世界』の著者)などもいたから、あの大会でももっとも「学のある」人たちが集まった場所だったかもしれないけれど。


田中
あの場にいたということがすごく刺激的でした。お話させていただくにつれて、あれもやらなきゃいけない、これも読まなければいけないといった自分に対する課題がいくつも出てきましたし。シュガーさんもいろいろと感じたことがありましたか?



そうですね、先ほどのクリティカルかどうか、という話じゃないですけど、結局自分はどこに最も関心があって、どんな主義主張を持っているのか? ということは、レクチャーや他の参加者との会話を通じて改めて考えさせられました。例えば、今の時代って運命と自由意志のいずれかがもう片方を支配し制御するというモデルではもう生きていけないっていう時代的気分のようなものがあると思うんですけど、そこでどのようなスタンスをとりうるか、とか。


田中
そういう知的議論もあるかと思えば、ディスコタイムには踊っている方もたくさんいて、いいですよねえ。本当にいろいろなかたちで交流できる。僕もウィリアム・リリーの本をロシア語に翻訳した人と名刺を交換することができたりして、とても嬉しかったですよ。


カリーヌさんという女性の方なんですが、2006年に「クリスチャン・アストロロジー」をロシア語に翻訳されてまして、現在、ロシアで、ケプラープロジェクトという、ヨハネス・ケプラーの大量の手書きのホロスコープをアーカイブ化しようという計画の中心人物です。同じ本を翻訳したといったことからか、初めてお会いしたのにすごく戦友な感じがして(笑)。

他の方にも挨拶させていただきましたが、全体的な印象として、皆さん謙虚でフレンドリーでした。偉そうにふんぞり返っている人が一人もいなかったですね。一流の方って、人間的にも成熟されているなあと思いました。

帰国してから、そういった方々とfacebookで繋がってメッセージのやりとりをさせていただいています。そういう点ではカンファレンスは交流を広げる場でもありますね。

参考:イギリス占星術協会
http://www.astrologicalassociation.com/

(つづく)

ー 他コンテンツ紹介 ー

シュガー プロフィール

Sugar(シュガー)
1983年生まれ。サラリーマンを経て、占い師。現在、個人鑑定・講座・執筆活動中。
鏡リュウジとの最初の出会いは、「ユリイカ」に掲載されていたシュタイナー研究で著名な美学者・高橋巌氏へのインタビュー。この時に覚えた違和感が、占星術へハマるきっかけに。慶応大哲学科卒。男性占い師ユニットNOTFORSALEメンバー。

●特技はどこでもすぐ寝ること
●ソウルフードは中本の冷やし味噌ラーメン


田中要一郎(たなか よういちろう) プロフィール

1974年和歌山県生まれ。早稲田大学卒。占術研究家、翻訳家、芸人。西洋伝統占星術、子平、インド占星術、風水、易、タロットなど洋の東西を問わず占術を研究する。訳書に「子平推命基礎大全」梁湘潤 著「クリスチャン・アストロロジー第3書」ウィリアム・リリー 著(いずれも太玄社刊) がある。

http://uranaigeinin.com/

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