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「オカルト」とは
そもそも「隠されたもの」という意味のラテン語。本コーナーでは、鏡リュウジが気になる「オカルト」的なことをお題に選んで掘り下げていきます。

オカ研File No.43 『世界不思議地図』著者佐藤健寿氏をお迎えして2
2017/6/16

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『世界不思議地図』著者佐藤健寿氏をお迎えして【2】
  佐藤 健寿×鏡リュウジ
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『奇界遺産』(2010年)年以降、大型写真集が売れるというのは、版元としても嬉しい驚きだったかと思います。そして、今回の本は、企画そのものも面白いですよね。これは佐藤さんのアイデアですか?

『世界不思議地図』



目次はさらにエリア別に分かれているんですね。ラスプーチンもカスピ海の半魚人と並ぶなんて想像できなかったに違いないですね。笑(鏡)


佐藤
編集の方からお話を頂きました。当初は、子ども向けの本を作ろうとして、平易な言葉で書いていたんですが、例えば、イギリスの「ダニエル・ダングラス・ホーム」なんて「空中浮遊」ですからね。もう、どうやって平易に書いたらいいかわからなくなって最終的には非常に文字の小さい、がっちり文章の入った本になりました。


テーマが難解といえば難解な本だから、子ども向けに書くという意識がちょうどいいのかもしれない。実際、雑誌の「ムー」の文章、案外難しいもの(笑) 同じ感じで作ると難しいものになったかもしれないし。ところで、ここにはものすごく幅広いトピックを扱われていますが、その中でも今回、取り上げるにあたってのセレクト基準はどんなものだったんですか? やはり実際に行かれた場所が多いんですか?


佐藤
『奇界遺産』は実際に行って写真がとれる場所で実在しているんですが、今回の本でとりあげている、例えば「コティングリー妖精事件」。これなんかは行ってもとくに何もないと思うんですよ(笑)。場所は普通のイギリスの村とか森ですからね。場所というよりも「怪事件」ですからね。



このコティングリー事件の写真の原版は、たしか、ケルト文学研究のパイオニアでもある井村君江先生がお持ちなんですよ。少女が、森の中で写真を撮影したら、妖精が映ってしまった。それを当時、英国のスピリチュアリズムにもはまっていたコナン・ドイルが取り上げたら大騒ぎになって注目されたんですよね。ドイルといえばなんといってもあの「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者ですから、大騒ぎになった。でも、この少女が大人になってから、じつは、絵本から切り抜いてピンでとめて写真を撮りました、と告白。今でもフェイクの傑作として人々の記憶に残っているものですよね。ただ、亡くなるまえに一点だけは本物だと言っていたといいますから、まだちょっとは謎は残る…。


佐藤
今回の本には、写真は1枚しか載っていませんが、他の写真もすごく可愛いんですよね。



なんたって、少女と妖精ですからね。だから、この可愛い少女たちが人を騙すはずがない、という思い込みが当時あったと思うから、それがまた事件に発展したということもあるはず。あと、当時、写真というのは、嘘ではないという思い込みもあったんじゃないでしょうか。


佐藤
コナン・ドイルもネガとか検証したらしいですが、どうもネガに細工をした痕跡はない、と。高度な検証をしたのに捏造をした痕跡がないから、太鼓判を押しちゃったんですけど。じつは少女たちがやったのはすごく原始的なトリックで、実際に絵本から切り抜いた妖精の「絵」を置いて写したという……でも、きっとパースとかが合っていたから、写真の才能があったんだなって思います。


佐藤
この本ではイギリスの霊媒師、ダニエル・ダングラス・ホームもとりあげていますが、鏡さんから見たらどうですか? 当時、霊媒師はたくさんいてインチキもわんさかいた中、このホームに関しては、明確なトリックの証拠が見つかってないという人ですよね。



霊媒のキングと言われていた人ですね。二階の窓から出ていって戻ってきたという話しもあります。当時は検証できなかった、という…。まあ、物理的な現象は僕はおいそれとは信じられませんが、当時、人々がこういうものに熱中したというのは面白いですよね。そういえば、最近はこういう「物理霊媒」はめっきり少なくなりましたね。

他にはどういう方面のトピックを取り上げてるんですか? 




