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「鏡の視点」とは
鏡リュウジが何を感じ、何を思考しているか。気楽なものからレクチャー的要素もからめた雑文コーナー。海外のアカデミズムの世界で占星術を扱う論文などの紹介も積極的にしていく予定です。

イギリスとの縁
2011/8/15


なぜ「イギリス」なのか?

みなさんもご存じかもしれないが、ぼくが占星術や魔術を学んだのはイギリスにおいて、である。正式に留学したことはないけれど、学生時代からするともう数えきれないくらい渡英しているし、いまでは年に三度くらいはいっている。
なぜイギリスかって? 最近ではハリー・ポッターの影響などでイギリス=魔法の国という印象が強くなっているかもしれないけれど、考えてみれば、イギリスで占星術や魔術といった見えない世界に接するというのも不思議といえば不思議かもしれない。

思い出してもみていただきたいのだが、イギリスこそ、世界で最初に産業革命に成功し、「世界の工場」となり、また思想的にはジョン・ロックの経験論やらフランシス・ベーコンの帰納法、実験主義など、魔法とは縁遠い科学的、実証的、実用的な潮流を生み出してきたといえるのだから。

しかし、一方でイギリスは同時に霧深い魔法の国でもあるのは確かだ。ウェールズや南西部には神秘の民族ケルトの息吹がいまだに感じられるし、それより以前のストーンヘンジをはじめとした巨石文化も身近に感じることができる。
グラストンベリーのような、町丸ごと神秘によって一種の「町おこし」ができているような場所もある。

何よりも占星術が近代になってから復興したのはイギリスにおいてであったのだ。
自然保護運動に意識的に取り組んだのもイギリスであろうし、ここは世俗的で技術的な知性と見えないものにたいしての感受性をともに活かす場所でもあるということなのだろう。それは文化の重層性といってもいい。


もっとも、そんなことを知ってイギリスを選んだわけではない。何よりも、言葉が英語だったということがある。中学高校で学んだ英語がそのまま生かせるではないか。当時は受験英語しかできなかったし、いまだにしゃべるのは不得意だけれど、新たにフランス語やらイタリア語を1から学ぶのも面倒、ということ、またイギリスは非常に安全だから一人で学生時代に旅しても大丈夫だったというのも大きいかもしれない。人も親切だし。

そうして渡英を重ねるうちに、むこうの研究家たちと交流が生れ、友情がはぐくまれるようになっていった。



●尊敬する真の英国紳士ハーヴェイ博士のご自宅を訪問

「旅」は新たな出会いも大事だけれど、同時に関係を深めることも大事だと思う。
自分のプロフェッションにかかわることについて本音で、しかも深いところまで話ができる人は、何百人、何千人の人と出会っても、人生の中でそう数は多くない。それこそ、「縁」と運命の問題であり、それは出会いの可能性を莫大にするネット時代になってもかわらないのだと思う。

同じようなことに興味をもっていても、いや、同じようなことに興味をもっているがゆえに、歯車がかみ合わないということも多い。こと、見えない世界が対象になっているとそうだ。
一概にはいえないが、とくに今のアメリカなどのように(そして下手をすると日本もそうだ)すぐに占星術や魔法を「仕事」にしようとしたり、それをまるで成功哲学のように現実世界で「役立たせよう」としている人が多いなか、ぼくが最初に渡英したころのイギリスの研究家たちはいまだアマチュア学者としての気慨と雰囲気をもっていた。

忘れられないのは英国占星術協会の会長を長らく続けられた故チャールズ・ハーヴェイ氏である。氏は幅広い教養をお持ちの、絵に書いたような紳士だった。今ではスノッブすぎるとして英国首相もオックスッブリッジ・イングリッシュを使うのを避けるということらしいけれど、チャールズ・ハーヴェイはまさしくザ・ブリテイッシュのアクセント。カッコイイ。
サマセットのご自宅に伺ったときには歴史学者であった父上のご著書の日本語訳(確か時計の歴史について。イギリス人らしい!)やぼくの本をさりげなくコーヒーテーブルの上に置いておいてくださって、歓迎の意を表わしてくださった。

なぜぼくのようなぺーぺーが氏のご自宅にお邪魔できたか。実は料金を支払って鑑定を申し込んでいたら、「じゃあ、うちにいらっしゃい」となったのだ。電車とバスを乗り継いでサマセットのご自宅にいったときの、そのどきどきと言ったら!

察しのいい氏はぼくのほんとうの目的がどこにあったか、すでにお見通しだったようだ。実はぼくは「占って欲しい」ということよりも占星術やその世界の伝統について学ぶための道筋が欲しかったように思う。当時はあまり意識していなかったのだが…。

そんなぼくに氏はホロスコープ解釈もそこそこに、契約し決められた時間のなかでできるかぎり書棚を案内してくださったりした。ぼくの志向性をさっと見ぬかれた氏は、ぼくにユング派の心理学者ジェイムズ・ヒルマンやトマス・ムーアの本を取り出して、この本とこの本はぜひ読みなさい、と勧めてくださったりした。

ハーヴェイ氏にお会いしたのはわずか数回であるけれど、その意味では「学恩」を感じてやまないのである。
そう、まだネットのはるか以前の時代のことである。その後、ジェフリー・コーネリアス博士やマギー・ハイド氏らイギリスの占星術家たちとの深い交流は続いてゆく。

旅は縁である。そして先人たちが言うように人生も旅だとするのなら、そこには出会いと縁がある。しかし、その縁を深めるにはまさしく機としてのチャンスとその機を深めるための期間と努力のすべてがそろうことが必要なのだろう。

星はめぐり、あるときに出会い、あるときに離れてゆく。
ぼくにとってそんな出会いと縁はイギリスで起こっている。

しかし、そんな布置(コンステレーション)が起こる時空は人によって異なるはずだ。いや、もしかしたらそれは時を超えるかもしれないし、想像力の空間においておこるのかもしれない。
けれど、そんな出会いと縁をどう大切にできるか、がこの生をいかに豊かにできるかのポイントであることは確かだろう。

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