メキシコ、中央アメリカってこういうネタの宝庫なんですよね。水晶ドクロには子供の頃ワクワクしました。




ヨーロッパも不思議の宝庫。ノストラダムスやサンジェルマン伯爵などは秘教
研究の重要なテーマのひとつ。




ドゴン族に伝わるという天文学の知識!これもワクワクしました。と同時にドゴンの占いなんかも面白いんですよ。




小野田さんがこのミステリーに入るなんというのも佐藤健寿ワールドならでは。


佐藤
パーシー・ハリソン・フォーセットという『インディ・ジョーンズ』のモデルになった探検家や、南極探検で有名なアーネスト・シャクルトンの話もいれてあります。パプア・ニューギニアにマッドメンという少数民族とか、むしろオカルトは半分程度です。

あとは、地球以外で宇宙もいれました。太陽系とか謎の惑星について。惑星の発見の歴史と人類の関わりとか、地球外生命の探索の話ですね。20世紀後半は宇宙人というのは否定されていたんですが、最近になってまた地球外生命の可能性が発見されそうになっていますよね。知的生命ではないですが。人類の歴史をトータルでみると、地球外生命は否定されている期間のほうが短いんですよね。古代ギリシャや近代ヨーロッパの人たちも、火星人や金星人がいると当たり前に思っていましたから。



それは多岐にわたってますね。身近なところで例えば、日本はどんな感じですか?


佐藤
日本だと恐山のイタコ、西日本では邪馬台国、岐阜県のツチノコや広島のヒバゴンにカッパとか。それに、遠野の座敷わらしや、三種の神器までいれました。



ヒバゴンとは懐かしい(笑) 一時期、すごく報道されていましたよね。雪男とかネッシーがすごく話題になった時代ですね。


佐藤
介良(けら)事件という有名なUFO事件があるので、それも取り上げました。



小さいUFOを子どもが捕まえたという話しですよね? あれはどこでしたっけ?


佐藤
高知の介良市ですね。中学生5人が田んぼでUFOを見つけて持って帰るんだけど、それが消えてしまった。そうしたら翌日、また田んぼで発見された、という事件です。



なんであの事件は信憑性があると言われてるんですか?


佐藤
当時、いろんなメディアが殺到して、矢追純一さんはもちろん、遠藤周作まで調べに行って。故人で志水一夫さんという懐疑派で知られる人がいるんですが、その志水さんを持ってしても、何かがあったのは本当らしい、といわしめたんです。遠藤周作も、同じように書いています。

僕も去年、NHKのラジオ番組で複数の当事者に直接話しを伺いました。今、高校の先生をやっている人がいたんですが「あれは本当に何だったのか、逆に教えてほしいんですよ」というぐらいでした。子どもの頃、みんなで嘘をついていたら、今はもう話したくないと思うんですけど、そういうふうに言ってましたね。



では、単純な子どものいたずらではなさそうですね。


佐藤
と、思うんですよ。だから未解決な事件ですね。


モスマンなんかも取り上げてるんですか?


佐藤
もちろん! アメリカのウェストバージニア州ですね。蛾みたいな姿で赤い目をした男が集中的に目撃されている話しですね。最後は、ある橋のところで目撃されたんですが、その橋が同日に大崩落して、40人以上亡くなる大惨事になりました。リチャード・ギア主演の「プロフェシー」という映画もありますね。




あの映画のモトネタ! あと、最近話題になっているトルコの遺跡はなんでしたっけ? ……何度きいても覚えられない遺跡があるんですが……笑


佐藤
ギョベクリ・テペ遺跡ですね。トルコのアナトリア平原の真ん中にある遺跡で、あるドイツ人考古学者が発見しました。もともと地元の羊飼いは知っていたんですが。そうしたら、神殿の跡が出てきて、巨大な石碑には動物の絵が刻まれていました。炭素年代測定をやったらメソポタミアよりも古い、1万5000年前ぐらいだとわかりました。今までの定説だと、定住することで備蓄ができて階級が生まれて、神殿など出来てきたとされてますが、当時は未だ狩猟社会だったわけです。だから、狩猟社会の段階で神殿があったというのは、歴史の通説を覆すことになると注目されてます。



通常、抽象的な思考や信仰は経済が豊かになってこそ発展する、という「下部構造が上部構造を支える」という発想ではうまくいかないかもしれないと。


佐藤
はい、もちろん、人類史を覆す遺跡なのかどうかは未だ確定されていませんが。付近に定住の後がどこかにあるんじゃないかとも言われてます。でも、僕らが子どもの頃に習った四大文明ありきの世界史はもう覆されていて、例外的な遺跡は、世界中で見つかってきているんですよね。



ところで、イギリスといえば幽霊屋敷が有名ですが、幽霊やおばけとの関係はどうですか?


佐藤
この本では、エジンバラ城も取り上げてますが、霊というのは扱いが難しいんですよね。目撃談が主体になっていくので、信じる信じないの話しになってしまうので。だからこの本では概説的に英国の心霊主義、「スピリチュアリズム」をとりあげています。

あとは19〜20世紀というのはちょうどカメラが発明された時期ですが、それによって、ある意味では「霊体が作られた」とも言えるんです。イメージを具体化されたというか。



心霊写真屋さんがいたそうですね。僕はこの本で面白いなあと思いました。


『心霊写真 メディアとスピリチュアル』


佐藤
はい、写真はもともとは死んだ人を撮るための技術だったということもできます。銀板に焼き付けるような手法なんですが、遺影の代わりに、写真を撮影したわけです。生きている人と亡くなった人を合成させる、職業心霊写真家がいたそうですし。



イギリスでは、第一世界大戦後に、そういう写真が増えたと聞きました。


佐藤
日本のイタコも第一世界大戦後に増えたらしいですね。第二次世界大戦後も増えたと言われてます。



なるほど、やはりそうなんですね。

さて、今回の本は、Amazon予約段階で「世界史」ジャンルで、『サピエンス全史』を押さえて堂々の1位に! ただ、ジャンル的には、地理あり歴史あり、という本ですね。


佐藤
世界史に入らなかった世界史でしょうか。

最近は、何でも、極端にライトか、極端にディープかに分かれてますが、この本は、間口は広く、旅好き、オカルト好き、不思議好きな人の入門編として楽しめるようになったと思っています。捏造された話しはちゃんと捏造と書いてますし。わからないものは素直にわからないと書いてあります。



イラストも可愛いですし、見た目もおしゃれですよね。

オカルト話しというのは、フェイクだから全部ダメといって否定しなくていいし、全部を信じなくていい。ネッシーは、実際にはいないかもしれないけれど、いたほうが世界は広がり楽しいかもしれない。そういうある意味「余裕」を持って生きる姿勢は必要なんじゃないかなって思います。この本はそういう「余裕と遊び」を提供してくれる本ですね! 今後も佐藤さんワールド、楽しみにしています。


『世界不思議地図 THE WONDER MAPS』佐藤健寿著



(了)

ー 他コンテンツ紹介 ー

佐藤健寿(さとう けんじ) プロフィール

武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的視点から撮影・執筆。写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)は異例のベストセラーに。著書に『世界の廃墟』(飛鳥新社)、『空飛ぶ円盤が墜落した町へ』『ヒマラヤに雪男を探す』『諸星大二郎 マッドメンの世界』(河出書房新社)など。近刊は米デジタルグローブ社と共同制作した、日本初の人工衛星写真集『SATELLITE』(朝日新聞出版社)、『奇界紀行』(角川学芸出版)、『TRANSIT 佐藤健寿特別編集号?美しき世界の不思議?』(講談社)など。NHKラジオ第1「ラジオアドベンチャー奇界遺産」、テレビ朝日「タモリ倶楽部」、TBS系「クレイジージャーニー」、NHK「ニッポンのジレンマ」ほかテレビ・ラジオ・雑誌への出演歴多数。トヨタ・エスティマの「Sense of Wonder」キャンペーン監修など幅広く活動。


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